信じることと勇気について
牧秀悟キャプテンからチームメイトにかけられた言葉を聞いて、私は熱くなるというよりは悔しかった。
応援している選手にわざわざ不安を払拭させるような言葉を言わせてしまったからだ。
確かに残りの試合数、ゲーム差というものをみたら苦しい立場にいることは明らかである。
それを個々がどのように思うかはもちろん自由だ。
それでも、ベイスターズは残った可能性を信じて戦っている。その信じる気持ちを、私たちファンが揺るがしていたかもしれないと思うと悔しかった。
☆ ☆
「勝ち切る覚悟」
残りのシーズンへ向けたスローガンが発表されて最初の試合。10対4という大勝に見えるスコアだが、簡単な試合ではなかった。
先発投手は大貫晋一投手。
肩のけがをして以降、球速を思うように出せずに苦しんでいるように見える。綱渡りの投球に私は不安を感じていた。
初回に大貫投手が失点するも、裏の攻撃ですぐさま逆転。しかし、次の回ですぐに同点にされてしまう。
それでも、好調な打線が得点を重ね2点差とし大貫投手を盛り立てる。勝利へ向けていい雰囲気だ。
山場は4回の表、タイガースの攻撃だった。
決め切ったと思う球に審判のストライクコールが出ずに四球。簡単に追い込んでから球が浮いてヒット。さらに単打が一つで1アウト満塁。大貫投手が追い込まれる。
私は空を見上げ、息を整えた。こうするとちょっと楽になる。長年の観戦に基づくライフハックだ。
ついでに星に祈りを。正直に言えば、大貫投手を信じ切れていなかった。
「がんばれ」「勝つぞ」「大丈夫」あちらこちらから声が飛ぶ。
三振を狙った球が外れても「ナイスボール」の声と拍手が広がる。
「絶対、大丈夫!」
私も続いた。私たちが信じ切れなくてどうするんだ。
フルカウント。次の球でアウトを取れるか、押し出し四球となってピンチが継続されるかは大きな違いだ。
野球とは不思議なほど面白く仕組まれていると思う。
ストライクゾーンはバッターにとって打ちやすいところだ。ボールゾーンは打ちにくいけど、見逃されれば投手は苦しくなる。どちらを投げるにも勇気がいる。
勇気のもとは何だろう。データ、自分の球、キャッチャーのリード…。何かを信じて投げているように思えた。信じることが勇気になるのかもしれない。
信じられるものが見つからなければ?それでも、ピッチャーが投げなければ始まらない。
投手は勇気を試されている。
大貫投手と山本捕手が選んだのはスプリット。
見逃されれば押し出しとなる低めの球。バットが空を切る。
いくつもの三振を奪ってきた大貫投手の得意球を信じたバッテリーの勝利だ。続くバッターも抑えてピンチをしのいだ。覚悟がリードを守り切ったと思う。
私たちはベイスターズの選手たちに信じてもらえるだろうか。
できると信じる、その意思を揺るがさないでいられるだろうか。グラウンドで迷う選手の信じる声援となれるだろうか。
個々がどのように思うかは勝手だ。
それでも、この日のハマスタは信じ切る気持ちに満ちていたと私は思う。
インスタグラムにも写真を上げていますのでぜひご覧ください。
長々とお付き合いいただきありがとうございました。