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復興バス旅 石巻発未来行き㊦

三陸道から新市街地を俯瞰

 東日本大震災の復興財源を使った基盤整備の終了を節目とし、石巻市が9日に開いた復興事業完結記念イベントでは、市中心部に新しくできた市街地や道路を車窓から眺める無料の「復興めぐりバス」が運行された。2コースあったこのバスに記者も乗車。昨日のAコース渡波方面に続き、Bコースの蛇田方面で見えた風景を伝える。【熊谷利勝】

 軽いバス酔いも、懲りずに最後部座席に座る。A、Bコースとも停車場所は同じ。開成地区のマルホンまきあーとテラスから石巻南浜津波復興祈念公園・震災遺構門脇小学校までの道のりが異なった。

 まきあーとを出たバスは西に向かい、圏域の医療拠点である石巻赤十字病院の脇を通って三陸道石巻女川インターへ。国は復興道路として三陸道の整備を加速化させ、同インターも鳴瀬奥松島インターまでの4車線化と合わせて平成27年10月に開通している。

三陸道を走るバスの車窓から見えたあけぼの北の新市街地

 三陸道の上り線を走るバス。進行方向左側の眼下にあけぼの北、少し先の左右にあゆみ野、のぞみ野地区の新市街地が見えてきた。いずれも住まいを被災した人の移転先であり、特にのぞみ野は新市街地最大の計画戸数1265戸、計画人口約3300人で、車内の案内放送は「復興モデル地区」と紹介した。

 石巻港インターで一般道に戻り、県道を南下。定川沿いの上釜ふれあい広場前の交差点を左折して3月末に全線開通した釜大街道線に入る。この道ができたことで市街地間の行き来しやすさが格段に向上。交通量の分散により、北側の国道398号の朝夕の混雑もだいぶ緩和された。

 バスは石巻工業港曽波神線を経由し、南側の門脇流留線を走行する。魚町と同様の堤防機能を持たせた高盛り土道路。被災の大きかった石巻港側は非可住区域となっている。「産業用地としての利活用を図っている」と車内放送があったが、まだまだ更地が目立つ。

 東へ進んだバスは南浜祈念公園へ。これでA、B両方のコースの制覇となった。東西を1周してみると、新しい道路と既存の道を組み合わせて、市中心部を囲むような環状の道路網を形作っていることが分かる。

1兆円超す事業

 震災後、市は安全・安心なまちを目指した復興基本計画に沿って、4456戸の災害公営住宅整備や6カ所1360区画の新市街地と5地区1162区画の既成市街地整備、半島沿岸部46地区65の防災集団移転事業を実施。このほか農業・漁業施設の復旧や産業団地、雨水排水施設、伝承施設の整備を進め、昨年度までにかかった復旧・復興事業総額は約1兆2309億円。これは震災前の一般会計の20年分に当たる。

 これだけの費用の事業を動かすのは相応の職員が必要になり、118の自治体から延べ1772人の応援を受けた。市はこうした全国からの支援に感謝を示そうと、復興事業完結記念イベントを開催。あくまで復興財源を活用したハード(基盤)整備の完結宣言であり、心のケアなどソフト面の事業は今後も続いていく。一人一人が復興を実感できるよう、新しい道や施設を未来のまちづくりの財産として、しっかりと活用してこそ支援への恩返しになるだろう。


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