ミルクレープ
ミルクレープ、クレープの皮とクリームが層になっているベーシックなケーキ。
いつものチーズケーキではなくミルクレープを頼んでみる。
想定内の味で、なんの感動も生まれないがこのケーキがなくならないということは私みたいな気分屋か、よっぽどのミルクレープファンがいるのかもしれないなと考えつつ食べ進めてみる。
3分の1ほど食べ進めたところで上の層をはがして口に運んだ。
先ほどまでの食感と変わり、少し固さがある。悪く言うとゴワゴワしているといったところだろうか、それにコーティングの甘いシロップかなんだかが少し飽きつつあったこのケーキにちょっとした別の表情が垣間見えた。
その後数枚はがして食べてみるが、先ほどの感動は生まれない。ゴワゴワの皮がクリームの水分を吸っているとしか思えなくなってしまった。
ふと、ミルクレープを人間関係に例えたらちょっとした文豪のような気分を味わえるのではないか、と目の前のケーキに思いを馳せてみる。
一層一層が綺麗な丸で、これはもしかしたら教育による画一化の暗喩になりえるかな、とか。
クリームは…層(人間)と層を繋ぎあわせているものだから言葉なのかな、とか。
クリームを挟んでの層はすべて一緒に見えるけど、層からしてみれば個性とかあるのかな、とか。
一歩引いた状態だと見えないものや同じに見えるものも当事者にしてみれば全然違ったりするし、と勝手に層の気持ちになってみる。
次は一番お尻の部分だけを切って口に運ぶ。ただのクレープの皮だな、少々のクリームにしては多すぎるクレープの皮にクリームでしか存在意義が確立しないのではないかと、同情が生まれた。
クレープの皮はクリームに寄生する存在なのか、と勝手に納得し、最後の一口。
飽きていたものも最後になれば特別な気持ちにさせてくれるか、と僅かな期待をしていたがそんな事はなく、先ほどまでと変わらない美味しさを届けてくれた。
口の中に残るくどさをコーヒーで流し混むと店を出る。
いつも通りの朝が私を迎える。