Advent calendar (12/18)

●12月18日●

25日のクリスマスファンミーティング

そこで一曲だけ披露する
クリスマスソングの音源

テギョンはその仕上げにかかっていた

しばらくすると
ノック無しの来訪

「お疲れ」

カツカツとヒール音を立てて
ずかずか近付いてくるミナムに
視線を送る事もなく

「あぁ」とテギョンは答え
心の中で盛大にため息を吐く

そして
捲し立てたくなる
あれこれを飲み込む

本物のミナムと
向き合う事にまだ慣れない

面と向かって
じっくり時間をかけて
二人だけで
語り合う事を
考えただけで
なんとも落ち着かない

どうにもむず痒く
今にもこの場所から
逃げ出したくなる様な
感覚が過る

いまだに
ふと
ミニョがミナムで
あるような
あの時の感覚で
口を開きそうにも
なったりするから
余計に敬遠したくなる

さらには
そんなテギョンの心の内を
このミナムは
察知しているような
聡さがある気がするから
質が悪い

かと言って・・・
全く
邪険にできない事情も
確かにある

「テギョン
ここのストリングス
もう少し聴かせたいから
ちょっと長めにできない?
あとツリーチャイム入れたら
良くない?」

なんて事を
言い出すからだ

やはり
物足りなさを
指摘してきた


ミナムは理論ではなく
感覚で音楽を語る

それは的確で
理論としても音楽を
学んできた自分でも
気付かない事や
ある時は
理屈で判断し
妥協した部分を
しっかりと
突いてくる

「でラストはチャイムのディレイ
多めで終わらすとか」

確かに
一曲しかやれないから
余韻は大切だ

アカペラだけで
終わらせるラストより
流れる様なチャイムの音と
予想のつかない
ディレイの余韻は
効果的に違いなかった

「わかった
直しておく」

この時ばかりは
テギョンは
ミナムの瞳をまっすぐ見つめ
応えた

「よろしく」
とミナムが微笑むと
テギョンは慌てて目を逸らす

何ともおかしな心持に
なってしまう事に
動揺するのは
避けられない

かと言って
笑うなとも言えない

何でよりにもよって
双子なんだ

全ての始まりは
二人が
双子である事

二人が
双子でなかったら
ミニョと出逢う事も
なかったのだと
わかってはいても
思わずため息を
吐いてしまう

「いいクリスマスにしような」

これはわざとか
と思う
あざとい笑顔で
ミナムは手を振る

遊ばれている気がしてならない


嵐が去った後の様に
静かになったスタジオで

ストリングスに手を加え
ラストにディレイを加える

確かに心が震えた

「いいクリスマス」
ミナムの言葉と
その笑顔を思い出し
苦笑いが浮かぶ


クリスマスイブまで
あと6日

エントランスに出ると
舞い始めた雪が
薄っすらと
あたりを白く染めていた




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ディレイとはチャイムの遅延音の事だそうです
とても素敵な音

youtubeTAKAFUMI PERCUSSION CHANNELさんより




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