雲の上、星は空高く
雲の中を飛ぶ飛行機は大きく揺れる。白く広がるだけの景色で不安がどこまでも続くような気になってしまう。
ベイスターズの応援で福岡へ乗り込んだ。福岡ドーム、今はみずほPayPayドームと呼ばれている球場へ初めて訪れた。
「3位から日本シリーズの舞台まで駆け上がってよく頑張ったね」
2連敗して、周りの野球ファンに言われた。その中にはベイスターズファンも含まれる。
自分もそういう言葉が思い浮かんでいたところだった。
先発の東克樹は病み上がりだ。肉離れからのぶっつけ本番。うまくいかなくてもしょうがないって後から思うのにはちょうどよかった。
頑張ったけどね…と。
幸先よく先制するもウラの攻撃で追いつかれてしまう。大エースとはいえパ・リーグ王者にそう簡単にうまくいくなんてないよね。
流れを変えたのは桑原将志。ダイビングキャッチでピンチの芽を摘み取った。私たちにとっては当然のようなプレーだった。
けれども、勇気をもらえたのは普通さからだった。
頑張ったねって言葉が浮かんでしまうのは2017年の日本シリーズからだったかもしれない。
そんな大舞台まで行けるとも思わなかった快進撃に感動して負けても労いたいと思うようになった。
当たり前のプレーは当たり前の気持ちを思い出させてくれた。
桑原のどんなときでも食らいつく姿はずっと変わってない。いつだってNOW or NEVERだ。
あの時、悔しかったな。もうちょっとで日本一になれた2017年。本当は私も悔しかったはず。それをどうにかするために頑張ったって変換してた。
でも、それは全部が終わってからでいい。
終わる前から頑張ったなんて、きっと選手も欲しくないはず。
あの日の悔しさに囚われた私と選手たちにとって欲しいのは勝ち取ることだ。
桑原のホームランでリードを奪ったことで東にもエンジンがかかる。いつもの姿だ。
変わらぬ姿には勇気をもらえる。弱い人間はどうしても揺れてしまうから。
あと少しが簡単じゃないことはみんな分かってる。ほんのちょっとでも翼になれるように頑張ったより頑張れってたくさん言おうと思う。
雲を抜ければ青い空が輝いているはず。