知恵絞って読書推進 タネまく石巻地方の図書館 おとまり会で空想刺激
本を手に取り開くより、つい目の前のスマートフォンを手にしてしまう。読書離れは進み、その傾向はとりわけ若い世代に顕著に見られる。ただ、図書館や学校図書室、書店など本に触れる環境は案外身近にあるもの。こども読書週間(4月23日―5月12日)に合わせ、大人も一緒にお気に入りのタイトルを探してみては。(3回続き)
どんなジャンルで何を読もうかと迷ったら、まずは図書館がおすすめ。本にもっと親しめるように図書館司書や職員が知恵を絞り、特設コーナーやイベントなどで〝読書のタネ〟をまいている。
各図書館に共通しているのは、季節や行事などテーマに沿った関連書籍を展開する特設コーナー。いずれも入口付近に設け、入館者の視界に必ず入るよう仕掛けられている。
東松島市図書館(冨士原郁子館長)でも同様で、2月にはNHK大河ドラマ「どうする家康」にちなみ「どんな人なの家康」と題し、家康の伝記から家臣についての本、江戸の風俗などの書籍を特集して関心を集めた。
現在は、子どもの日に合わせてコーナーを置く。今年のこども読書週間の標語「ひらいてとじた 笑顔がふえた」に掛け、読むとついクスっと笑ってしまう本も並ぶ。
谷川俊太郎の童話集「ワッハワッハハイの冒険」、矢玉四郎作・絵の「はれときどきアハハ」など標語を正面から捉え、笑いに特化した絵本などが目に付く。冨士原館長は「棚に眠ったままになっている本でも、顔(表紙)を見せて置くと、自然と手に取ってくれる」と語っていた。
イベントでも本を手にしてもらう創意工夫がにじみ出ており、女川町生涯学習センター図書室(通称・女川つながる図書館)は、企画力が光る。
令和3年7月に開いた「ぬいぐるみおとまり会」は、同名の絵本から着想を得た。子どもたちが大切にするぬいぐるみを同館で預かり、タイトル通りお泊まりさせる。その間の世話は職員が担い、模造紙で作った弁当を食べさせたり、ぬいぐるみ同士で読み聞かせをする様子などを写真に収めた。
参加したのは2歳児から小学6年生までの9人。生まれて初めてぬいぐるみと離れる子や不安に駆られ「泣いたりしてない?」と直接、様子を見に来る子もいたという。
1泊2日のおとまり会を終え、写真やぬいぐるみの弁当を手渡したほか、読み聞かせなどで使った絵本も添えて貸し出した。同館職員の三浦則子さんは「イベントは子どもたちが直接本を手にするきっかけ作り。この図書館の規模だからこそできることを考えて企画していきたい」と思いを込めた。
読書は本を手に取るところから始まる。すぐに成果は出なくても本で得た知識や感情は経験となり、どこかで花開く。読書になじむ環境づくりを展開しているのは公立図書館だけではない。民間では図書館の蔵書とは違ったラインナップで読書のタネをまいている。【泉野帆薫】