アメリカーナというジャンル
ここ2年ほど、2人のシンガーを集中して聴いている。
そのうちの一人はルシンダ・ウイリアムズだ。
もともとカントリーシンガーとしてずば抜けていたけれど、彼女がすごいのは40歳位になってからだと思う。1998年の”Car wheels on a gravel road“は全曲が素晴らしい名盤で、彼女の歌唱も美しさと荒々しさが共存している時期に差し掛かっている。これは聴いてほしい。
さて、ルシンダのように、ブルース、カントリー、ソウル、ロックなどを自分のルーツとしている人たちの音楽を総称して「アメリカーナ」と呼ぶ。ルシンダの他にも、ボブ・ディラン、ニール・ヤング、ザ・バンド、トム・ペティなどがその代表となるアーティストだ。
もともとロックはブルースとカントリーが入っていたし、ほとんどのカントリーシンガーはブルースを歌っていた(はず)。カントリーやフォークの歌唱にはブルースのフィーリングが必須だと思う。あまり誰も言おうとしないけれど。そして、このジャンルの大親分は間違いなくハンク・ウイリアムズだろう。上に挙げたアーティストの誰もがフェイバリットとしている。
2つや3つ、4つのコードでも見事に表現できるのがこのジャンルのすごいところだ。コードが少ないということは、流れが自然で、リズムの生み出すエネルギーを邪魔するものが少ないということだ。
また、そのシンプルさに耐えうる歌詞の力強さ、聴き手を信じさせる歌い手の強靭さも必要になる。
このハードルをみごとに突破しているアーティストは少ない。だからこそ、貴重なんだろう。ルーツを自分のものとして昇華させていることも大切なことだと思う。アメリカーナはあくまでもスタイルであって、聴き手にどう響くか、自分の真髄をどう捉えるかが一番重要なことだと思う。おれはここで「アメリカ最高!」といいたいわけではなくて、アメリカーナにあるシンプルな構造から生み出されるパワーを強くおすすめしたいだけなんだ。