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「コードスケール理論」とは何だったのか・後編

「読み替え有り・三度堆積理論」

 「コードスケール理論」というネーミングで括られ、語られるアイデアの全貌。その中で「“旨味” がある」部分というのは、およそ一部分のみです。

前編」より。

 この “一部分”。私がこれまで知り得た限りのそれを、本記事の以下に全て集約します。また、これまで語られている所を見たことがない、CS理論の真に説明されるべき「根幹」についても、「読み替え有り・三度堆積理論」と称し直して、説明いたします。
(なお、これまでの記事や動画では見落としていた視点を多く含みます。)

つまり図の部分について、以降を読めば免許皆伝です。そのつもりで綴ります。

 後者については、予備知識として↓の記事を先に理解して頂いていることを前提として綴りますので、ご了承ください。



きちんと「思考のショートカット」としての体を為している数項目(※個人差はあります)

1、「裏コード」に対する“良好”スケール

 Lydian♭7 です。別名:acoustic scale, overtone scale, Lydian dominant scale, Mixolydian ♯4 scale)

 C: ならば、Db7Eb7、(F7)、Gb7Ab7Bb7 の5つ or 6つです。

緑音符は後述の「コードトーンの全音上」。

 これら「裏コードである」ならば、そのいわば「“表コード” の root」に当たるのが、裏コードの root から数えたら #11th に当たる音であることに注目して下さい。

その意味で「Mixolydian ♯4」という呼称の方が、示唆的ではあるかもしれません。

🔹

2、「rootがノンダイアトニックである△7コード」に対する~

 Lydian です。
 C: ならば、Db△7Eb△7Gb△7Ab△7Bb△7 の5つです。
つまりピアノの黒鍵をrootとする🍎△7全てですが、これらが長期的な転調を示唆していようが示唆していまいが、関係なく🍎Lydian で “やり過ごせ” ます。

 まぁ前項のコード群とよく似ていて、7th に当たる箇所のみ、m7th から △7th に修正しただけ、と思うことができます。

結果論的な風合いが強く、これがどこまで「深い」説明なのかは、保証しかねますが。

しかしそれはそうとして、本記事終盤 モーダル・インターチェンジ” の項を読んだ後、
ここに帰って来て下さい。

🔹

コードトーンの全音上=無難

 こういう感じで色々見ていくと、畢竟これに尽きます。
avoid note の定義?と一致しますが、「和音構成音の半音上を避ける」ことをしているだけのことが大半です。

 妙なスケールいくつも覚えなくても、これだけでほぼ同値です。
 律儀に勉強したとて結局、「時には和音構成音の半音上を弾くべき場面もあるし、時には増2度上を弾くべき場面もある」という修正を、延々と受けるだけです。

 当たり前なんだよな。コードは三度堆積で、つまりそのスキマは「半音」「2半音」「3半音」の3択を以て全事象Uなんだから。

これが一様にはならない(=3択が生まれる)要因は、まさしく「キー」という文脈。

 この「論理的に当然」である部分を除去すると、「コードトーンの全音上=無難」という主張のみが生き残ります。つまり「コレ」だけを考えてるだけでも、そうですね、「CS理論 : 70点」はマークできます。

 ただし、この原則を実践すると、↓ の記事で紹介するような「CSジャズに特有の独特なサウンド」が登場するリスクは発生します。
(※念を押すが、律儀に履修する場合も同様。)

――「急に F△7 が来た」として、これが本当は文脈的に「F: Ⅰ△7」だったとしても、「C: Ⅳ△7」と勘違いして F Lydianを弾いても気持ち悪くない、という感性を肯定する文化だと言えます。

――"vertical" で意味されていること、それは「(調的文脈の分断」です。

「和音機能の曖昧さを楽しまず、排除する」と何が起こる?』より。

 勿論これは「悪い」と言うのではなく、新たな語彙として取り入れるのだと思えば良いことです。TPOは自己責任です。
TPOを学ぶのなら、どう勉強しようが同じ、長い道です。
 ただ、“普通に道を歩いて” いけば良い部分です。



#9thの謎、「三度堆積」コンセプトへの信頼

 俗に言う「ジミヘンコード」のような和音を巡って、度々「#9th」という表記への疑義が成され、私も以前 改めて動画にした所です

 古典的にはこの音は「♭10th」と受け止める音なのですが、ならば何故、現実に「#9th」という “地位” が誕生したのか?

 私は改めて思ったのですが、「この音を 9th だと思った」という経緯が、事実が、存在していないわけないのです。

 ここで考えてみるべきは、#9th を誕生させた当人にとっての「“9th” とは何なのか」です。
#9th とは何なのか・をダイレクトに考えても、永久に辿り着かなかった。

🔹

 そして私の仮説です。先程 “地位” という表現を用いましたが、
“コードシンボルの体系における(※条件)”「9th(9度音)」とは、

という感じなのではないだろうか。

 これ「という感じ」という曖昧な表現が適切になります。幾分か感覚的な概念なのです。(ギターフレット上でも考えてみると、より「何か分かる」かもしれない。)

 言語化すると、「第七音と第十一音に挟まれて存在する和音構成音」。
あるいは「三度堆積の5段目の音」。

知らんけど。別にぶつけて使うけどね。(ただしギターでは構造上、困難。)

 そして重要なのは、これら(古典的西欧芸術音楽&五線紙記譜における)「音度」という概念とは、本質的に独立して規定されている(結果的にそうとしか評価しようがない)概念だということです。

 藝大和声Ⅲ巻の話になるので今回は詳述しませんが、
chord tone和音構成音)」という概念の範囲ですらも、コードシンボル体系以降とそれより前とでは異なる、という指摘も可能です。

ヒント1 ヒント2 ヒント3

🔹

 「三度堆積コンセプトへの信頼」というように題しておりますが、これは「(古典的にはどう分類すべきかはさておいて)調性音楽的・実用的な和音音響達には、必ず『三度堆積の形に綴り直すことができる』という共通点がある」という思想として、題しました。
 これは実質的には、上記 “実用的な和音音響” に対し「現行のコード名の体系のみで、良い呼び名が見つかる」とも言い換えられるものです。

sus4コードが「例外」の扱いになる。6thコードとかもだけど。
sus2というのはギリ「現行のコード名の体系の外」っぽい感じがする。さらに後から追加されたもの。

 だからこの文脈に於いて、「異名同音の古典的に適切な書き分け」などというトピックは、最早「ちゃんと話を聞いていない議論」なのです。
 こう明示的に説明された記憶は一度も無い(私が察した)が

 つまり「古典理論では ♭10th だったかもしれないが、これを #9th と書き換えてしまえば、“三度堆積理論” の中に包摂してしまえるよね」ということ自体を、彼らは重要視したのではないか。

※ややこしくて申し訳ないですが、あくまで私が名付けた「三度堆積理論」というネーミングの「三度」は、教科書通りの「三度」です。

ツッコミたい鋭い人へ。
合ってたけど、当時の想定よりも感情が強かった。

 古典理論的に異名同音をきっちりすると良いことは「限定進行と呼ばれる “構成音のお利口な動向” が可視化されやすくなる」といった所だと思いますが、そもそもこの頃はジャズにおける「modal」の時代。“お利口な動向” なぞクソ喰らえの風潮だったはずです。※これはクラシックの系譜でも同様。

 それらが可視化されることにメリットなど無く、むしろ「足枷」以上にも以下にも映らなかったことは、想像に易い。

深読みし過ぎてる気もしますけど。
「7つのピッチクラスの群」自体は、4例で全て同じ。

なお ここでいう E♭の音について、「9thと呼ぶ」ことと「D#として書く」ことは、
対応する(一致させる)必要が無いのだという主張に留意せよ。
なぜなら教科書に書いてある「音度」とは違うから。

🔹

 ただこのコンセプトの欠点は、コードの理論周りで当たり前に行われる、「オクターブの操作」を無秩序に許す場合、五線紙上で三度堆積の形に直せない和音なんて無いということです。

まぁこれは極論の指摘すぎるかもしれない。
このツッコミ所を許しても、“三度堆積理論” に、現実の有益さを見出す余地はある。
「良好なヴォイシング」の目安とかにはなる。

これ以上、代弁して説明してやる義理は無いけどね。



「半音の2連続」の回避

 以上の全ての話を総括するキーワードが「半音の2連続の回避」です。

 この一言からの水平思考のみで、CS理論の説明に於いて登場する主だったスケールが多く網羅される上、「モーダル・インターチェンジ」というコンセプトの根幹(※想像)まで説明されます。

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