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貴重な体験
先日、出張で中国の某地方都市に行った。
最終日は移動のみで、集合時間も遅かったので、朝飯後にホテルの周りを散歩した。昨日も一昨日も、ただの空き地だった場所に青空市場が出来ていた。
ちょうど、土曜日だったので、週末だけ開かれているのだろう。
お土産に、この地方の特産品を探してみる事にした。
こんな所に来ると、何故だか、まずは魚を探して見てしまう。
海に面してない土地だから、売ってる魚はありふれた淡水魚ばかり。
でも、他では少ない、生きている小さなフナがやたらと多い。
この辺りでは、これが安くて美味しい魚なのだろう。
でも、お土産には出来ない。
更に売っている物を見ていると、乾燥した木の繊維みたいな物を売っている人がいた。良く見ると、それが入っている箱に白いタバコが数本入っている。えっ、これ、タバコの葉?
中国に延べ20年以上住んでいるが、青空市場でタバコの葉らしき物を見たのは初めてだ。タバコって、どの国でも貴重な税源だから、これはアレ、アレなんじゃないか?でも、タバコの葉だと一言も書いてないからOK?
並べられた大きな段ボール箱には、どこにでも売っている中国のタバコの銘柄がマジックで書かれている。値段は500gで50元(約1,000円)から100元(約2,000円)。
生まれてこの方タバコをやらない私には、高いのか安いのか分からない。
だけど、お土産としては有りだろうと思い、買う事を決めた。
青空市場でタバコの葉らしき物を売っているのは3人。2人は男性で1人は女性。男性は2人ともちょっと目つきが悪く、怪しい雰囲気を放ってる・・・と言うか、目が小さいだけ?女性はどこからどう見ても、普通の中国のおばちゃんだ。
私は何故だか、こんな感じのおばちゃんから市場で物を買って、後悔した事がない。どちらかというと、安くして貰ったとか、多く貰ったというイメージの方が強い。なので、女性から買う事にした。(おっさんに騙された覚えはある)
じっとタバコの葉らしき物を見ていると、「左は重くて、右は軽い。どれでも表示から20%引く。」と言われた。本当なら、しばらく観察して、常連が買う値段を確認すべきだが、客は私しかいない。その値段で買う事を決めた。一番高いのを指さして、「それを1斤(500g)」と言った。
おばちゃんは、赤いビニール袋を取り出し、手づかみでタバコの葉らしき物を入れだした。いやいや、加工してくれるんじゃないの?そのままでお土産に出来るわけないじゃん。
そう思い、おばちゃんに「加工してくれないの?」と尋ねると、
「加工は自分でやるのが当たり前。加工済みは、別にある。」
そう言って、1箱に200本ぐらい入っているのを取り出した。
「これは40元で、下のは30元。箱に葉の名前が書いてる。」
10箱ぐらい並べた後に「どうする?」と聞かれた。
「一番いいの頂戴。」そう私が言うと、勝手に4箱選んで赤い袋に入れた。
「4箱で120元だけど、100元で良い。」おばちゃんはそう言って袋を差し出した。
いやいや、そんなに要らないって!
「ごめん。先に試したい。」
「良かったら、次は自分で加工機を買って、タバコの葉らしき物だけ買うよ。」
「加工機も売ってるの?」と聞くとおばちゃんは、
「加工機は90元(約1,800円)。それと葉を入れるフィルター付の外紙もある。」
そう言って、店先にある手動の加工機にフィルター付の外紙をセットし、タバコの葉を加工機の穴につめ、レバーを引いて実演してくれた。出来上がった物は、どうみても、普通に売っている白いタバコだ。
しかし、マジで何でもあるな・・・。
タバコ好きの人なら、きっと面白いに違いない。
種類の違う葉らしき物をブレンドして、自分オリジナルを作ったり、いかに本物に近づけるかを探求したり。想像するだけで、楽しそうだ。
だが、残念ながら、私は吸わない。
「1箱だけで良い」と言ったら、おばちゃんは不機嫌になった。
「じゃあ、40元(約800円)。割り引けない。」と言われ、そのまま支払った。払い終わると機嫌がなおったので、いつもより高く私に売りつけたのだろう。
久しぶりにした、海外での貴重な体験。タバコらしき物が、少し高くなったぐらいなら安いもんだ。写真どころか、動画まで撮らせてくれたし!