デザイン会社がなぜ音楽事業に取り組むのか【後編】
こんにちは!hicard PRのannaです。
前回の記事、「デザイン会社がなぜ音楽事業に取り組むのか【前編】」では、主にクリエイティブ業界に対して感じている課題と、hicardのデザインに対する考え方や思いについてご紹介しました。
後編ではいよいよ音楽事業について触れていきます。タイトルにもある、音楽事業に取り組む理由と具体的に行っている活動内容などをご紹介していきます。
モノづくりにおけるジャンルの垣根を壊していく
――hicardが音楽事業を始めたきっかけやその背景は何ですか?
Take:僕がラッパーだというのが一番大きな理由ですね(笑)。絵もやってきた、デザインもやってきた、あとはラップもちゃんとやろう、という感じです。やりたいことをとことんちゃんとやるのを大切にしているので。僕は高2からラップを始めたんですが、周りのラッパーの友人を見ているとやはり音楽では食えない、というのを感じていました。でもヤバいアーティストっていっぱいいるんですよ。そういう自分の周りのヤバイ人たちを助けたいなって、それが僕の義務だなくらい思っています。大手レーベルに所属していた人もいたけど、どうしても商業的になってしまい本当にやりたい音楽ができなくなってしまう課題はありますね。
Leo:僕はTakeとは少し違った視点で、クリエイティブ業界内の分断を壊していきたいという思いがあります。Webも、紙モノも、映像も、広告も、同じモノづくりをする人たちなのにそれぞれの界隈に分断があるように感じています。
人材不足の話にも繋がりますが、クリエイターを目指す人が少ないのはクリエイティブ業界が外から見るとブラックボックス化しているからなのもあると思います。さらにクリエイティブ業界内でも隔たりがあることが多い。例えば、広告業界においては特に大手広告代理店のような大手企業が中心となっていますが、多くのクリエイターはそのような大手のノウハウや経験を学ぶ機会は少ないです。
一方で、スタートアップ業界は独自のカルチャーを持っていて、時には大企業を「大企業病」と呼んで批判するなど自負心が強い部分があります。大手企業とスタートアップの分断はお互いの良さやノウハウを学び取ることを阻んでいます。
音楽業界とスタートアップ業界の隔たりは大きいと感じていて、音楽業界にいて経済的な後ろ盾がない人たちは経済的に厳しい状況に陥りがちですが、これは当人たちにビジネスのノウハウが足りないからだと思います。一方でスタートアップにいるクリエイターはビジネスのスキルやノウハウは当たり前に有していることが多く、それを音楽業界に共有できれば良いのにと思います。
僕たちはこの分断を解決したいと考えていて、その初めの一歩として、Takeを中心に自分たちにとって身近な音楽業界に入っていくことを始めました。
Take:デザイン会社が音楽事業をやってる例ってあまりないと思うんですよ。だからこそクリエイターやアーティストに強いインパクトになる。僕自身が代表でラッパーという立場だから僕が率先して取り組むことに意味があると思ってるし、hicardと似たような思想やバックグラウンドを持つチームが増えるといいなと思ってます。そうするとより世界のモノづくりのレベルが上がり、アーティストとして食べていける人も増えていくなと。
僕はさっきまず周りの人たちから幸せにしたいと言いましたけど、最終的に実現したいのは、モノづくりにおけるジャンルの垣根を壊し、よりモノづくりのレベルを上げて、人々を豊かにすることです。アーティストを救いたいのはもちろんあるけど、それだけではなくモノづくりの全体的なレベルを上げたい。だから音楽業界に限らず色々なことに挑戦していきたい。そういう世界を作りたいんです。
――音楽とデザインの共通点は何かありますか?
Take:音楽とデザインは基礎的なスキルは同じだと思ってます。何なら飲食や建築も同じですよね。設計力やコミュニケーション力、マネジメント力などは、何を作るにも必要な能力だと思います。デザインにおいても、グラフィックデザインとUI/UXデザインは職種やスキルが分かれていますが、基本的な考え方や能力は一緒です。だからグラフィックデザイナーがUI/UXデザインをやったっていい。それを許容する会社があってもいい。さらに言えばUI/UXデザイナーが音楽を作ったっていいじゃないかと。人ができる限界を狭めたくないんです。もちろんその道を極めたプロフェッショナルがいることを否定はしないです。
ただ、音楽はアートの要素も入ってくるのでデザインとは異なる部分もあり、どうやってアーティストをマネジメントするかなどは考える必要がありますが、例えばhicardの組織作りのノウハウを活かせるんじゃないかなと思ってます。
Leo:よくデザインとアートの違いに関する議論が起こりますが、それには僕は違和感を覚えます。互いにくっきりと境界線を持つものではなく、対立させたり比較させたりするものではないと思うんですよね。例えば音楽はどちらかと言えばアート的なアプローチが受け入れられやすいコンテンツかなと思いますが、音楽を作る時にはデザイン的アプローチも必要になるものだと思っています。
Take:そうそう、誰と組むかとか、曲の構成を考えたりとかね。逆にデザインをする時もアート的なアプローチをしたりもするよね。そもそも「デザインとアートの違いは何か」という問い自体がナンセンスな気がする。
「hicard Record Club」で取り組んでいること
――実際に音楽事業ではどんなことを行っているのですか。
Take:いくつかあります。音楽事業は「hicard Record Club」という名前で行っているんですが、まずラッパーminamiのプロデュース・サポートを行っています。彼はめちゃくちゃかっこいいラッパーなんですよ。具体的にはトラックの提供や配信サポート、MVの制作、家賃補助などをしています。先日、渋谷スクランブル交差点にあるビジョンに彼のMV(Music Video)が映し出されました。これは彼一人ではできなかったことだと思います。彼にはラップに集中してほしい。それ以外のことは僕らでサポートできればと考えています。
オフィスにはレコーディングスタジオを設けていて、所属アーティスト以外にも貸し出しています。他には、DJやラッパーのライブを行う音楽イベントを主催しています。
まだ音楽事業だけではビジネス的に成功しているとは言えませんが、ゆくゆくはデザイン事業に頼らず、音楽でも社会的な成功を収めているというモデルケースを作りたいですね。
Take:minamiはhicardの合宿にも参加してるんですよ。デザイナーとラッパーそれぞれの理解を深めて、「あなたはラッパーだから」という垣根をなくしたい。
Leo:別人種とみなした瞬間に、コミュニケーションが取れなくなるからね。
Take:そうそう。相互理解がある上で一緒にモノづくりをするというのがめちゃくちゃ大事で。hicardのミッションに「つくる力を引き出し、束ねる」があって、映像を作る、写真を撮る、音楽を作る、などそれぞれのサークルがお互いを理解し合えている、そういうチームほど強いものはない、良いものづくりに繋がっていると思います。
Leo:さらにパーパスは「クリエイティブをリードする」で、ミッションと共に僕は結構気に入ってる。束ねるというのは、全員の持っているスキルをぎゅっと集めて同一化してしまうことではなく、各々がちゃんと1つの紐として独立している状態で束ねるというのが目指しているところで、クリエイター同士の向き合い方も表しているんです。僕はUIを作るし、あなたは音楽を作る、でもお互いクリエイターだけれど別物であるという理解はしつつ、同じ価値観を持って協力し合うことがつまり束なるということだと思うんですよね。
社員を均一化・規格化・標準化してしまって、それぞれの個性が消えてしまっている肉団子状態の企業が世の中には多いと思うんですが、僕たちはそうでない集団作りを目指しています。
――音楽事業を始めることで、その束となるような新しく生まれた繋がりはありますか?
Take:ありますあります!同じくクリエイティブ・エージェンシーのmonopoさんはまさに。monopoさんとの出会いはまた別で話したいですが、代表の岡田さんとたまたま下北沢のセッションで知り合って。それから仲良くさせていただいていて、最近はmonopoさんと共同でセッションイベント「mono-hi」を始めました。あとはよく一緒にスタジオ入って遊んだりもしています。まだお仕事はご一緒したことないんですけどね(笑)。
Take:あとはannaさんも音楽をやっていてmono-hiで出会ってるし、シンガーのASA Wuも音楽界隈の友人ですね。ASA Wuは歌がめちゃくちゃかっこよくて、大阪に住んでるんですが東京に来た時はうちのオフィスに泊まってます。うちでレコーディングしながら泊まった方がいいよねって。
音楽をやっていると色々な界隈の人たちと繋がれるのはありがたいですね。
ジャンルに捉われず事業展開していきたい
――今後の音楽事業の展望を教えてください。
Take:音楽事業はこれからも続けていくつもりです。辞めちゃいけないと思ってる。良いアウトプットを出し続けてちゃんとやり遂げたいです。個人的にもラッパーの活動は続けていきたいし成果を出したいですね。まずはminamiを全面的に押し出し、音楽イベントも増やしていく予定です。
音楽事業以外では、飲食業にも手を出したいと考えています。hicardはジャンルに捉われず、幅広い分野で活動していきたいと思っています。海外展開もやっていきたい。
Leo:僕は音楽のことは詳しくないですが、今僕らがやっていることはスタートアップ業界と音楽業界をつなぐことで、両者に新しい風を吹き込めればと思っています。
Takeが言うように音楽業界に限らず、色々な業界の壁を壊していきたいです。日本人はどうしても人が集まってコミュニティ化した時に閉鎖的になりがちで、そういう村的な構造は商慣習を作り外からの新しい人も入りにくくなり、モノづくりの障害となります。少子化が進み、ただでさえ若手が少ない中、スキルシェアが進まずさらにクリエイティブの人材が減少していくのは問題です。私たちはこれを変えていきたいと思っています。
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インタビュー・執筆:石原杏奈 @anna_ishr
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