紙と電子書籍使い分け こども読書週間 心に残る一冊に出合う
紙の本か、それとも電子書籍か。読書の仕方も好み次第。本は収納場所を要すが、電子書籍にはその必要がない。紙で読めば充電は不要だが、スマートフォンなど電子メディアは充電が生命線。こういった互いの強み、弱みを鑑みて使い分けてみるのも楽しい。
石巻地方の図書館では今のところ、いずれも電子書籍導入の見通しは立っていない。コスト面での負担に加え、導入後の利用者層の獲得など運営面での懸念も拭えない。
東松島市図書館の冨士原郁子館長は「本の返却に来た利用者がカウンター越しに感想を教えてくれるのも楽しみの一つ」と話す。同館司書の井上裕香さんは「紙の本は友人とおすすめを貸し借りできる」と魅力を語る。
コロナ禍で休止しているが、同館は毎年秋に「青空リサイクルブックフェア」を開いている。保存基準を超えるなどした除籍図書や利用者が寄贈した書籍をジャンル問わず屋外に並べ、点数無制限で持ち帰ることができるイベントであり、待機列ができる盛況ぶり。
寄贈者の中には、善意で1度しか読んでいない刊行間もない新刊を「誰かが読んでくれるなら」と提供する人もいたという。冨士原館長は「来館者が普段読まないジャンルと出合うきっかけ作りにもなっていた」と振り返った。
本は人と人とをつなぐ架け橋になり、会話のきっかけを与える役割も果たす。コロナ禍で希薄となったコミュニケーションを本の力で回復させることもできそうだ。
一方、電子書籍は端末さえ所有していれば誰でも気軽に読書ができる上、入荷待ちなど物流格差の影響を受けず即座に本を入手できる。文字の拡大、読み上げ機能などを活用することで読書そのものの敷居を下げる効果もある。
読書の楽しみ方は人それぞれだが、石巻市図書館(戸田ゆかり館長)の月浦直貴主任主事は「本の中は文字しかないため、想像力が養われる」、同館司書の津田英里奈さんは「言葉にできない感情を知ることができる」と話していた。紙、電子書籍どちらからでもこれらを享受できることには変わりない。後は読もう、もしくは読んであげたいという意欲であり、ここを超せば自然に活字と向き合えるはず。
図書館や学校の図書室、民間の書店も「読書のタネ」をまいており、本に親しむ土壌は石巻地方にも広く浸透している。こども読書週間(4月23日―5月12日)だが、大人が手本を示してもいい。心に残る一冊に出合えるかもしれない。【泉野帆薫】