私の2022

2021年はとても大変で、とても幸せで、とても忘れられない一年になった。

◆R-1

準々決勝。めちゃくちゃ手応えがあった。聞いたことないくらいのルミネの笑い声が、何度も跳ね返ってきた。
めちゃくちゃ手応えはあったけど、結果発表までめちゃくちゃ不安だった。仕事があって気が紛れて良かった。

仕事が終わってそわそわしながら飲んでいる席で、せいやに準決勝進出者発表されてると告げられ、言わんといてくれ、いややっぱり言ってくれ、などの問答を30分弱した挙句「ヒコロヒー、進出です!」と言われて飛び跳ねた。せいやのワインを勝手に飲んだ。 

必要あらばいつでも出てくださいと連絡をくれたライブの主催者や芸人たち、たくさん出させてくれたライブにマジ心から感謝、と、湘南乃風ばりに御礼申し上げながら準決勝当日の朝まで何度も何度もネタを練り直した。
準決勝まで進んだ30人のピン芸人の中から、あなたはファイナリストになれます、あなたはファイナリストになれません、と、告げられた瞬間があった。
ファイナリストになれなかった。
またかい、いつもやんけ、もうええわ、だった。
準決勝まで進めることがすごいことも分かってはいるつもりだったけれど、また、今回も、最後の最後でファイナリストになれなかった不甲斐なさで八つ裂きになった。
あらゆる人々がその夜に集まってくれて、励ましてくれて、自分の情けなさというより人々の優しさに、目が終わった。

敗者復活戦の日、大阪、そいつどいつの刺身さんがR-1の偉い人に「おい、このネタはコンビのネタやないか、何をしにきとんねん、R-1や言うとるやろ」と怒られたと落ち込んでいて、意味がわからなさすぎて涙を流して床を叩きながら笑った。
それから敗者復活楽屋にファイナリストのザズがわざわざ来て、後ろで手を組みゆっくりと私たちの周りを歩き回りながら「敗者の皆さ〜ん、気分はどうですか〜」と言っていてけっこう最悪だった。
本番が始まり、ザズのフリップにはクリップが止まっていて、その瞬間、敗者復活楽屋は喜びに湧いた。あいつ最悪やったからや!と、その日一番の大盛り上がりを見せた。
特にザズの同居人であるひわちゃんとニキくんはザズの普段の最悪さを知っているので、祭りくらい喜んでいた。

ザズは普段が最悪なせいで優勝を逃したので、普段が最悪だからだよと言いに、ひわちゃんと刺身さんとニキくんと楽屋まで行った。ザズは「最悪やー!」と言っていた。

そのあとそのみんなで大阪城のふもとで缶ビールを何本か飲みながら、また刺身さんの「R-1だと言ってるのにコンビのネタをしかけた未遂で退場させられそうになった話」を振り返っては、大阪城の土を叩いて笑った。刺身さんのおかげで、大阪城のふもとの土はしっかり固まることができた。




◆キョコロヒー

2月の終わり、マネージャーから電話がきて「日向坂の女の子と番組がはじまる」と聞いた夜から、はじめての打ち合わせ、キョコロヒーという変な名前になると知った日、初収録、変な女、エンディングテーマ熱唱、深夜26時という聞いたことない時間の放送、トレンド、大選挙1位、枠昇格、登録者10万人。
キョコロヒーのことを10万人もの人が知っているという事実に時々ひっくり返りそうになる。

変な女二人でどこまでいけるのだろうかと思うけれど、いつも諸先輩方やダンサーの皆さんのお力をお貸し頂きながら、優秀でユニークなスタッフさんがたに支えられながら、とても良い番組を、嫌味なく新しくておもしろいものを、つくれていると、胸を張らせて頂いている。
とても大切で、みんな大変で、いろんな幸せな瞬間が詰まっている、宝物みたいな番組に出会えた。
齊藤京子に言われて一番心に残っているのは「ヒコロヒーさん、森田さんは女芸人と付き合えないらしいですよ」である。全く何の話をしているのか分からなかった。



◆best bout of hiccorohee

テレビに出だしてすぐの頃「ネタ見たことない」というインターネットの声が飛んでくることがあった。
10年ずっとネタやってきたのに、単独も地道にこつこつやってきてようやく大きなところでやれるようになってるのに、なにを言うとんじゃ、と、思っていた。

でもこの単独を終えて、そういう意見は心からどうでもよくなった。事実は絶対に変わらないという当然のことを、自分の肌でよく分かった。
事実はインターネットで飛んでくるよくわからない声ではなくて、下北タウンホールみたいな大きいハコでの公演を即完で埋めてくれる人たち、1000枚の配信売り上げ、観てくれた関係者の皆さんの熱い感想、そういうところにちゃんとある。
忙しすぎて、白目を剥きながら会議室にこもって、稽古場にこもって、この時期のことはとにかく思い出したくないけれど、なんとかやりきれたのは本当に周囲のスタッフの支えにあった。マジ感謝。DVD絶賛発売中。



◆きれはし

エッセイ「きれはし」を出した。皆まで書くのは恥ずかしくて、わりとなんでもないことを書き連ねた。手にとって読んでくださった皆さんが、バラエティの時より少し深く私にじっくり触れてくださっているような気がして有難かった。編集の皆さん、全国の書店員の皆さんにマジ感謝。
きれはしのイベントを奇妙礼太郎さんをゲストにお迎えして行った。私が歌詞を書いて奇妙さんが歌ってくださった。私の鬱屈とした巌のような怨念文字たちは、奇妙さんの素晴らしい歌声によって浄化された。ほぼお焚き上げみたいなイベントになった。きれはし絶賛発売中。



◆コンバーストーキョー

天下のコンバースさんのアイテムをデザインさせてもらった。
「ヒコロヒーデザインのカプセルコレクション」という名前がついた。嬉しかった。楽しかった。モデルをやるのだけちょっと恥ずかしかった。イベントで私のことを好きでいてくれる人たちとゆっくり話せたことも嬉しかった。デザインのことがたくさん勉強になって楽しかった。コンバース絶賛発売中。


◆ひとりラジオ

TBSラジオで1ヶ月間「24時のハコ」の枠で「ヒコロヒーのハコ」をやらせて頂いた。
1時間の一人喋り、チーム掃き溜めと勝手に名付けた作家の大矢くんとデレクターの榎本くんと、宗岡さんと宮ざきさんに見守られながら3人で1回1回を作っていった。
ヒコロヒーのハコでトレンド入りしたり、音楽の趣味を露呈させたり、FMっぽさをちらつかせたりしながら、毎週水曜が楽しかった。
1ヶ月後、滝音のハコをやっているというのでスタジオに遊びに行くと大矢くんと榎本くんが楽しそうに収録していて、元彼が私と行ったアウトレット詳しくなって今の彼女を引き連れてるところを目撃したみたいな気分になった。赤坂の男は切り替えが早い。

ANNXは生放送の一人喋り。
初めてのリアクションメール、生放送の緊張感、CM中にスタジオに来てくれたせいや、放送後に霜降りのラジオに参入。思い出たくさん。
年末特番「ラジオとヒコロヒーと」はもっとノンストップで、CMなし歌なし1時間生放送の一人喋り。
ぶっ通しでたった一人で生放送で喋りきることがこんなにも腕を試されるとは、想像より遥かに神経が要るものだったけれど、めちゃくちゃ反響があって嬉しかった。有楽町の男は生放送の耐性をくれた。



◆TheW

ファイナリストになれた。たくさんおめでとうと言ってもらえた。
本番は緊張したけど、あんくらいは普段のバッドコンディションの時も全然噛むので単純に基礎の問題だった。マジお笑い草。
でも不思議と全く落ち込まなかった。落ち込まなきゃいけないのかもしれないけど、清々しさと誇らしさのほうが余裕で勝っていた。大きな経験をして、悔しさも知って、恥ずかしさも情けなさも、喜びも感激も幸せも知れることは、何も知らないということと雲泥の差があることを、ずっと準決勝で落ちてきた私は嫌というほど知っていたからだった。

終わってから稲田と飲んで、堀川ちゃんとテレビ電話もして、さんざんいろんなことを喋って笑って、その最中にリンゴさんからLINEがきてちょっとだけ酔いが覚めて、二人で淡路さんと上杉と合流して、稲田が淡路さんにずっと「西のオバハンすぎる」といじめられ、上杉には「パパ活してんすか?」と尋ねられ、稲田は「パパ活してないねん」とばかり言って、ファイナリストなのにこの日もまたパパ活疑惑を晴らしにだけ東京に来たみたいになっていた。

飲み終わってツイッターを見たら三村さんと岩井さんがヒコロヒーおもしろかったとツイートしてくれていた。
粗品からもせいやからも連絡がきていた。
森本サイダーは「優勝してもしなくても僕はヒコロヒーさんのネタが大好きです」とラインしてくれていた。
百瀬は軽いだけの文章だった。黒沢さんも黒沢さんらしいメッセージをくれていた。鬼越の金さんから優しい言葉が入っていた。つるちゃんから分厚いメッセージが入っていた。とにかくみんな、いろんな人が、連絡をくれていた。
松竹のスタッフたちからも、熱いメッセージがきていて、
みんなどうしてこんなに優しいのかわからなくて、自分もみんなみたいに優しくなりたいと思った。



◆ハライチのカウントダーンとバナナムーン

ハライチさんの年越し特番に、岩井さんの代打で立たせて頂いた。その後、バナナマンさんのバナナムーンGに、澤部さんと共に代打で立たせて頂いた。
ラジオ聴きながら寝落ちしてしまった時に見る夢みたいだった。最高の年明けで、最高の1年になる気しかしなかった。


売れるということは、取り返しがつかない。
まだ売れていない、に、戻れないのだと知った。
でも芸人をやっていて、多かれ少なかれ「売れる」を知れたことはこれ以上に誉なことはない。
ずっとこうなりたかったのだから、と、思いつつも、やっぱり、取り返しはつかない。でもそれを恐れていては何もできない。
売れる、というのは、結果ではなくて切符みたいなものだと何度も思った。だからそれがあってもなくても、実は、行きたいところには必ず行けるものだとも知った。

いつも支えてくれて応援してくれる皆さん、いつも本当にありがとう。
自分を惨めに感じる日など、あなたと同じように私にもありますが、そんな時にあなたがくれた言葉はすべて私の活力になりました。
言葉や時間やお金は、人を幸せにするために使えない人も多くいるでしょうけれど、私を応援してくれているあなたは、少なくとも私のことは幸せにできているので最高です。本当にありがとう。

今年もよろしくお願いします。

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