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#300 - Mr. and Mrs. Muffins インタビュー(書き起こし)

本投稿は、2022年1月13日放送『Hickory Sound Excursion』のなかでご紹介した、Mr. and Mrs. Muffins インタビューの書き起こしです。
原稿化にあたり、構成の一部を見直し再編集しております。
なお、音声バージョンはポッドキャストで公開中です。

企画 / 訳:
久納ヒサシ(Hickory Sound Excursion)

協力:
blue-very label


おふたりの住むシアトルって、どんな街ですか?

Noa:
シアトルは、とてもいいところですよ。
ふたりで住むようになって、もう12年になるかな。

Nandaの故郷は、インドネシアのジャカルタなんです。
そしてぼくは、小さな頃から、カンザスのウィチタと、ここシアトルを、行ったり来たりしながら育ちました。
シアトルは自然が豊かで美しくて、本当に大好きな街ですね。
山や森があって、海にも近くて。
ぼく達が住んでいるのは街中ですが、いろんな料理が食べられるし、楽しい場所もたくさんあります。

そして、そんなシアトルの環境は、マフィンズの音作りにもけっこう影響していると思いますね。
シアトルは、雨がよく降る街で、灰色の空に覆われる日が少なくないんです。
だからぼくたちの音楽も、そんな雨の日のメランコリーを内包しているものだと思います。
ただ、正直な話、音楽には現実逃避という一面もありますよね。
だからぼくは作曲をするとき、これまで旅した場所…、
たとえば、Nandaの故郷インドネシアとか。
そんな風景をイメージすることもあるんです。
そしてそれは、ある意味、目の前のシアトルの風景以上に、ぼくたちの音楽性に影響を与えているのだと思います。

Nanda:
Noaの言ったことに少し補足するとしたら、シアトルには、一年のうち3ヶ月くらいは、天気が良くて過ごしやすい季節があるんですよ。
そんなときはアウトドアアクティビティーを楽しんだりもできるんです。
でも、それ以外の季節は、もうずっと雨が降ったり寒かったりして。
そして気付いたんですけど、私達が音楽制作をするのって、だいたいそんな時なんですよね。

どうして”Mr. and Mrs. Muffins” = マフィン夫妻 というユニット名になったんですか?

Nanda:
うーん、よく覚えてないんですよねー。

Noa:
まあ、謎というか。

Nanda:
でも、もともと私達がユニットをはじめたばかりの頃は、プロジェクトのコンセプトにあったのは、子供のための音楽と読み聞かせだったんですよね。そして、私が小さかった頃、故郷のインドネシアでは、Mr. & Mrs. ガスルという夫婦が作った子供向けの歌がいっぱいあって。
それで、私達も同じ夫婦ユニットだし、そこからネーミングするのも可愛いかな、なんて思ったかもしれませんね。ノアは覚えてる?

Noa:
いやぁ、まったく覚えてなくて。
さっきも言ったけど、なんでこんな名前になったか謎なんですよね。
ただ、すごくよくマッチしてるとは思いますよ。
ぼくたちは夫婦ユニットだし、ぼくたちが作る作品はどれもとてもスウィートな感覚があるし。
あと、ぼくはマフィンが好きだしね!

ちなみに、どんなマフィンが好きですか?

Noa:
ぼくの好きなマフィンはブルーベリーマフィンです。
だから今回、ブルーベリー・レーベルからリリースできることになって、とっても誇りに思ってるんですよ。
完璧にフィットしてますよね。
もう夢が叶ったって感じかな。

"Do you wanna dance?" をカバー曲として選んだ理由は?

Noa:
これは1曲目のトラックなんですけど、ぼくは今回のアルバムをこの曲から始めたかったんです。
どうしてかっていうと、ぼくはビーチ・ボーイズの大ファンだから。
実は、ぼくにはマイ・ルールがあって、ビーチ・ボーイズの曲については分析しない、と決めていたんです。
なぜあんなに素晴らしく聴こえるのかという、あの音楽の魔法をそのままにしておきたくて。
でも、今回はちょっとだけそのルールを破って。
まあ、ビーチボーイズのレパートリーではあるけど、彼らのオリジナルじゃないし。
それで、ぼく達はバラードのスタイルでカバーすることができたんです。
友人のアレクサンドラとのデュエットも、とてもうまくいったと思います。
元々のアイディアとしては、インドネシアでライブをするときに、Dream Dancingという曲のイントロダクションとしてこれを演奏して、そのまま繋げっていったんですよね。
だから今回のレコードでもそれをやってみたという感じなんです。

"Tokyo"というタイトルの曲もありますね。これは実際に東京を旅した経験からできたものなのですか?

Nanda:
いえ、実はまだ東京には行ったことがないんです。
でも、また旅ができるようになったら、私達がまず最初に行って見たい旅先だとは思いますね。

Noa:
実はこの曲もカバーなんです。
1985年にリリースされた、Nileというバンドの"Where is Zanzibar"というアルバムに入っている曲なんですが、ぼくが小さい頃、家にこのレコードが何枚もあったんです。
というのも、親戚のおじさんがこのアルバムのサウンドエンジニアだったんですよね。
だからぼくと従兄弟は、もう何度も何度も、このアルバムを聴いていて、とても好きな作品でした。
そのなかでも一番好きだった曲が、アルバムの最後に入っていた、この"Tokyo"だったんです。
今回のニューアルバム "The Manhattan Slide and Other Songs for Dream Dancing" をレコーディングしている時、ある日、たまたまこの曲を聴いて、だんだんこの曲のギターの弾き方がわかってきました。
それで、テンポをぐっと落としてバラードタイプの曲にしたらいいんじゃないかとふと思いついたんです。
オリジナルバージョンはYouTubeでも聴けますが、ぼくたちのバージョンとかなり違うと思います。
でも、ぼくはこのトラックが東京という街のフィーリングをうまく捉えられていることを願っていますし、近い将来に東京を旅して、東京のファンのためにこの曲を演奏できたらいいなと思っています。

"A Rainy Interlude"では、なんとルイ・フィリップとモンド・ガスカロが参加しています!この2組とのコラボレーションが実現したいきさつを教えてください。

Noa:
ルイ・フィリップとのコラボレーションはまさに夢が叶ったようなできごとでした。
ぼくはもう20年以上彼の音楽のファンで、ソングライティングにもとても影響をうけていましたからね。
ルイには、確か15年くらい前にウェブサイトの掲示板でコンタクトを試みたことがありました。
そして、マフィンズの前作を制作した時も、フランス語で歌ってくれないかとメールでオファーしました。
でも結局、メールはうまく届かなかったみたいで、彼の目にふれることがなかったようです。
そして、ぼくは今回もう一度、メールをしてみました。
今度はちゃんと返事があって、前のメールをチェックできていなかったことを彼は何度もお詫びしてくれました。
そして、歌うことについても快諾してくれました。
ただ、そのとき、ぼくはインドネシアのバハサ語で歌詞を書いてしまっていたんです。
それで、「英語に直した方がいいかな?」とルイに訊いてみたんですけど、彼は「いや、バハサ語で大丈夫だよ」と言ってくれて。
そして、何ヶ月か経ったあと、彼の歌が、素晴らしいアレンジのバックコーラスとともに仕上がってきました。
バックコーラスについてはぼくはまったくタッチしていなくて、彼が独自に考えたものなんですよ。
ただ、正しく発音されていないバハサの単語がいくつかあって、そのことがインドネシアにいるモンド・ガスカロとのコラボレーションに繋がるんですが…。
モンドとのコラボレーションについてはNandaの方が説明できるかなと思います。

Nanda:
そうですね。モンド・ガスカロと私は古くからの知り合いでした。
シアトルに移住する前、私はインドネシア・ジャカルタのインディーシーンで活動していて、ちょうどそのとき、モンドはSore(ソーレ)というバンドのメンバーだったんです。
Soreはとても人気のあるバンドで、私もファンだったから、NoaにもSoreを紹介して、それでお互いファン同士になったんだと思います。
そして、たぶん2015年だったと思いますけれども、私達ふたりはモンドと彼の奥さんシーラと一緒に会う機会がありました。
そのころ彼らは、アイビーリーグという、自分たちのレーベルをはじめていて、Mr. and Mrs. muffinsの作品をアイビーリーグからリリースしたいって言ってくれたんです。
それは私達にとって最高に嬉しい驚きでした。Sore時代から現在のソロにいたるまでずっとモンドのファンだったし、アイビーリーグから出ているバンドも大好きでした。
だから迷うことなく、即OKしたと思います。

Noa:
いや、あれはたぶん2016年だったと思うよ。2015年にインドネシアに行った覚えはないからね。
それで、2018年にアイビーリーグはマフィンズの前作をリリースして、ぼくたちとモンドはインドネシアで何回かライブも一緒にしました。
そしてそのタイミングで、ルイ・フィリップがバハサ語を正しく発音できていないところを、モンドにデュエットという形で一緒に歌ってもらうようにお願いしたんです。
それで、あの2人が同じ曲で参加することになったというわけです。
モンドが参加してくれたことも、2人の声が同じ曲で重なるということも、ぼくにとっては本当に夢が叶ったような出来事でした。
ふたりともぼくにとってレジェンドでしたからね。

最後に、おふたりにとって印象深い旅のエピソードと、その「旅のサウンドトラック」といえる一曲を教えてください。

Noa:
ぼくは、2018年に家族で旅行したバリですね。
ジャカルタでのアルバムリリースライブでインドネシアに行って、その長い滞在期間中に足を伸ばしました。
1週間のオフをとってバリに旅行したんです。
バリにいる間に、ナンダはぼく達の前作『The Quiet Moon and Other Midnight Memories』 のアートワークを仕上げて、そしてジャカルタに戻ったときには、もうそのCDが出来あがっていました。
それでぼくたちはライブ会場でCDを売ることもできたんです。
ほんとうに素晴らしい旅でしたよ。
お客さんの反応も最高だったし、生まれてはじめてバリの美しいビーチも体験したし。
2018年のあのライブは、ぼく達のキャリアで最も成功したものだったと思いますね。
「旅のサウンドトラック」は…、そうですね"The Daydreamer and Her Valise"という曲にしましょう。
この曲はぼくたちのレコーディングの中でもベストといえるもののひとつです。
モンドの声がうまくハマっていて、レイドバックしたバハサの雰囲気がありますね。
バリの気怠い日曜の午後のビーチの雰囲気も感じさせてくれて、あのときの旅にもぴったりだと思います。
Nandaはどう?

Nanda:
そうね、私もその話に乗っかろうかな。
2018年のジャカルタでのライブのあと、Noaは先にシアトルに帰ったんです。
そして、私と息子のオマーリは、もう2ヶ月ほどジャカルタに残ったんですけど、それが私にとって思い出深い、そして、ちょっとほろ苦い旅だったと思います。
もちろん、ジャカルタの家族とは一緒に過ごすことができたんですけど、Noaとは離れ離れになってしまったのでホームシックを感じて。
自分の故郷にいるのにおかしな話なんですけどね。
そう、だからそんなとき、Mr. & Mrs. Muffinsの曲がその旅のサウンドトラックと言えるかなと思います。
サディーが歌った曲で、えーと…"Dream of you"ですね。

Noa:
かわいい曲だよね。
あ、そうそう、2018年の旅といえば、初めてバトミントンの試合を生で観戦したんですよ。
あのとき、ぼくらはジャカルタで開かれたインドネシア・オープンを観にいったんです。
ぼくはバトミントンが大好きで、ジャカルタのサナイアムっていう市内最大のスタジアムで好きなプレイヤーの試合を観戦できて、夢が叶いましたね。
そう、だから、2018年の旅というのが、ぼくが今までに経験したなかで最高の思い出だったんじゃないかな。


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Mr. and Mrs. Muffins -"The Manhattan Slide and Other Songs for Dream Dancing

  • Aritst : Mr. and Mrs. Muffins

  • Title : The Manhattan Slide and Other Songs for Dream Dancing

  • Label : blue-very label x honey muffin records

  • Cat.No : blvd-023

  • 11tracks. Vinyl LP w/insert

  • Limited pressing 200 only


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