アルモンデごはん 会いたい人に会いに行く
父の誕生日から始まった1週間。誕生日前後で帰省して、父の好きな鰻を食べにいくのが恒例でしたが、今年は会うことも連絡することもできません。
年齢に関わらず、誰でも明日命がなくなる可能性を持っている。当たり前のことだからこそ、会いたい人にはどんどん会いに行かなくちゃ。来日中の恩師は父と同じ88歳。びっくりするほどお元気だけど、これが最後の来日になるかもしれない。そう思うといてもたってもいられず、彼を追いかけて旅をすることに。行く先々で気心しれた友人に会えるのも幸せなことです。
<11月4日>
父の88回目の誕生日。米寿、おめでとう。入院中の父に会いにいくことは叶いませんでしたが、父の好きな鮭を食べながら父のことを思い出していました。母もひとり、赤飯を炊いてお祝いしたそうです。私たちの感謝の気持ちが父に伝わっていますように。私にとってこの日は一生特別な日です。
茹でた塩鮭に添えたのは、さっと茹でたキャベツ。ほぐした茹で鮭とキャベツの相性は父と母くらいよいのです。
<11月5日>
週末のケータリングで余った蒸し里芋。毎日少しずつ食べています。この夜は、ねぎの青いとこと味噌汁にしました。青いとこをしっかり炒めて、コトコト煮込んで最後に里芋と味噌を加えて出来上がり。出汁なしですが、青いとこがいい仕事してくれてます。里芋が溶けてとろりとしたお汁が好き。大好きな里芋の季節がやってきました。今年もたくさん食べます。嬉しいな。
<11月6日>
仕事の後、友人の働く麻布台ヒルズへ。幾つになっても美しく洗練されていて、頭脳明晰な友人は私の自慢です。夕飯前にソールライター展に立ち寄り、ショップに展示されたソフィアコッポラの写真集をみて、懐かしいねとはしゃぎあえる関係が愛おしい。北関東で学生時代を過ごした私たち。東京は近くて遠い場所でした。その時代最先端の音楽や芸術触れようと、必死で雑誌やメディアを追いかけていたあの頃が思い出されます。
夕飯に選んだタイ料理が全部辛いと涙目の私に、「辛いものそんなにだめだった?」と驚かれたり、彼女にチャーハンを取り分けようとしたら「私は炒めたご飯が嫌いだからいらないよ」と断られて驚いたり。何年友人をしていても、知らないことばかりだな。あと四半世紀友人でいても、飽きずに楽しめそう。ありがたい存在です。
<11月7日>
先日なんの味付けもせずただコトコトと煮込んでおいた、スペアリブ。スープごと冷蔵してあったそれと、蒸し里芋をスープにしました。脂身の多いお肉は、 柔らかく煮込まれたら一晩冷やし、固まった脂身を取り除きます。脂身が多いお肉を料理するときに私が必ずすることです。大きなお肉が入っていますが、この一皿の主役は里芋。澄んだ豚のスープをたっぷり吸い込んだ里芋は、ため息が出るほど上品なお味。冬の白い野菜ってしみじみ美味しいな。里芋、大根、白菜と白=冬が旬。大好物がたくさんある冬が大好きです。
<11月8日>
先週のケータリングで余った、いろんなカブの葉たち。葉っぱごと料理すると決めているとき以外は、葉付きの野菜が届いたらすぐに葉と実を切り分けます。野菜は畑から離れても生きているから、葉っぱがある限り栄養を送り続けてしまう。本当に健気なんですよね。葉と実を早めに切りわけておくことで、どちらのおいしさも堪能できます。茹でてあったカブの葉と納豆を和えただけのこんな一皿が、たまらなく美味しい。葉っぱって上へ上へと伸びていくエネルギーがすごいから、食べるとすごく前向きになる気がしています。未来へ手を伸ばすイメージ。たっぷり食べて力が湧いてきました。
<11月9日>
来日中の恩師サティシュクマール氏を追いかけて下関へ。羽田で、下関で、会場でサティシュを介して繋がった仲間と合流しました。4時間たっぷり彼の愛を浴び、満たされた夜。ホテル近くの郷土料理居酒屋で、瀬戸内の新鮮な魚や下関ならではのふく料理を堪能しました。地酒もね。父が入院した日から、いつ呼び出されても駆けつけられるようにお酒を一滴も飲んでいませんでした。あれから2ヶ月。こうして大好きな仲間たちと乾杯できたのも、新たな病院がとても良くしてくれて父の体調が安定しているから。お父さんありがとう。そしてゆっくり小のみんなありがとう。同窓会のきっかけをくれたサティシュもありがとう!幸せな幸せな夜でした。
<11月10日>
仲間たちと下関から広島へ移動。サティシュの広島講演を少しお手伝いし、そしてまた彼の言葉をたっぷり味わってきました。講演後、みんなと別れて今度は広島の友人と合流。築地御厨という卸の八百屋で行われていた月一イベント「やさい塾」のスタッフとして何年も一緒に料理をしてきた友人です。食いしん坊仲間。そんな彼女が予約してくれたお店で、彼女の友人が釣った鰹をいただきました。食べる直前に焼いた炭であぶってくれるなんて、贅沢すぎる!1年ぶりの再会に話は尽きることなく、閉店まで飲み、彼女の家に移動した後も夜中まで話し続けたのでした。どこに行っても会いたい人がいるって幸せだな。