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【スポーツ英才教育】幼児の運動神経を高める家庭の子育て

「子どもには運動が得意になってほしい!」

「我が子をスポーツ選手に育てたい!」

こういった願望を持っている親は多いもの。それはスポーツ一家に限ったことではなく、今も昔も、子どもの社会では「運動神経の良い子は人気者」であることから、一般家庭の親も運動神経の良い子に育つことを望んでいるのでしょう。

では、運動神経の良い子に育てるにはどうすべきなのでしょうか?やはり遺伝で全てが決まってしまうのでしょうか?

実は、運動神経は幼少期の教育で大きく変わることが知られています。「なぜ自分の親は何もしてくれなかったんだ!」と思ってしまうほど、運動神経には仕組みと育成方法があったのです。

本記事では運動のできる子に育てるためにありがちな誤解と具体的な教育方法について解説していきます。

1. 運動神経の仕組みと発達時期

「運動神経が良い/悪い」と「運動能力が高い/低い」はよく一緒くたにされて誤解を生む種となっています。それでは、そもそも運動神経とは何で、どのようにして運動能力と繋がっているのでしょうか。

 1.1. 運動神経とは

運動神経とは、脳から運動の指令が筋肉まで送られるときの「信号(=情報)の通り道」のことを指し、脳から命令が出て運動につながるまでの神経のシステムのことを神経系といいます。したがって、まず大前提として「運動神経は全ての人が持っているもの」なのです。

そして運動神経を育むということは、脳に様々な動作の神経回路を作って強くすることです。これにより体の動かし方や動作、思い通り動かす技術が身につきます。

 1.2. 運動神経を鍛えるベストタイミング

ただしここで注意すべきなのが、この運動神経を鍛えることができるタイミングは決まっているということです。

下の図は「スキャモンの発育曲線」というもので、どの年代にどんな能力が発達するのかをグラフ化したものです。(参照:白石豊他「どの子ものびる運動神経」かもがわ出版)

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難しい言葉も図中にありますが、一旦無視をして太い赤線に注目してください。このグラフから読み取れる、特に重要な2点を覚えておきましょう。

1. 5〜6歳までに運動神経が急激に発達し、完成までの約80%が作られる

2. 12歳の時点で運動神経はほぼ100%完成する

つまり、運動神経の8割は5〜6歳で決まり、大人が持っている運動神経も10〜12歳の時とほとんど変わらないのです。

したがって、この時期はさまざまな動作を経験して運動神経を発達させるには非常に効率が良く、絶好のチャンスであると言えます。

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 1.3. 運動能力・スポーツの上手さの正体

運動神経の仕組みや、運動神経が急成長する時期はお分りいただけたかと思います。そして前述の通り「誰もが運動神経を持っていること」もお伝えしてきました。

とはいえ、こうは思わないでしょうか?

「同じタイミングで同じスポーツを始めても、あの人は私よりも上手い」

「あの人は何をやってもセンスがあるので、すぐに上手くなっていく」

サッカー選手の華麗なドリブル、ダンサーのキレキレの身のこなしなどを見ると、到底「人間みな平等に運動神経を与えられている」とは思えないですよね。

ではそもそも、「スポーツの上手い/下手」や、いわゆるセンスとも呼ばれる「習得の早さ」は何によって決まるのでしょうか。

結論から言うと、

スポーツの上手い人というのは「ある動作を思い通りにできる人」であり、逆にスポーツが苦手な人は「頭では分かっているけど身体を思うように動かせない人」です。思い返してみれば、スポーツが上手い人は走り方、投げ方、蹴り方、ラケットの振り方などフォームが整っていたケースが多いのではないでしょうか。

そしてこの「動作を思い通りにできるかどうか」は生まれ持った才能によって決まるのではなく、そのスポーツを行う上で必要となる動作を繰り返し練習してきたかで決まります。つまり、理想の体の動かし方について練習を積んで、脳の神経回路をたくさん作ったかどうかによって決まるのです。だからこそ、例えば野球を上手くなるためには正しいフォームでバットを振れるようになるために、繰り返し素振りをしてはコーチに指摘してもらうなどの練習が行われているのです。

ここまでですでに勘の鋭い方はお気づきかと思いますが、これが「運動神経」と「運動能力・スポーツの上手さ」の関係です。つまり、子どものころから遊びや日々の生活を通じて様々な動作を経験し、動作のバリエーションを蓄えておくことが、あらゆる運動の基礎となる「神経回路」を育むことに繋がるのです。神経回路が発達していれば、思い通りの動作を実現することができるので、あらゆるスポーツの技能を速やかに習得することができます。


2. 運動が得意になる9つの基本動作(5〜6歳まで)

では、具体的にどのような動作の運動神経を発達させておけば、運動が得意になれるのでしょうか。

結論から言うと、5〜6歳までに「基本動作」と呼ばれる多種多様な動きを経験させておくことが重要になります。子どもの動作発達研究の分野における権威、デビッド・L・ガラヒュー氏によると、 基本動作には84種の動作あると言われており、その内容としては、「立つ」「乗る」「歩く」など日常生活に必要な動きもあれば、「投げる」「走る」「跳ぶ」「蹴る」など、運動に関係する動きも含まれています。

それら84種の中でも特に運動と関連が強いものをピックアップすると、以下の9つに集約されます。

・走る・切り替かえる
・蹴る
・跳ぶ・着地する
・捕球する
・打つ
・投げる
・ボールをつく
・回る・ひねる
・バランスをとる

この「基本動作」を幼児期にきちんと身に付けていれば、あらゆるスポーツをに関する理想の動きの土台ができあがるため、将来取り組むスポーツの選択肢が増えます。

一方で、幼い時期からひとつの競技だけに特化して、そればかりやらせるのは望ましくありません。ひとつの競技ばかりさせることは、体へのリスクも覚悟しなければならないのです。

もちろん、体操競技などのように早い段階から専門的な指導を受けなければ世界に通用しない競技もありますが、多くの競技はそうではありません。例えば、小さい頃から「投げる」という同じ動作ばかり繰り返していたら、ひじや肩に負担がかかり、早いうちからケガやスポーツ障害を起こす可能性が出てきます。また、ゴルフや野球など左右非対称のスポーツの場合は、筋肉がアンバランスについてしまうリスクなども出てきてしまうのです。

幼いうちから特定のスポーツの習い事をさせておけば、安心してしまうのはよくあることです。ただし、将来あらゆるスポーツにも対応できる運動能力を高めるためには、ひとつの競技に特化した動きではなく、幼児期に「基本動作」を身に付けることが近道だということを念頭に置きましょう。

3. 6歳頃までにママでもできる、運動神経を良くする日頃の工夫

幼児期は普段の遊びや生活を通じて多種多様な動きを経験させることが重要なのですが、具体的には普段の生活のどのようなことで運動神経を育てていけば良いのでしょうか。

ここでは、運動をしないママでもできる5つの例をご紹介します。

■ハイハイ・裸足での歩行
腕や足腰が鍛えられる。反射神経、脳の刺激や知育の発達にもなる。

■ボール遊び、お馬さん遊び、相撲遊び
多種多様な動作・難しい動作を経験できる。バランス感覚が身につく。

■逆立ち・でんぐり返し
三半規管の機能を高める。平衡感覚を養う。

■公園の遊具遊び
「渡り歩き」「登り下り」「くぐる」「飛び下りる」「ぶら下がる」など、経験できる基本動作が豊富

■家事の手伝い
手先の器用さ、バランス感覚、道具を扱う能力などが身につく。

 3.1. 赤ちゃんのうちのハイハイ・裸足での歩行

赤ちゃんのハイハイは全身運動ですのでとても重要です。腕や足腰が鍛えられる上に、反射神経、脳の刺激や知育の発達も促すことが分かっています。

また、赤ちゃんが歩き始めたら裸足で歩かせることも大事です。室内だけでなく、公園の芝生、砂場などで足裏に刺激を与えて感覚を鍛え、土踏まずのある足にすることが大切です。

 3.2. ボール遊び、お馬さん遊び、相撲遊び

「投げる」という動作は比較的難しい動作のひとつであるため、幼い頃からボールには触れさせておくのがおすすめです。球技はもちろん、道具を扱うスポーツ全般にも役立ちます。

また、四つん這いになった親の上にお子さんを乗せる「お馬さん遊び」は、バランス感覚を養い、姿勢を良くする効果があります。

そして、最もおすすめなのは、「相撲遊び」です。相撲には押す、引く、投げる、握る、そして力の出し入れ(出力、脱力)など、一つの遊びで多種多様な動作を学ぶことができます。親子のスキンシップにもなるため、一緒に楽しむ機会としても良い遊びのひとつです。

 3.3. 逆立ち・でんぐり返し

逆立ちやでんぐり返しなど、頭を逆さにする動作も幼いうちに経験しておくと良いでしょう。三半規管の機能を高めること、平衡感覚を養うことにも役立ちます。

 3.4. 公園の遊具遊び

実は、公園の遊具はとてもよく考えて作られており、様々な動作を習得することができます。その中でもおすすめなのはジャングルジムです。ジャングルジムは、「渡り歩き」「登り下り」「くぐる」「飛び下りる」「ぶら下がる」など、経験できる基本動作が豊富である点が魅力的です。

 3.5. 家事の手伝い

遊びだけでなく、家事も運動神経の発達にはおすすめです。履き掃除、ぞうきんがけ、皿洗いといった作業には基本動作が多く含まれており、これらを繰り返すことにより、手先の器用さ、バランス感覚、道具を扱う能力など、様々な動作の神経回路を発達させることができます。さらに、集中力がつく、生きる上で必要な知識が身につくなどのメリットもあります。

4. スポーツでトップレベルを目指すには10〜12歳の環境づくりが鍵

10~12歳の時期は、初めてチャレンジする動作でも手本を見ただけでできてしまうことが比較的多くあります。そのためこの時期は「ゴールデンエイジ」と呼ばれており、世界的な常識として「ゴールデンエイジに特定のスポーツを経験しなければ、そのスポーツでトップレベルに到達できない」と言われています。

背景として、「動作の習得」の早さは年齢によって下記のグラフのように変化することが研究により分かっているためです。(参照:宮下充正「子どものスポーツ医学」南江堂)

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またこの時期に習得した動作(技術)は大人になっても落ちないという特徴があります。例えばサッカーのリフティングなども、この時期にできるようになっておけば大人になってもできるままであるケースが多くなっています。

10~12歳のゴールデンエイジになると、特定のスポーツの特性を理解し、意識的に取り組むようになります。またこの時期に、憧れの選手やライバルが現れるようになります。逆に、ゴールデンエイジまでに夢中になれるスポーツが見つからない場合は、残念ながらスポーツでトップレベルを目指すことは難しいと言えるでしょう。

一方で、ゴールデンエイジ期から特定のスポーツのみに専念すべきということでもありません。ひとつのスポーツに本格的に取り組みながら、他のスポーツも体験する機会があれば利用するのがベストです。

例えば、サッカーに本格的に取り組んでいる男の子の場合、その姉がバレーボールをしているのであれば一緒にバレーボールを楽しむのも良いでしょう。またあまり頻繁だとサッカーの練習に支障をきたしてしまいますが、たまにはサッカーチームの練習を休んで家族でアスレチックやスキーに出かけるのも、大切な運動経験です。

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スポーツの世界でトップレベルを目指す場合も、そこまでではなくとも運動のできる子に育てたいという場合も、幼少期の工夫が子どもの将来に大きな影響を与えることがお分りいただけたと思います。

そもそも、親子で一緒に体を動かすことや家事を手伝うことはそれ自体が楽しさや生きる力を育む観点でも重要です。子どもとの時間の過ごし方を改善する助けに少しでもなっていれば、嬉しいです。

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