また会う日まで
福島県郡山市のイトーヨーカドーが、5月26日をもって閉店する。
その建物は地元の大手スーパーマーケット・ヨークベニマルが運営を引き継ぎ、2025年2月頃に新たなショッピングセンターとなるらしい。
約9ヶ月の間、我々市民はここで買い物が出来なくなるのだ。
何が一番困るかと言えば、ベーカリー「ロミオ」のクリームボックスが食べられなくなることだ。
クリームボックスとは、酪王カフェオレと双璧をなす郡山市が誇るローカルフードである。手のひらサイズの四角い食パンに盛られたミルク風味のクリームは見た目に反して甘すぎず、ぺろりと食べられてしまう。
いろいろなパン店が趣向を凝らしたオリジナルのクリームボックスを販売している中で、私が愛してやまないのはここ「ロミオ」のものだ。
「ロミオ」は現在、イトーヨーカドーの中にしか店舗を構えていない。
ヨーカドー閉店の一報を聞いて一番最初に頭に浮かんだのは、「ロミオ」の進退だった。
テナントによってはヨーカドー閉店と共にお店を畳むところも多いようだ。じゃあ「ロミオ」はどうなるの?
あと少ししか「ロミオ」のクリームボックスを食べられないかもしれない。焦った私は昼休みにヨーカドーに向かった。
ら。
平日の昼間だというのに、店の外まで40分待ちの大行列ができていた。
さすがうまいものには目がない郡山市民、考えることは皆同じである。
老若男女を問わず、決して広くはない店舗に入るための待機列に粛々と並び、少しずつ飲み込まれては大きな袋を抱えて出ていく。
お店の無駄のないオペレーションと高速レジ&袋詰めに目を奪われながら、私は『ヨーカドーの「ロミオ」』での最後となるクリームボックスを買うことに成功した。
退店時お店の方に確認したところ、新しいショッピングセンターになっても「ロミオ」は残るらしい。素晴らしい。大英断である。
むしろこの店舗の最大の目玉である「ロミオ」を残さなかったら暴動が起きかねない。それくらい我々はクリームボックスに魅せられている。
閉店まであと数日あるが、きっと週末しか来られない人々が潮のように押し寄せるだろう。夏になり秋を経て冬が深まった頃、また焼きたてのパンが食べられると信じて耐え忍ぼう。
また「ロミオ」のクリームボックスが食べられる日を、心待ちにしている。