受け取れない花束
あるところに
愛を信じる人だけが見える花束がありました。
一人の青年は
その花束を持って
愛する女性の家へ向かいました。
その青年が彼女の家へ訪れるとき、
その手にはいつも花束がありました。
どんな愛の言葉を伝えるより
その花束が自分の気持ちを表現してくれていると
信じていました。
女性は彼の愛を信じていませんでした。
当然、女性の瞳にその花束は映りませんでした。
なぜなら
彼は全く「愛している」と伝えてくれないし
贈り物も一度としてくれたことがないからです。
そんな彼が「私を心から大切にしてくれている」
なんて少しも思いもしませんでした。
いつしか青年は
いくら花束を贈っても
全く喜ばない女性を見て
自分のことを大して好きではないのだと思いました。
そしていつしか、
彼女に花束を贈りたいという気持ちも
湧かなくなってしまいました。