ビーガン料理の出汁問題@ミートフリー1DAY
「ビーガン料理って、鰹出汁とか煮干し出汁とか使えないんですよね?」
「じゃあ、出汁は何からとるんですか?やっぱり昆布とか椎茸ですか?」
初めてビーガン料理を召し上がる方や、ビーガン料理教室に参加される方から、高確率で受ける質問のひとつ。
ビーガン料理に初めて出会った頃の私も、全く同じような疑問を持っていたので、とってもよくわかります。
ビーガン料理において出汁問題は大切なので、この質問には丁寧に答えたい。
だけどついつい、意地悪な質問をしてしまうんですよね。
「スープや煮物に、出汁って必ず必要ですか?」
ん?
え?
ってキョトンとした顔で振り向かれるのが常です。
和食なら鰹出汁や昆布出汁、洋食ならコンソメやブイヨン。
普段食べている汁物や煮込みには、必ずと言っていいほど出汁がつかわれています。
ご自宅で味噌汁を作るときだって、顆粒やパックの出汁を使いますよね?
汁の味は使った出汁の味で決まる、ってイメージがついてしまうのも仕方のないことです。
美味しいですしね、出汁。私も大好き。
ではビーガン料理では、出汁をどう考えているのか?
乱暴に言ってしまえば…。
なければなくていいんじゃない?
だって素材からでるもん、って感じです。
出汁(昆布や椎茸など)の味をメインに味わいたいときだけ、出汁をとればいい!素材に出汁を染み込ませるという考えは、ひとまずなし!
これはビーガン料理に限ったことではなく、他の様々な国やジャンルの料理にも同様の考え方はあります。
今回は、先日の料理教室でつくった一品をつかって、出汁なしの煮物の作り方を説明しますね。
コツは太字の部分です。
まず、材料に油揚げを使っていますね?
葉もの野菜だけの煮物だと、どうしても味はあっさりしがち。
そんな時に頼りになるのが、大豆加工食品です。
油揚げや厚揚げやがんもどきは、もう出汁と言ってもいいのかもしれません。
一度油で揚げてあるので、豆と油の旨味が加わって、コクがぐーんと増しますし、食べ応えもアップします。
(もちろんあっさり食べたい時はなしでもOK)
料理する前にぜひ気を配ってほしいのが、お鍋の大きさ。
大きすぎると油揚げをヒタヒタにするのにたくさんの水分(みりん)必要になってしまって、仕上がりがシャバシャバで味がぼんやりしちゃうか、煮詰める時間が長くなって味が濃くなってしまうかになりがち。
適度なお鍋がない場合は、作る量を減らすか増やすか!です。
そしてみりんの登場。
今回この煮物のキーマンは、みりんと油揚げです。
みりん=甘みだけだと思われがちですが、米が原料のみりんには旨味ががっぷり入っています。
私、みりんは甘い出汁って考えているのかもしれません。
ヒタヒタ入れてくださいねーってお伝えすると、「ええ?多い!」って驚かれますが、ぜひ一度試してほしいです。
みりんを入れたら強火。
これはアルコールを飛ばすためです。
最初はグラグラに沸かして、10〜20秒くらい経ったら湯気の香りを嗅いでみてください。
ここできちんとアルコールを飛ばしておかないと、出来上がりまで酒臭さが残ってしまうので、できれば端折らないでほしいところ。
アルコールの香りがしなくなったらOKです。
中火にして煮るモードに入ります。
みりんが油揚げに染みて、お鍋の中の水分が減ってきたらちんげん菜を加えますが、その時油揚げの上に乗せるのには2つ理由があります。
ひとつはちんげん菜にはあまり火を通したくないということ。
この次期のちんげん菜は水分も多くて柔らかいので、さっと火を入れてシャキシャキ感も楽しみたいんです。
鍋底についてしまうと、あっという間にくったりしてしまうので、油揚げのクッションの上に置きます。
ふたつめは、ちんげん菜の水分を油揚げに渡すため。
加熱することで、ちんげん菜から出る水分(旨味)を油揚げに吸ってもらいたいんです。
鍋底に直接ちんげん菜が触れてしまうと、焦げたり高温ですぐに水分が蒸発してしまうので、油揚げの上でさっと火を通します。
仕上げの醤油は少しずつ。
ちんげん菜を入れた時点での味付けはみりんだけ、ですよね?
甘みはしっかり入っているので、ここに塩味を加えます。
この先甘み足したくはないので(また水分が増えてしまうから)、醤油は少しずつ。
油揚げを少しちぎって味見をするのがおすすめです。
おうちごはんだから、ちょっとくらいちぎれた油揚げがあってもいい!
出来上がりが美味しければ、気にならない!
こうして出来上がった煮物は、シャキシャキ感が残る塩味メインのちんげん菜と、甘味と旨味が染み出す油揚げという組み合わせを楽しめる一品。
最高。
全部が同じ味にならない、というのもいいところです。
具材を入れるタイミングをずらしたことで、具材ごとに味の染み込み具合が違って、一皿でいろんな食感や味が楽しめます。
ちんげん菜だけ、油揚げだけ、合わせて食べて…というように。
出汁は入れないんですか?
ほんの少し前の質問のことなんて、すっかり忘れさせちゃう味です。
出汁なしのビーガン煮物、試してみませんか?
ちなみに。
椎茸だしで油揚げもちんげん菜もクタクタに柔らかく煮る、という料理だって最高です。
要は、どんなふうに食べたいか、なんですよね。
だから失敗なんてない。
イメージと違っても、それはそういう料理が作りたかった、食べたかったと思い込んで仕舞えばいい。
私はそう思っています。