独白「深さと高さ」

深く高く生きたいぜ

高く深くはごめんだぜ


○出る杭は打たれる
なら、出過ぎた杭になればいいって?

いやいや、

深く深く固い地の底まで足を下ろしきれば

いくら打たれても、切られても大した影響はない。


○良い木は伐られ、細い枝は折られる
だから、中庸がいいって?

いやいや、

底知れぬ禍々しさがあれば

伐られも燃やされもしないだろう。


外見は、とりあえず見難くない程度に整えて、

怒られない程度に人の言うことを聞いて、

いっそのこと、まだ心に余裕がある若いうちから

もはや外聞も気にならなくなるくらいに、

さぁ訓練を始めよう


幸いなことに、

世界には不幸は掃いて捨てるほどある。

それらを一つ一つ丁寧に拾い集めて、

愛し子に触れるかのように親身になって、

考え、感じ、悩んで、悔やんで、反省して、

苦しんで、もがいて、妬んで、僻んで、

自分を責めて、世間を憎んで、過去を恨んで、

人に羞じて、天に羞じて、自己否定を繰り返して、

慚愧からの解放と、たった一つの命とを天秤にかけて、

比べるべくもないものを無明にも比べたことをまた悔やんで、

不貞寝して、起きて、また寝て起きて、寝て、

食が細くなって、食べる気力すら失って、

じきに空腹すらほとんど感じなくなって、

種々の苦しみにも慣れてきたころ、

暗闇への恐怖心も和らぎ始め、光を光とも思わなくなってきて、

なにを見てもだいたい同じに見えて、心が動かなくなって、

世間の話題に付き合うよりも、

却って光の届かない深淵にいることが心地よくなって、

これではだめだと腰を上げるも、

光の世界がやけに見掛け倒しのまやかしめいて見えて、

なんとか世人と話を合わせるのだけれど、

光の世界はどこまでも闇に冷たくて、

初めは冷たく1人寂しく思えた深い闇の中の方が、

より確かな優しさと温かさで満ちていたことに気づく。


あぁ大地の温かさよ

あぁ闇の奥ゆかしさよ


太陽は確かに偉大だけれど、

それを受け取るふくよかな大地と、

大地に根差した草木と微生物とがあって初めて、

私はその偉大さを感じることができるのだ。


身体の痛みに強くなる方法が、ただそれに慣れること以外にないように、

心の痛みも早いうちに一通り経験してしまえばいい。


長い間、死の瀬戸際を練り歩き、
死との対話を繰り返すうちに、
死の方が私を避けるようになった。
きっと彼はシャイなのだ。

毎晩、悪魔のもとにこちらから出向き、
この身から出たカゴ一杯の不幸せに、
世界への悪態を書いたメッセージカードを添えて届けていたら、
その家はいつの間にかもぬけの殻になっていた。
きっと彼らは尽くされるのが苦手なタイプなのだ。


そうやって、ありとあらゆる暗闇に根を張り巡らせて、

大地に親しみ、信頼し、慈しみ合って初めて、

大空に向かって大きく健全な幹を伸ばせるのだ。


いつの日か

水中も地下も地上もすべて「自分」で埋め尽くしたい。

そんな不可思議な野望を残して、


独白おわり。



p.s.

100人が1年生きるのと、2人が50年生きるのと、1人が100年生きるのって明らかに違うのに、なんか「似てる」よね

100人が一共同体として命を繋ぎつつ数を一定に保ちながら400年生きた場合と、10人が10人のまま4000年生きるのと、4人が4人のまま10000年生きるのもなんか「似てる」

そうすると、寿命って、はたして考える意味、あるのかな

命って、全滅さえしなければいいんじゃないのかな

正直、個人的には陸上生物くらい絶滅したところで構わないと思ってる

現代人の執着甚だしい体たらくときたら、

仏陀が見たら薄らと顔をしかめるだろうな、

イエスが聞いたら泣くのかな


個人主義に反対するする人たちって結局のところ個人主義者だし、

全体主義に反対する人たちも結局、保身的なだけじゃないのかね、

倫理や社会性ってどれもこれも珍妙で、ことごとく怪異的ではないかしら


我々はきっとただ、退屈が嫌いで物語るのが好き、ということなのだろう。

その点ではみんな同胞だ。

違いを比べ合ってたらきりがない。
互いをただ認めて、同じくらいの「気まずさ」をみんなで分かち合おう。


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