日本製紙石巻 16強で散る 都市対抗野球 10投手継投の総力戦
「また帰ってくる」と誓い
第95回都市対抗野球大会は25日、東京ドームで二回戦3試合が行われ、東北第2代表の日本製紙石巻は、10年連続出場で近畿第5代表のNTT西日本(大阪市)と対戦。10投手をつぎ込む総力戦に打って出たが、打線は散発4安打と本塁が遠く、0―9で完封負け。第84回大会(平成25年)以来11年ぶりの8強進出はならなかったが、スタンドに詰めかけた石巻市民や日本製紙関係者で作る大応援団は果敢に挑んだ選手たちに大きな拍手を送り、ねぎらった。
相手打者に合わせた細やかな継投策で的を絞らせず、二次予選と本戦一回戦を勝ち抜いてきた日本製紙は、この日も小刻みに継投。先発右腕小寺智也(24)が初回、制球の乱れで2失点すると、二回途中からベテラン左腕の塚本峻大(32)が登板。その後も中継ぎエースの川合勇気(23)や高卒新人の鈴木楓汰(19)らがつないだ。二回以降六回までは無失点でしのぎ、反撃を待った。
だが打線は、NTT西日本のベテラン右腕濵﨑浩大(34)の前に沈黙。四回には先頭の宮川将平(24)が安打で出塁し、好機を作ったが得点に至らず、他の安打も散発で、打線がつながらなかった。
日本製紙は七回以降も次々投手を送るも七回に2失点、八回に5失点し、あと1点でコールド負けの状況に追い込まれた。日本製紙はラストバッターで代打の中嶋政弥主将(33)がフルカウントまで粘ったが、内野ゴロに倒れた。
伊藤大造監督(57)は「この展開も想定していたので序盤から細かく継投した。相手のペースを崩す好機はあったが、私の勘も悪く、できなかったのは悔しい。良い点も課題もたくさん見つかったが、それを生かすも殺すも選手次第」と話した。
中嶋主将は「ドームで多くの選手が経験を積め、自分たちの実力も把握できた。次は日本選手権の予選もある。積み重ねてきたことに間違いはないと思うので、胸を張って頑張りたい」と語った。
球場に駆け付けた大応援団には「電光掲示板に『石巻市』の名を映し、アピールできたのが誇り。ここに帰ってきて、石巻の皆さんに熱い思いをつなぎたい」と話した。【山口紘史】
「共に東北盛り上げよう」
JR東日本東北の応援団 日本製紙に思い寄せる
日本製紙石巻とNTT西日本戦があった25日午後は、同じ宮城県チームのJR東日本東北(仙台市)対日本製鉄かずさマジック(千葉県君津市)戦もあり、JRが勝利を収め、8強に進んだ。この試合後、JR応援団(池田祐太郎団長)と入れ替わるように、日本製紙応援団(露木雄太団長)もスタンド入り。両団長が「同じ宮城県チームとして東北を盛り上げていこう」と握手を交わす一幕があった。
池田団長(34)はJRの試合後、「この後は同じ東北代表の日本製紙石巻が戦います。(残れる人は残り)ぜひ熱い声援を送ってください」などとスタンドの観客に呼びかけ、同志であることを強調。露木団長(29)は「非常にうれしいし、励みになる。野球を通した地域活性化の思いは敵も味方も関係ない」と話し、絆を育んだ。
声枯らして応援 ホヤドル萌江さん
ダイヤモンドサポーターとして選手と共にベンチで声を枯らしたのは、いしのまき観光大使で〝ホヤドル〟の萌江さん。持ち前の笑顔と明るさで最後までチームの雰囲気を盛り上げた。
初戦から、日本製紙石巻の選手たちは好プレー後に両手を頭上に乗せるパフォーマンスをしていたが、これは萌江さんの「ほやっほー」ポーズを真似たもの。チームの一体感を生むのに一役買った。
そんな萌江さんは二回戦でも最後の最後まで「頑張れ」「諦めるな」などと叫び、ベンチの誰よりも声を枯らした。
試合後、萌江さんは「石巻の代表として戦う選手の姿に私も勇気をもらった。ほやっほーポーズを浸透させてくれたことも感謝。貴重な経験だった」と声を詰まらせながら話していた。【山口紘史】