スマホゾンビになりたくなくて(詩/シロクマ文芸部「秋と本」)
【スマホゾンビになりたくなくて】
読書の秋っていわれるように
秋には本が似合う
どうしてなんだろうって
そんなこと
考えてみたことなかったけれど
あちこちに木立のみえるベンチで
一冊の文庫本を開いたとき
ふと思う
秋と本
あざやかに色づいた木々の葉っぱ
一年中でいちばん
木々の彩りを想う季節に
本を開いたら
私たちはそれだけで
どこかひとつになれた気がする
そうかもしれないって
息づく木立の周辺
さわさわゆっくりと
ささやいてくる
葉っぱと枝のコラボレーション
輪を描く光の音に目を覚ます
あなたの触れる紙のページは
一本の森の木がふるさとですよ
と
森のふるさとは
地球を守る大自然なのですよ
と
あなたが本に触れるゆびさきも
ゆれる髪の芯も伸ばす背すじも
にんげんの心の源のふるさとも
すべては大自然なのですよ
と
忙しすぎて忘れていたことを
秋の読書は思い出させてくれる
自由なようで自由じゃない
通信で仕切られた世界
閲覧したら執拗に流れてくる
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便利なようで
実は監視されているような世界
誰もが同じ時間の枠の中で
うつむきゾンビのポーズ
よくよく思えば薄気味悪い
スマホに依存しすぎる世界
そんな時は古本屋で手にした
お気に入りの本を片手に
木立のある場所へ
監視されない自由を求めて
歩いてみる
腰をおろしたベンチに
はらりはらりと色づいた
澄んだ空気の音がこぼれてくる
私の本来を取り戻したように
季節の温度につつまれてゆく
静かな秋に言葉をなぞる
ページのなかに映り込む
木漏れ日も
にんげんの言の葉も
ひとつの自然の世界
ゆるやかな秋風が
さっきから
ページを催促してくる
はやくその美しい物語の続きを
※シロクマ文芸部 お遊び企画「秋と本」に参加させていただきます。よろしくお願いいたします。