見出し画像

食べるの始末 Sさんの台所

ジムにはその人に合わせたトレーニングメニューや食事管理をしてくれる、パーソナルトレーナーがいますよね。実は私もパーソナルトレーナーをしています。ただ、場所はジムではなく台所。「食べるの始末」という名のパーソナル料理教室で、それぞれのお人柄や暮らしに馴染むごはん作りや、野菜をはじめとした食材や調味料の特徴や使い方をお伝えしています。
一緒に料理をしながら、とにかくたくさん会話します。困っていること、本当はこうありたいこと。何気ない会話から掬い出して、できる限り解決したいし叶えたい。100%できているかはわかりませんが、変わっていく生徒さんの姿から、私自身が誰よりも学んでいます。

【Sさんの場合】

Sさんとの出会いは、この夏開催した「アルモンデキッチンLIVE」。旬の野菜とその場にある食材や調味料を組み合わせて、その場で即興料理をするイベントでした。私が遊ぶように料理をしている姿を見て「レシピありきの固定概念から解放されて、料理はもっと自由でいいのかも」と感じてくださったのだそう。イベントの終わりに声をかけてくださって、そこで今ご自身が毎日の食事作りに悩んでいると打ち明けてくれました。

出会いの日

その後、体験レッスンにお申し込みいただき、改めてゆっくりお話を聞かせてもらいました。
Sさんの目下の悩みは下記の通り。
・何か一つが乱れると、生活リズムが崩れてしまう
・日々の暮らしが乱れていると外で美味しいものを食べても満たされず、間食や糖分過多で自己嫌悪のループ。

しっかりとご自身を内観した的確な説明。すごい。そしてその後の目標もまた、はっきりとしていました。
・自炊を軸に日々の暮らしを整え、心身共に健やかに過ごす。
・外ではなく、内の充足を図る。
ここまでご自身のイメージがはっきりしているなら、そうなるしかない。私自身も、そんな変化を起こした後の彼女をはっきりと想像することができました。イメージできたら大丈夫。そこに向かっていくだけです。

<体験レッスン時点でのSさん>
・週に2回買い物をして、1回の買い物分を3日で食べ切るくらいのペース。
・選ぶ食材も料理もレパートリーが少ないのが悩み。
・買い物〜片付けまで時間がかかるのに食べるのは一瞬で、しかもあまり美味しくないなんて割に合わない。(それなら惣菜やお菓子でいいじゃんって思ってしまう)
・朝食のメニューは毎日同じ、お昼は社食、夕飯は自炊か購入した惣菜。

パーソナル料理教室《食べるの始末》は、基本的にZoomオンラインレッスン90分×3回と1ヶ月のLINEサポート。流行病が落ち着いてからは、訪問レッスンも再開しています。Sさんのご希望は訪問レッスン、買い物からの同行でした。私が一番好きなスタイル!レッスン初日までに、ご自宅にある調理器具、調味料などを写真でお送りいただくのですが、実際に写真を撮りながら「本当にアルモンデやるんだ!」と実感が湧いてきたそう。そうなんです。おうちにアルモンデ全てやるのがパーソナルレッスン「食べるの始末」の最大の売り。自宅にアルモンデ作るから、いつでも何度でも復習できるんです。

スタート時の調味料一式


【レッスン①蒸篭デビューとキッチン環境の問題発見&改善】


初訪問DAY。Sさんは一人暮らし。台所には縦2口のIHと小さなシンクがありました。きちんと片付いていて几帳面な性格がうかがえます。台所の動線や冷蔵庫の中、調理器具や食器を確認して行きつけのスーパーに向かいました。
初回なので、まずはよく買う食材を選んでもらいます。鶏胸肉、ブロッコリー、ミニトマト、大根、蓮根、さつまいもなどなど。Sさんが食材を手に取るたびに、いつもどんな風に食べているのか教えてもらいます。
「蓮根は、節ごとに親・子・孫があるんですよ」なんて、食材豆知識も面白がってくださって、すぐに打ち解けました。
調味料エリアでは、どんな油を使ったらいいか分からないというお悩みに、実際商品を見ながら選ぶポイントをお伝えしたり。おしゃれなラベルに惹かれちゃうけれど、裏面の原材料や製造方法(抽出方法)を確認してくださいね、そうお伝えすると「油の製造方法なんて考えたこともなかった」とSさん。初めての話も興味深く聞いてくださって、レッスンが終わる頃にはSさんすっかり調味料にハマっていたのでした(後日その沼はどんどん深まることに)。

初回のお買い物

買い物を終え、食材を並べて何をつくる?と相談します。この日は、購入してから一度も使っていない蒸篭をデビューさせることに決めたので、野菜の蒸篭蒸しをメインに、蓮根とさつまいものきんぴら、長芋ソテー、水晶鶏、かぼす醤油と色々作ってみました。
やってみてわかったのは、上下2口の間隔が狭いため、蒸し調理をしている間はもう一つのコンロが使えない。そして火力が弱く、蒸すのに時間がかかるということ。これは失敗ではなく経験です。それならこうしよう、と代替え案も話し合って、前向きに解決しました。

鶏胸肉が好きなので新しい調理法が知りたいというリクエストにもお応えして、私の大好きな水晶鶏をご紹介。片栗粉の使い方、片栗粉をつけるとどうして肉がしっとり仕上がるのかなども、調理しながら説明していきます。毎年知人からもらうというかぼすは、簡単で万能なかぼす醤油に。定番調味料ができて嬉しい!と喜んでいただいて私も嬉しい。
長芋は好きだけど、下処理が面倒で手が出なかったと聞いたので、この機会に蒸し&焼きチャレンジ!皮は剥かなくても小さいたわしで表面の汚れを落とせば大丈夫。蒸しと焼きの食べ比べをして、皮付きの焼き長芋が好きでしたと後日教えてくれました。数日後には小さなたわしも購入されていて、行動力すごいなぁ。

初めての蒸籠蒸しなど

初回のレッスンでは、一緒にキッチン環境の問題点を洗い出して、どうやったらよりストレスなく料理できるかを丁寧に話し合いました。Sさんの一番のお悩みは、調理台やシンクに調理器具や食材を直置きすることに、すごく抵抗があること。すぐに解決できることじゃないから、少しずつ掘り下げていこうねと話して、ご自宅を後にしました。

初回レッスンから2回目までの2週間は、健康的な食生活でお菓子も買わず、気持ちの浮き沈みもなくて、心身ともに安定していてとても心地よかった。そうLINEで連絡をいただいた時の私の喜びたるや!Sさんの内観力には驚かされるばかりです。見習わないと。

【レッスン②3日分で食べ切る量の把握と茹で鮭】


以前は週末にたくさんの作り置きをしていたけれど、時間がかかるし途中で食べ飽きてしまって今はやめていると体験レッスン時に伺っていました。週に2回、3日分の買い出しをするパターンにしたいということで、2回目のレッスンは「3日で食べ切る量」を把握しようがテーマに。今回はほとんど買わないという生魚から秋鮭、そして鶏以外のお肉にも挑戦したいと豚モモブロックも購入。野菜はカリフラワー、里芋、小松菜、長ねぎ、と食べるのは好きだけど自分で料理することは少ないものを中心に、買い物してきました。

2回目のお買い物

今回の買い物中、Sさんが興味深く聞いてくださったのが、食品添加物について。時折ハムやウインナーを買うけれど実は選び方がわからないというSさんに、加工品には添加物が多く含まれていること、それを踏まえた上での選び方をお伝えしました。肉だけでなく練り物など魚の加工品についても同様の説明を。ハムなどの肉の加工品には「無塩せき」という選択肢もあると知って、次回はそれを選んでみますとすぐに反応してくださいました。素直さと真面目さ、これは出会った時から感じていたSさんの長所だなぁ。
選択条件が限定されたことで、多くの商品の中から選ぶストレスが減って嬉しいという発言に、なるほどと私が納得させられました。


いつもとちょっと違うこと

帰宅後は鮭料理からスタート。茹でと照り焼き、2種の調理にチャレンジしました。以前フライパンで焼き魚をして部屋中が臭くなった経験から、魚の調理を避けてきたSさん。私が茹で魚を猛烈に押していることをnoteで知り、やってみたいと言ってくれました。簡単でアレンジ自在で最高!という感想に、私は内心しめしめです。
いつものブロッコリーではなくカリフラワー。いつもの鶏肉ではなく豚の塊肉。臆せずどんどんチャレンジしてくれて、頼もしい。他にも茹で里芋、焼き長ねぎ、バターナッツのオーブン焼き、小松菜のピーナッツ和えと、この日も初めてのことばかりだったけど、楽しそうに料理してくださって、ほっ。
実はこの日、前回のレッスン後に購入したタワシが大活躍したんです。里芋の下処理が面倒で手を出すことができなかった。そう言っていたSさんが、たわしで汚れが楽に取れる!、茹でると簡単に皮が剥ける!とはしゃぐ姿にをみて、またまたほっ。
焼き長ネギの簡単さとその美味しさに感動したり、長ネギのみじん切りABCを試してやりやすい方法を探してみたり。あっという間に時間は過ぎてしまいます。初めて購入した豚の塊肉は下拵えだけしてレッスンを終え、LINEで茹で豚の作り方をお伝えしました。対面でやりきれなかったことは、LINEでしっかりサポートしていきます。今まで捨てていたという茹で汁に、焼きねぎを入れてスープを作ったら美味しかったです!なんて連絡をもらって、料理を楽しんでいるなぁと胸が熱くなります。
すぐに復習したり、展開してみたり。日々のやり取りから伝わる彼女の変化に驚くばかりの日々。

ある日のSさんの食卓


【レッスン③調味料の座学と味見】


3回目のレッスン前にSさんから嬉しい報告が。
「小ぶりのキウイ大袋200円を見かけた際、いつもなら素通りするはずですが、間食はお菓子より果物・ビタミン補給!と思い購入。酸っぱいならジャムにしたら?と佑子さんに教えてもらったので、キウイジャムを作るという素敵な台所時間を過ごしました。」
たった数週間でこの変化!ジャムを手作りするなんて、数週間前のSさんは想像もしなかったでしょう。すごいなぁ。
ジャムで大量の砂糖を使ったので、次は何を買おうかという新たな悩みが生まれたみたい。LINEで色々な甘味料を紹介すると、塩は醤油は?と次々に気になることが増えてきたようなので、最後の3回目レッスンは調味料の座学&味見をすることになりました。レッスン内容はその時やりたいこと、それがパーソナルレッスンの良いところ。

持ち込んだ調味料色々

大量の調味料を積んで、Sさんのお宅へ。持ち込んだのは、醤油4種類、甘味料5種類、塩5種類、ケチャップ2種類+おすすめのソース。

原材料とそれによる味の違い、製造方法の種類とそれに伴う価格の違い。栄養価や身体へのメリットデメリットなど、味見しながらひとつずつ説明していきます。実は初回の訪問時に、お酢の味見と座学もしていたので、基本調味料のほとんどを3回のレッスンで学んでいただいたことになります。私が好きなものはこれだけど、座学を通して気になったものを試してみてねとお伝えしました。最終判断はご自身でね、失敗してもそれがこれからの軸になるから。
調味料を深掘りした最終レッスンの後、Sさんから届いたLINEにはこんなことが書いてありました。
自分の体を作る料理の味の要になる調味料を納得して選択・使用することが今後できるようになるのは、とても嬉しく、それだけでなんだか少し自信がついた気がします。食材を調理して料理を作る以前の、もっと根本となる部分が満たされたようで、充足感でいっぱいです。
胸が震える、嬉しい言葉でした。私が大切にしていることを、たった1ヶ月のレッスンでガシッと掴み取ってくれたんです。
1対1の対話を重ねながら、食に向き合うことの喜びを、パーソナルレッスンを始めようとした頃の気持ちを、Sさんが思い出させてくれました。


「食べるの始末」を終えて

【Sさんからのご感想】
パーソナル料理教室「食べるの始末」を終えて、料理はもっとおおらかでいい、それを断片的にでも受け入れることができて、心が軽くなりました。
シンプルな調味料、シンプルな食材、シンプルな調理法…自分は食べたものでできていると体感しました。食べる楽しみを以前よりも意識するようになり、健康的な食事も大切ですが、たまにはファストフードやお菓子を食べることもしっかりと満喫しようと思うようになりました。
あれだけキッチンの前に立つことに苦手意識を抱いていたはずなのに、少しですが確実にその抵抗感が和らぎました。
食器や調理器具を新調したり、母に料理を訊ねてみたり、外食したものを自分で作ってみたり。1ヶ月前には想像もしなかった変化です。
ハードルが高い「自炊」という言葉を「台所時間」に変えてみようと思います。この「台所時間」も佑子先生の言葉です。今日は、明日はどんな台所時間にしようかな、そんなふうに考えていきたいです。

パーソナルレッスンをするたびに、「一方的な学びなどない」という確信が強まります。私は教える立場ですが、それはある一面だけ。別の一面では生徒さんが私の先生です。Sさんの素直さ、実直さ、実践力、分析力。感嘆することが山ほどあって、私にとっても学び多き1ヶ月でした。
最終レッスンの日、Sさんが学んでいる台湾茶を振舞ってくださいました。みたこともない貴重なお茶を味わう至福の時間。美しい所作にもうっとり。丁寧にお茶を淹れる時間、忘れていたなぁと気付かせてもらいました。

お茶のおもてなし


食べるの始末を通して、すっかり調味料の沼にハマったSさん。今週末の手前味噌クラスにも参加してくださいます。こうしてゆるゆると関係性が続いていくことがありがたく幸せです。
Sさん、ありがとうございました!これからも台所時間を楽しんでくださいね。


「食べるの始末」は、おひとりおひとりの「こんなふうに日々ごはんを作れたら」を叶えるレッスンです。オンラインorご自宅訪問のサポート、どちらかをお選びいただけます。丁寧に対話を重ねながら、「こうありたい」をサポートします!体験レッスンのお申し込みは随時受け付けています。お気軽にご相談ください。


いいなと思ったら応援しよう!