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大学の交換留学を使ってドイツのサッカークラブで通訳になった話
note第一弾の記事から1ヶ月くらい経ってるから、自分が泥水すすってもがいてるところで記憶が止まってると思うんだけど、最高にイケてる人たちと過ごした夜の余韻に浸りながら少し時を進めてみようかなと。
「夢はサッカーコーチ。」
口ではそう言ってても、現実を見て頭がその言葉を否定する。
ドイツは知っての通りサッカーの人気が半端なくて、街にサッカーが溶け込みすぎてる。自分がいたハノーバーって都市には、ブンデスリーガ2部に所属してるHannover96ってチームがあって、街の至る所に96がいる。電柱のステッカー、建物のグラフィティ、通り過ぎる親子のシャツ。このチームを街から抜いたら何が残るんだろって真剣に思うくらいなんだけど、それが素敵で仕方がない。日本じゃサッカーを抜いても国は回るだろうけど、ドイツじゃきっと回らないと思う。それが本質的に大きな差だなと感じながら、ハノーバー市民とは少し違う感情を抱いていた話をしたい。
前回のnoteに書いたように毎日のようにもがき苦しんでたわけだけど、転がってきたチャンスを掴むまでの物語は、手始めにゲートキーパーのおじいちゃんを口説くところから始まった。ドイツの2歳児レベルの語彙力と破壊的なカタコトドイツ語で挑んだけど圧倒的敗北。1ヶ月毎日通い続けたけど、日に日にゲート前でおじいちゃんと雑談する時間が増えただけだった。笑
おじいちゃんと話したいわけじゃないのよ!練習見たいのよ!笑
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よし、計画変更。なかなか遠いけどフェンス越しなら練習見れるやんと思って通い続けた。フェンスにしがみつきながら雨の日も槍の日もノートを取り続ける毎日。そんな毎日を3ヶ月くらい続けたある日、コーチの一人がついにこっちにやって来た。
「お前スパイか?」
こっちにコーチがやって来るのが見えた瞬間から彼の第一声が届くまで、考えうる全ての可能性と受け答えをいっちばん最初の天下一武道会の悟空とクリリンの再現並のスピードで検証したけど、その質問は想定してなかった。その時は「なわけあるかぁ」ってエセ関西弁でツッコミそうになったけど、よくよく考えてみると3ヶ月もフェンスの外に金髪のアジア人がいるんだから当たり前の反応だった。
人生最大の正念場だったから、ケツ穴を人生で一番引き締めて弁解した。日本から指導者の勉強したくてドイツに来て、ずっとゲートキーパーに交渉してたんやけど、練習には毎日来てるし、ノートもほとんど日本語で取ってるから人に見せる用では無いし、ゴニョゴニョゴニョゴニョ。入国審査のときの税関くらい険しかったコーチの顔が少し緩んだのも束の間、どんなに辛くても信じ続けてたチャンスが転がってきた。
「お前通訳できるか?」
その時はドイツ語がツンツルテンだったけど、答えは決まってた。
"Ja!!!!!" (はい!!!!!)
何かの記事で見たんだけど、新人の頃は上司に頼まれた仕事が自分のキャパを少し上回ってても受けろって。それが自分の成長に繋がるし、上司からの信用に繋がるって。ただ、これは絶っっっ対にそれに当てはまらない。だってこんなの大学で法律学んだやつが、お前今から手術できるか?って言われてるようなもんやん。
ただ、そのときはそんなのどうでもいいくらい夢中だった。どうにかなるやろ!!!!!やっとの思いで練習場に潜入できたけど、そんなスタンスだったから監督に呼ばれて日本人の選手に挨拶して、ドイツ語でめちゃくちゃ何か言われたけど通訳はできない。というより、当たり前だけど何言ってんのかさっぱり分かんない。ここで得意の計画変更。ここは正直に、おれドイツ語話せんから英語で頼むわ!って言ったら、なんかすんなり受け付けてもらえた。練習が終わって、監督に明日も頼むぞーって言われて初日の仕事が終わった。実感はまるで湧かなかったけど、どうやらブンデスリーガの通訳になったみたい。結局1ヶ月の間働かせてもらって、ビザとか住居の関係で帰らないといけなかったわけなんだけど(ただの大学の交換留学だからね)。その時は死ぬほど悲しくて、スタジアムからの帰り道に意味わからんくらい泣き喚いてたけど(コーチに次の試合からお前もベンチに入れって言われた週に帰らなきゃいけなかったから、、)、今は少し違う。千載一遇のチャンスを逃したのは間違いないけど、ある面では良かったとさえ思う。だって、この経験がまた自分を強くしてくれると思うから。失敗ばかりの人生だし、振り返れば反省はたくさんあるけど、後悔はなくて。今まで人生で下してきた全ての選択に誇りを持ってるし、この反省を克服すれば必ずもっといい結果が待ち受けてるはずだから。だからこそ、この反省が多くの動きを生んでくれて、これから酸いも甘いも知っていくと思う。
もちろんまだ自分は何かを成し遂げたわけじゃないから、この話は日の目を浴びなくてもいいかなとも思ってたけど、これは宣言。
「夢はブンデスリーガのコーチ」
もう胸を張ってそう宣言できるんで。
”Nach dem Spiel ist vor dem Spiel.”
「終わりは次の始まり」
今日も生きるかぁ。