好きって言ったらダメなんですか
「女性にかわいいとか好きって言い過ぎたらだめです。その言葉の価値が下がります」
音声配信アプリで配信をしていたときに恋の話になってリスナーの女性に言われた言葉だ。
言ってる意味は分かる。ただ本当にかわいいときはどうしたらいいのだろう。女性は「かわいい」と言われるのが嬉しいというのも聞いたことはある。何より僕がかわいいと伝えるときは本当にかわいいと思ってるときだ。一つの事象でも嬉しかったり、不快に思ったりするこの難解なミステリーに僕は頭を抱える。
そして、人によるという、最も聞きたくない真理を僕は棚に上げる。
先日出逢った短編集、「ほろよい読書」の青山美智子さんのきのこルクテルの中にこの一文があった。
文学というのはまさにそうだ。「好き」はもちろん、あらゆる心情を別な言葉、ときには描写によって表現する。あの夏目漱石も月が綺麗ですねと表現した。
意外にも僕たちは日々の中で、好きを言い換えている。「一緒に花火を見ませんか?」であったり、「あなたに会いに来ました」であったり、「帰りたくないです」であったり。そして受け手側もそれは「好き」ってことなのだろうかと想像したり、解釈したりするのが楽しかったりする。
僕も「好き」を言いかえられる人間になりたい。ストレートな「かわいい」ではなくて、自分にしかできない言葉や表現でその人の魅力を伝えたい。
しかし、そんな風に思った矢先、短編きのこルクテルは意外にも「好きです」と言葉にする描写で終わった。
人によるというめんどくさい真理を僕は棚から下ろした。人によるから僕によるに変えてみる。よし自分が好き意外で伝えられないくらい好きなとき、僕は「好き」って言おう。
こうして、自分にとっても相手にとっても「好き」が特別になる。