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石巻市議会も「賛成」判断 地元商工会の 陳情採択 女川原発の再稼働容認
石巻市議会は24日の定例会本会議で、東北電力女川原子力発電所2号機の再稼働を望む地元商工会からの陳情を賛成多数で採択した。市議会として再稼働を正式に容認したことになり、市民グループからあった反対の請願は不採択とした。再稼働には原発立地自治体の県、石巻市、女川町の「地元同意」が必要で、亀山紘市長は市民の代表である議会の判断を尊重する考え。すでに女川町議会が賛成の意思表示をしており、再稼働へ向けた自治体の手続きがさらに前進した。【熊谷利勝】
女川原発2号機を巡っては、安全性を不安視する15の市民グループが5月、立地自治体として再稼働に同意しないよう求める請願を提出し、経済的な影響を受ける牡鹿稲井商工会は早期の再稼働を陳情した。6月定例会で賛否双方の請願、陳情のどちらを採択するかの審査を付託された市議会総務企画委員会は、総合防災対策特別委員会と合同で2号機を視察したほか、国や県の説明を受けてきた。
早期再稼働を望む陳情を起立多数で採択した
24日の本会議では奥山浩幸総務企画委員長が賛成の陳情を採択することとした委員会審査の結果を報告。その後、請願、陳情の順に審議にかけられ、国のエネルギー政策として再稼働が進められる原発の安全性や重大事故を想定した住民避難計画の実効性、地元への経済波及効果などの観点で議員が討論した。
再稼働を容認する議員は「原発立地以来、500億円が交付され、福祉向上に寄与してきた。原発で働く2千人が市内に住居を構えている。これまで共生してきたので、今後も互いに発展し続けなければならない」と主張。別の議員は「新規制基準に適合し、原子力規制委員会で安全性が確認されたことであり、早期再稼働を希望する」と賛同を求めた。
反対側では「古里を破滅に追い込むような大事故の可能性があり、市民の安全性が担保されていない原発はやめるべき」「避難計画は2段階、27の自治体に及ぶ受け入れ先など、どれも実証されていない。国を信じて進むしかないという思考停止の議論は問題。地方自治体の自立性が発揮されなければならないとした法に反する」と指摘した。
採決は1人が退席し、議長と出席停止の1人を除く全27議員の起立で行われ、再稼働を望む陳情を賛成23、反対4で採択。再稼働を認めない請願は賛成4、反対23で不採択とした。
表明時期は明言避ける 亀山市長「同意の方向」
議会尊重し知事らと会談
報道の取材に答える亀山市長
石巻市議会が女川原発2号再稼働を望む陳情を採択した24日の定例会閉会後、亀山紘市長は報道陣の取材に答えた。市としての地元同意について、「採決されたのでその方向は決まった」と述べた。
取材に対して亀山市長は「将来的には再生エネルギーに移行していくべきと思うが、現状では原発再稼働はやむを得ない」として議会の判断を尊重。「住民、議会の中でもさまざまな意見がある。避難道路や避難計画の不安は理解しており、実効性ある計画になるよう求めていく」と述べた。市長として地元同意を表明する時期に関しては「重い決断。自分なりの考えを整理したい」として明言を避けた。
2号機再稼働を巡っては東北電力が平成25年12月、立地自治体と結んでいる安全協定に基づき、県、市、女川町に事前協議を申し入れ。これまでに立地自治体による安全性検討会や原子力規制委員会による新規制基準の適合審査が進められ、亀山市長は地元同意について、市民の代表である議会の意見を聞き、総合的に判断する考え方を示していた。
定例会開会中の県議会には女川町の商工観光団体から再稼働を求める請願が提出されており、来月下旬の県議会での決定後、知事と石巻市長、女川町長が会談し、最終判断するとみられている。
避難路の整備要望へ 県、市に対し大森議長
石巻市議会は女川原発2号機を巡る採決の結果を受け、村井嘉浩県知事と亀山紘石巻市長宛てに早期の再稼働を求める意見書も可決した。避難計画の実効性に対する住民の不安が大きいことから、国などに対して避難道路の整備などを要望する意見書も可決した。
採決の結果について大森秀一議長は「総務企画委と総合防災対策特別委の連合審査会で議論を尽くし、市議会全体で決めたこと」と評価。「現状で再生エネルギーは十分ではなく、当面は原発に頼らざるを得ない」との私見を述べた。
また、実効性の有無が指摘される避難計画については「実際にやってみないと分からない計画であり、完璧を求めていく」と大森議長。来月初旬には、牡鹿半島からの避難道路となる県道2号石巻鮎川線の強化などを知事に直接要望する考えを示した。
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