【アーカイブ】比田井通信 第700号(自慢の教え子 完結編)
(2021.3.13発行)
たしか、2007年10月から
このヒダツーを書き初めまして14年目。
本日、700号を迎えました。
毎週1回の発行ですが、
この14年間、一度もお休みしたことはなく、
毎週、毎週、発行することができました。
これも読んで下さっている皆様が
いらっしゃるからです。
本当にありがとうございます。
さて、記念すべき700号は
私の自慢の教え子、北清君の
完結編となります。
本当はこの後のお話を書きたくて
初めた北清君のお話です。
前回と前々回は前置きです(笑)
20年前、私のクラスに来た北清君。
1年目希望の消防士に成れず再チャレンジ。
2年目もリベンジ叶わず、信大附属病院の事務として就職。
大変な仕事にも不平不満を言わず頑張っていた北清君。
2008年信大附属病院DMAT(災害派遣医療チーム)の一員になります。
「消防士にはなれなかったけど、
DMATとして人を助ける仕事ができました!
人生って不思議ですね」
北清君の言葉です。
その北清君が後輩のために先日、
たくさんの本を寄付してくれました。
ちょうど1ヶ月前、
11冊の本と1万円の図書カードを持って
ウエジョビに来てくれた時に北清君が
こんな話をしてくれました。
なぜ、後輩のために本を
プレゼントしたくなったかと言うと
「自分は読書で本当に成長させてもらったし、
勉強させてもらっているから・・・」
って言うんです。
で・・・、
私が北清君のことを
「自慢の教え子」という
一番の理由はこの後です。
北清君は読書で読んだことで
学んで、その後、やるんです。
例えば・・・
喜多川さんの「福に憑かれた男」に出てくる主人公。
この主人公、小さい本屋さんを経営しているんですが、
一見、ツイてない出来事が起きるんです。
近所に大手チェーンの本屋さんができたりするんです。
その結果、経営が難しくなります。
でもこれ、その主人公に憑いている福の神が
この主人公のためにやったことです。
印象的なセリフがあります。
福の神どうしの会話の中で、
「えっ、あの大手チェーンの本屋を
駅前に開店させたのもお前の仕業?!」
「そうだよ、だって逆境で人は成長するだろ?
あの店長にはあれが一番必要だと思ったんだ!」
そんなセリフです。
でも最後はこの主人公の周りで
奇跡的な出来事がたくさん起きるんです。
ではなぜ、この主人公に
福の神が憑いたのかというと、
この主人公、
いつも、
人知れず、
いいことしてたんです。
詳しいことは
ぜひ、「福に憑かれた男」を読んでください。
で・・・、
北清君もこれを読んだんです。
「人知れずいいこと・・・かぁ・・・」
ここまでは誰でも思います。
でも北清君は
「俺もやる」と決めます。
「なぜ『そうじ』をすると人生が変わるのか?」(志賀内泰弘)
も読んでいた北清君は
「1日、1個ゴミを拾う」
と決めます。
朝、家を出て職場に行く途中、
ゴミを1個拾うんです。
最初の頃は1個ゴミを拾うと
その先にも落ちているんです。
「明日はアレだな・・・」
次の日はそのゴミを拾います。
これを繰り返していくと
家の周りにゴミがなくなります。
仕方ないので
職場の駐車場に着いてから
職場に向かう間、
ゴミを1個拾います。
それもだんだんなくなって、
ゴミを探しながら歩くんです。
「先生、あれね、
ゴミを探しながら歩いていると
だんだん分かってくるね。
どんなところに人はゴミを捨てるのか
今まではそんなこと考えたこともなかったけど
ゴミを捨てる人の心理までわかるようになってきた(笑)」
って言うんです。
さらには、
「これが、仕事に役立つんですよ。
本に書いてある通りです!
今までは気づかなかったいろんなことに
気づけるようになるんですよ!」
こんなこと言ってました。
そりゃぁ、人生変わりますよね。
休みの日には子どもと
散歩しながらゴミを拾うそうです。
お父さんが休みの日に
ゴミを拾っている姿を
間近で観て育った子が
どんな子に育つのか、
想像つきますよね。
少なくとも、
道を反れるようなことには
なりませんよね。
間違いなく、
人生が変わります。
そして今回、
ウエジョビの後輩に
本をプレゼントしようと思ったのは
喜多川さんの「運転者」に書いてあった、
「運というのは与えたものと
受け取ったものの差」
って書いてあったからです。
「本の寄付をしたい」という
メールを送ってくれた時、
「喜多川先生の『運転者』によるところの、
私の労働よりも多い金額をもらってしまったので、
私の運ポイントが減ってしまって困ってます。」
国から医療従事者に支払われた支援金の
金額が自分の貢献度に対して多すぎるという意味です。
これもね、普通だったら
「ラッキー!得した!」って言って
もらうのが普通ですよ。
誰もそれを責めませんよ。
実際、大変な思いで頑張っているんですから。
それを
「私の運ポイントが減ってしまって困ってます」って、
なかなか言えませんよ。
だから、
「後輩の朝読書を応援するために寄付します」
って言うんです。
なんてカッコいいんでしょうか。
さらに、こんなことも言っていました。
「2008年にDMATの一員になって
この13年間での出動がたったの4回。
これじゃ、ぜんぜん足りないんです。
もっと役に立ちたいと思って、
昨日、重機の免許を取るための講習に
行ってきたんです。」
って言うんです。
どういうことかと言うと、
2019年の台風19号の災害のとき、
土木工事で使う重機はあるのに
それを操縦するオペレーターが
全然、足りなかったんですって。
あのとき、自分が重機を操縦することができたら、
もっと役に立てたのに・・・と思って、
昨日、講習会に行ってきたんですって言うんです。
もうね、
「どこまであなたは立派なんですか?」って
言いたくなっちゃいますよね。
こんな教え子を自慢しなくて
誰を自慢するんですか。
先日、学校の帰り道、
自転車で帰るのですが、
駐輪場を出るとそこに
紙くずが落ちてました。
自転車に乗ってますから
気づいても、戻らなきゃいけませんよね。
自転車から下りないとゴミ拾えませんよね。
「見なかったことにしよう・・・」と
一瞬、思いましたが、
次の瞬間、北清君の顔が思い浮かんだんです。
教え子が毎日ゴミ拾っているんです。
戻って拾いました。
でも、あれ、
気持ちいいもんですね。
弱い自分に打ち勝って
ゴミを拾えた自分を
ちょっと誇りに思えますね(笑)
「自分を誇りに思える」っていいですよね。
北清君のおかげなんです。
次の日、学校に向かう途中、
10メートルぐらい向こうに
ビールの缶が落ちてるんです。
もぉ、迷いませんよ。
ロックオンです。
迷わず、その空き缶を拾って
中にビールが残ってましたが
中身を捨てて、拾いました。
気分よく学校に向かうと
今度は駐輪場の前に
マスクが落ちてました。
これも迷わずロックオンです。
この日の収穫、
「空き缶」と「マスク」です。
「今日はいい日になるに違いない」
朝からそんな気分です(笑)。
実際、いい日になりました。
別になにかいいことが
あったわけではありません。
でも、気分が良かったです。
これを「いい日」と言います。
つまり、
自分で「いい日」なんて
作れるんです。
それを「自慢の教え子」の
北清君に教えて頂きました。
今日はウエジョビの
保護者説明会があったんです。
来年度ウエジョビに入学する
新入生の保護者の皆様です。
ウエジョビがなにを大事にしている学校なのか
私から40分、お話させて頂きました。
みなさん、一生懸命に
聴いてくださいました。
朝読書でたくさんのことを学んで
北清君のように行動できる
そんな学生がひとりでも多く
育てるよう、頑張ります!
以上、
「自慢の教え子」の北清君のお話、完結です!
記念すべき700号に相応しいお話ができました!
自画自賛(笑)
■■FM長野「ヒダカズのココロの授業」■■■
2021.1.20放送
「とにかく来なさい!」とスタッフの方に誘われて、私の講演を聴きに来た高校3年生のY君。Y君は数日前に第一志望の大学に不合格になってしまいました。
※ラジオのバックナンバーコチラ↓
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