子育てのすゝめ
防衛費、国防費、軍事費…
歴史上、未だかつて減少したことのない、増大の一途を辿るばかりの費用の一つ。
有史以来、常に重要で、権力者に最も注目される特異なポジションにある。
内政干渉的に外側から(一時的に)予算が減ったことはあるかもしれないが、あくまで限定的な語り。しかも、自発的に軍事費を削減できた国はない。どの国、地域、団体も、「まずは軍隊」であったことに異論の余地はなさそうだ。そもそも削減すること自体を、目的にすらしていない。永遠に膨張して行くのだろう。
『もっとおおきなたいほうを』(福音館書店)という絵本が、こんな感じの気持ちを醸し出していて、実にユニークな内容だった。
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果たして日本はどうなんだろう。
日本国憲法第 9 条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。 ② 前項の目的を達するため、 陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。
このようなconstitutional lowを戴いている日本。
1945年に連合国の占領下にあり、まだ敗戦の痛手をここかしこに抱える1950年に、早くも警察予備隊が1,300億で装備されたのを皮切りに、現在まで、基本、増加傾向である。名前は「防衛関係費」。
ともかく、GDP比1%ほどを保ちながら、近年まで右肩上がりで推移している。
おかしなもので、GDPが減少すれば防衛関係費金額も減って行くんじゃないのかな。
なんだか怪しげな歴史である防衛関係費。
防衛関係費を巡る歴史は多々あれど、ひとまずここ最近の、しかも、ごくかいつまんで、以下、自分が気になってメモしていた関連部分を抜粋。
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2022/7
防衛費増額、GDPの2%に。参院選での公約として、自民党が掲げた。岸田首相ももちろん後押し。
2%の根拠は、以下。
日本の防衛関係費は、防衛力整備経費に沖縄特別行動委員会(SACO)経費や米軍再編関連経費などを加えた予算。加盟国に国防費対GDP比2%を求める北大西洋条約機構(NATO)の算定基準に含まれる海保予算やインフラ整備、研究開発の予算は算入されていなかったため、NATO基準も参考に日本独自の算定基準を作成した。
2023/6/16参院本会議
防衛費増額の財源確保に法的根拠を与える「財源確保法案」
今国会の重要法案の一つである防衛力財源確保特別措置法が2023年6月16日の参院本会議で、与党の賛成多数で成立した。政府与党は5年間で約43兆円の予算を確保し防衛力の抜本強化に取り組む方針で、同法の成立により法律上もその姿勢が明確になった。
2023/6/21読売
米国のバイデン大統領は20日、カリフォルニア州で開いた支持者集会で、日本の防衛費増額を巡り「私は3度にわたり日本の指導者と会い、説得した。彼自身も何か違うことをしなければならないと考えた」と述べた。自ら岸田首相に増額を働きかけたことを示唆したものだ。
北大西洋条約機構(NATO)は加盟国に対国内総生産(GDP)比2%の防衛費確保を求めている。日本は非加盟だが、バイデン氏は「日本も巻き込むことができると思っていた。日本が欧州での戦争に関心を持ったのはいつ以来か」と述べ、日本のウクライナ支援強化も自ら引き出したものだとアピールした。
2023/6/23日経WEB
松野博一官房長官は23日の記者会見で、米国のバイデン大統領が「日本に防衛費増額を説得した」と発言したとして米政府に「誤解を招き得る」と申し入れたと明らかにした。
米政府も「防衛費増額は日本自身の判断によるものだ」と理解を示したという。
バイデン氏は20日、2024年の大統領選に向けた集会で「日本は飛躍的に防衛費を増やした」と指摘した。自身の説得によるものであると主張していた。
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以上を、簡単に言えば以下。
・国防費上げよう!何がなんでも上げなくちゃいけないんだ!中国の脅威だ、台湾有事だ、北朝鮮のミサイルだ、日本の危機だ。
↓
・NATOに倣って行こう(なぜ?)
↓
・防衛費増額、多数の支持を受け可決
↓
・米大統領「日本の防衛費が増えているのは、僕の進言の結果だよ」
↓
・(超焦って)岸田「そんなことない、僕自身の判断だ、何を言うんだ」
↓
・米国政府「まぁ良いでしょう、そう言うことにしてやる」
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まあ。
安っぽいコントかな。この面白さ、伝わるといいな。
カルロ・ゴルドーニや、チャップリン、バスターキートンあたりが、この辺を脚本、演出したら、上質で面白いサティラの効いた演目ができそう。
コーエン兄弟、モンティ・パイソンみたいな、とことん不条理をユーモアに変えて行く気概のある人は、日本にはいないのかな。
サタデー・ナイト・ライブみたいな「右も左もネタ」みたいな番組も、日本ではどうしてできないのかな。
社会の成熟の問題なのか、民主主義の日本人なりの誤解なのか。分からない。
先進国トップで日々行われている政治という名の茶番劇は、彼らが真剣に実際にやってるからこそ、どんなコメディアンも叶わない、非常に侘び寂びの効いた最上のコメディなのに。政治の世界は、そんじょそこらの芸人の安っぽい笑いなんか遥かに及ばない。
なんでこんな美味しいネタに食いつかないのかな。
お金を稼げないからかな。
なんで日本では政治風刺でお金を稼げないのかな。
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閑話休題。
ホント、前述のバイデンと岸田は、曲がりなりにも「先進国」と呼ばれる2国間の防衛費を巡るやり取りとは、とても思えない。
いずこも同じ穴の狢である。
プーチンにしろ、ネタニヤフにしろ、タリバンにせよ、権力者に知性を感じられない、この無常感ときたら。
やってることが、小学生のケンカだ。
知性ではなく、力でねじ伏せる。
右手で握手しながら左手でお互い銃を突きつける。それらに通底するのは、「プライド」だろうか。
男のプライド(男の皆さんには申し訳ないことだが)については、ホント、小さなころからほとほと呆れて来た。そんな、ケツを拭く役にも立たない(失敬)プライドなんか、捨ててしまえ。
とにかく、誤ったヒロイズム(もしかしたらナルシシズム)に浸った彼らに足りないのは現実味、体感、ではないだろうか?
ここで、男性が、女性が、という単純な話にはしたくない。
しかし、有史以来、権力者は常に男性であったし、社会を歴史を主に作って来たのは、残念ながら権力者男性であった。
権力者男性は、社会を作りつつ、争いに明け暮れていた。
つまり、建設しては、破壊してきた。
アホかな。アホなのかな。
SDGsなんて、絵に描いた餅でしかないと、世界中のみんなが薄々分かっていても、やってるフリをする。そもそも戦争という行為がすでに、真逆の発想であり、そこに手を染めていない国はない。どの口がSDGsなんて言うんだ。
女性が権力を一部分握ったとしても、まぁ変わらないだろう。システム自体がこのまま、トップを変えるだけでは、砂漠の一滴の水。フィンランドもニュージーランドも、まあーいろいろある。
別に女性が世間を牛耳ったら争いがなくなるなんて思ってない。
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だとしても。
だとしても。
底辺で這いつくばるように生きていると、ふと、下から全体を仰み俯瞰しながら一つ思う。
権力者のみなさんが、子育てしていたら、世界はもう少し変わるだろうな〜
と。
権力者男性に共通するのはただ一つ、子育てしてない。これに尽きる。
子を産み育てることは、安っぽいスローガンやらレトリックの対極にある。
24時間、赤子をきちんと育ててみろ。政党内派閥やら、軍需産業やら、そんなところで身を粉にして職務に勤しむあなたの苦しみが、如何に小さなものだったかがわかるかもしれない。
政治は血を流さない戦争であり、戦争は血を流す政治とか言ったの、誰だったかな。
とにかく、政治の世界は、青いモノには務まらない、徹底したリアリズムの世界なのだと、幼いころから思わされてきた。
マキャベリズムに傾倒した若き日もあった。(今も思考の一つには違いないが)
そんな自分が人生も半ばを過ぎて今思うのは、
リアリズムに欠けているのはどちらだ
と熨斗をつけてお返し差し上げたい。
有史以来の人類史において、安っぽいヒロイズムやプライド、承認欲求、つまり一言で言えば「幼さ」が、常にこの世を牛耳ってきて、その結果が、争いの歴史。
私もその歴史上のチリの1人で、別に何を成そうとか考えたことないけど、ただ、淡々と子を育てていると、戦争がアホらしくなるものだ。特に幼子。だって、目を離したら簡単に死んでしまうんだから。
このリアリズムの前には、安っぽいヒロイズムだのマチズモだのが、瑣末なことに思えて仕方ない。
タリバンやアルジャジーラのみなさんも、ぜひ、幼子を天塩にかけて育ててはいかがかな。プーチンさんも、プリゴジンさんも、ぜひ。
バイデンさんも、岸田さんも、おすすめよ。人生、変わるよ。
今やってることが、バカらしく思えること、間違いないですよ。
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ちなみに現代風にエクスキューズを入れると、子どもを持ちたくても持てない人、そして持たない判断をしてる人、をくさする意図はもちろん皆無だ。
子育てする人みんながリアリストになる訳じゃない。子育てしたからえらいわけでもない。
ただ、
子育てと男性がこれだけ切り離された世界と、戦争が無くならない世界が、多少シンクロしているのではないか、という仮定の話である。
権力者男性が子育てしたら、少しは真のリアリズムに目覚めるのではないでしょうか。
思えば、「人を育てる」と言うごく基本的なことをしない人が、ざっと見積もっても80億の1/4くらいはいるということですもんね。恐ろしいことだ。
育てる苦しみを知らないから、簡単に壊されてく訳だ、様々なモノが。