新田団長が最後の指揮 65周年・石巻市民合唱団 OB、OGも感謝の記念演奏
石巻市民合唱団(新田昭夫団長)の65周年記念演奏会が28日、マルホンまきあーとテラスで開かれた。設立初期から指揮者を担ってきた新田団長(89)にとって最後の指揮。現役メンバーやOB、OGら総勢35人が心一つに大合唱し、伸びやかな歌声をホールに響かせ、満員の客席から大喝采を受けた。新田団長は目を潤ませて「こんなにたくさんの方々に聴いていただき感激。今後は歌う側になってステージに立つ」と語り、指揮台を降りた。
合唱団は、市民有志が集って昭和32年に活動を始め、翌年2月に団として発足。34年3月には初めての発表会を開いた。市内唯一の混声合唱団として石巻中央公民館を拠点に活動。定期演奏会や市内外のイベントなどで歌声を披露してきた。ピーク時は約80人が所属していたが、震災後は団員減少が著しく、現在は25人で活動する。
発足年からのメンバーである新田団長は石巻高、東北大学教育学部音楽専攻卒。在学中に声楽、ピアノ、指揮法、管弦楽法、作曲法などを学んだ。教師として女川一中や市女高、石巻高、山下中などに勤務し、仕事の傍ら合唱団活動にも尽力。石巻の音楽界の第一人者として、文化発展と振興に寄与してきた。
長らく常任指揮者を務め、60年以上も団をリードしてきたが、今回の演奏会をもって指揮者の席を後任の後藤一恵さん(62)に譲り、新田団長は歌い手に専念することを決めた。
新田団長が最後に指揮したのは、混声合唱のための組曲「空・道・河」。OB、OG有志とコーラス団体の石巻メンネルコールが加わり、ピアノは星由貴さん(52)が務めた。石巻の澄んだ空ときらめく陽光、穏やかな北上川の流れを想起させるような歌詞が印象的で、透き通った女声と深い男声の合唱がホールに響いた。メンバーは新田団長への感謝と労いを込めていた。
鳴りやまない拍手の中、花束を受け取った新田団長は「OB、OGや観客の皆がこうしてたくさん集まってくれたのは大変うれしいこと。指揮は後藤さんにお願いするが、私は今後も歌う方で生きていく。合唱団の皆には100周年を目指して頑張ってほしい」と思いを語っていた。
後任指揮者の後藤さんは「歴史ある団であり、私が指揮するのは恐れ多いが、光栄でもある。若者が団に入りやすい環境を整え、存続に尽力したい」と話していた。【山口紘史】