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比田井通信 第872号(恩送りの国)

2024.6.29発行

とある山里に集落があります。
そこには200軒ほどの屋敷があり、時にはいがみ合ったり、時には仲良くなったり、複雑な関係性が織り成されています。
そのなかでも、いちばん東の端に位置する「日の出家」は、田畑は小さいものの、広大な山林を所有しています。集落200軒のなかで最も古い親族の歴史を持ち、寡黙な一族として知られています。
数十年もの間、最も裕福であり、資産家としてもいちばんの存在です。
日の出家は代々優秀な一族で、とくにこの20年、集落内で最も技術的な貢献をしているため、感謝されています。
また、料理の腕前も代々抜群なうえにもてなし上手としても評判のため、山里中の人々が日の出家を訪れ、ご馳走を受けるなど、集落のなかでいちばんの人気ものでもあります。
さらに運動も万能で、毎年山里いちばんと言われる運動選手を排出しています。芸術家も数多く、何世代にもわたって山里の芸術祭を支えてもいます。
そのうえ手先の器用さも集落内随一です。それは日の出家の伝統でもあり、代々集落の家々に便利で美しい品々を届け、大いに喜ばれてきました。
しかし、最近は新しく越してきた若い家族がその代わりを務めるようになっています。
そんな恵まれた日の出家ですが、新たな心配事もあるようです。
なかなか赤子が生まれず、一族を見回すと高齢者の方が目につくようになりました。
そのせいか田畑の収穫も減り、長い間山里で一、二の収穫を誇っていたのに、200軒中、4番目になってしまったと、暗い顔で話す日の出家の大人が増えています。
なかには、日の出家は没落する家だと、若者たちに訳知り顔で語る老人もいます。
そのことが影響しているのかは定かではありませんが、最近の日の出家の若者は、大人しくて元気がないなどと言われています。
いっぽう、ほかの山里の家々はというと、いろいろあってもいちばん憧れる家はやっぱり日の出家だよな、と。資産も豊富だし、仕事や料理も一流、しかし、なにより家屋敷や山林の美しさといったら・・・・・などと、賞賛の声がほとんどです。
しかし、そんななか、ごく一部の家からは、若者の元気がないうちに縁組でもして「そっくり頂いてしまおうか」といった悪巧みや、いやいっそのこと押し入って・・・・•・などと、物騒な話も洩れ伝わってきます。
なにしろ日の出家の人たちは良い人たちばかりで、戸締り一つしないというのですからー。

「恩送りー私たちの使命ー」佐藤芳直著より

さぁ、この「日の出家」がどの国のことなのか・・・もう、お分かりですよね。

そうです、我が日本国です。

この日の出家のお話は6/18に出版された佐藤芳直師匠の最新作「恩送り-私たちの使命-」(芳直師匠は「おんくり」と読みます)の冒頭のお話です。
http://site.komichi.co.jp/books/2024/06/07/952/

ここ数年、ウエジョビの入学式で新入生に話して下さる「この国は恩送りの国なんですよ」を芳直師匠が本気で伝えた渾身の一冊です。ヒダツー読者の皆様には必読の書です。

頂いた恩をその人に返す「恩返し」ももちろん大事です。

でも恩返しで喜ぶのは、恩を返された人だけです。

それに対して、頂いた恩を別の誰かに送るのが「恩送り」です。

映画「ペイ・フォワード」でもこの考え方に気づいた少年がアツく語っています。

「恩を受取った人は別の誰かにその恩を与える。また、その恩を受取った人は別の誰かに与える・・・、これを繰り返すことで永遠と喜ぶ人が増えていくんだ」と。

そして、そして、この「恩送りの国」こそが日本なんです。

ところが・・・、このことに気づいていない日本人が多すぎるんです。

この記事でもアツく話しましたが、我々、日本人は多くのものを先人たちから受取っています。

ところが、何を受取ったのかに気づいていないと何を恩送りすればいいかわかりませんよね。

芳直師匠は「学(まなび)」「躾(しつけ)」と言っています。

江戸時代、日本中に1万5千もの寺子屋があったそうです。現在、日本にある小学校は2万校です。

当時の人口は3千万人。
現在は一億2千万人です。

ということは、人口当たり3倍の密度で寺子屋があったんです。

その結果、徳川末期、江戸の識字率は70%です。

これがどれだけ驚異的な数字かと言うと、当時、日本よりはるかに進んでいたと言われている世界的都市ロンドンの識字率は20%ですよ。
パリにいたってはたったの10%です。
文字を読んで書ける人が10人に1人しかいないんです。
もちろん、世界を見渡せばもっと低い国がたくさんあります。
同じ時代、日本は10人中7人が文字を読んで書けるんです。

身分や職業に関係なく「学(まなび)」を大事にしたんです。

その頃の日本、裕福ではないんです。農業がほとんどです。1人でも多く人手が欲しいときに、子ども達を寺子屋に通わせたんです。もちろん、農業もしながらです。でも、「学ぶ」ことが大事だと先人たちは知っていたんです。

もう一つは「躾(しつけ)」です。

「お天道様がみている」
「ご先祖様に顔向けできない」
「故郷に錦を飾れない」

こんな言葉で「人としてどう生きるべきか」を教えてくれました。

1921年-1927年に駐日フランス大使を務めたポール・クローデルは劇作家でもあり詩人です。当代一流の知識人です。

そのクローデルは第二次世界大戦末期(1943年11月)に、ある夜会でこう語ったそうです。

「私が決して滅びて欲しくないと願う一つの民族がある。それは日本民族だ。あれほど興味深い太古からの文明は消滅してはならない。(中略)日本人は貧しい。しかし高貴だ。」

恩送り-私たちの使命-より

当時、海外では
「貧しい人=卑しい」が普通の時代にフランスから来たクローデルは「貧しいのに高貴だ!」と驚いたんでしょうね。

同じようなことは天才物理学者アイン・シュタインも言っています。
「我々は神に感謝する。この世界に日本という国を作っておいてくれたことを」と。

きっと、日本に来た外国人はみんなそう思ったんじゃないでしょうか?

そして、
「日本は信頼できる国だ」と思ってもらえたんです。

昨日、届いた喜多川さんのメルマガにも歴史の話が載っていました。

1904年、日本はロシアと戦争をします。国力では10倍以上の差があったんです。

お金がないんです。
武器が買えないんです。
このままでは日本はロシアに占領されてしまいます。

この時に金子堅太郎がアメリカに行くんです。金子堅太郎は30年前に岩倉使節団の一員としてアメリカに行っているんです。このとき大統領になっていたセオドア・ルーズベルトと会っているんです。

会うだけじゃないんですよ。
新渡戸稲造が書いた「武士道」を渡しているんです。これを読んだルーズベルトが感銘を受けて日本を支援してくれたんです。

えっとですね。
これ、ルーズベルト大統領がただ単に金子堅太郎と面識があっただけでこんなに応援なんかしてくれませんよ。
しかも、30年前に会っていただけなんです。

きっと、30年経っても、忘れることができないようなそんな人柄だったんでしょうね。信頼に値する人間だと思ってもらえたからでしょうね。

だから、「武士道」も読んで「日本を応援しよう!」と思ったんでしょうね。

それは、我々、日本人が先人たちから受取った「学」「躾」のおかげじゃないですか。

「日本は信用できる国だ」と思ってもらえたおかげで日本はロシアに占領されることなく、今も日本国なんです。

もしも、あのとき、日本が信用に値する国じゃなければ莫大な戦費を借りることはできませんでした。

これは喜多川さんのメルマガに書いてあったのですが…、

もし、あの時負けていたら、今頃、僕たちは、日本文化を捨てさせられ、ロシア語を話し、ロシア兵としてウクライナに派遣され戦闘に参加させられていたかもしれないのです。

喜多川泰さんメルマガLeader’s Village Vol.118より

そういうことです。
日本人として「ウクライナが可哀想…」なんて言っている場合じゃなかった可能性もあるんです。

今、日本はこれだけ平和で治安も良く、世界中から羨ましがられ、安心して暮らすことができているのは先人たちが「これが大事なんだ!」と言って「学(まなび)」「躾(しつけ)」を教え続けて来てくれた国だからですよね。

ところが・・・

はき違えた「多様性」という言葉でどんどん、おかしな方へ向かっているような気がしてなりません。

100年後の日本のために「恩送り-私たちの使命-」を1人でも多くの日本人に読んで欲しいと願うばかりです。

【一般参加可能なヒダカズ講演】

■9/27(金)長野県千曲市/13:30~15:00/千曲市 戸倉創造館大ホール/入場有料(「いきいき創造学級」全10回で1,000円。比田井和孝の講演は全10回のうちの1回)/戸倉公民館 026-275-1490
togura-pc@city.chikuma.lg.jp

■11/7(木)長野県上田市/14:30~15:30/上田市真田町 真田中学校体育館/入場有料/真田中学校PTA(教頭 後藤先生 0268-72-2023)

いのちの授業 第20回記念大会
日 時:10/14(祝)12:30~16:30予定
会 場:ウインクあいち 小ホール1(名古屋市名古屋駅徒歩8分)
定 員:200名
(オンライン=Zoom定員300名)
テーマ:「いのちを幸せをみつめて」
講師
水谷もりひと(日本講演新聞編集長)
比田井和孝(上田情報ビジネス専門学校副校長)
佐々木美和(チャイルド・ライフ・スペシャリスト)
鈴木中人(いのちをバトンタッチする会)
コメンテーター=志賀内泰弘(作家)
ミニ音楽=北村遥明(虹天塾近江)
入場料:学生500、一般2500円、当日券3000円(会場のみ)
チケット販売予定:7月1日より

【第19回 ココロの授業 講演会】
日 時:2024年10月26日(土)
    12:30~16:00
ゲスト:木下晴弘師匠
会 場:サントミューゼ 大ホール
※ご予約はコチラ↓
https://forms.gle/nHjfbKicLpSvMefD9


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