異世界探報期 のんびり農家
このアニメは、ヤバイ!
原作まで含めた本作の立ち位置はなんとも形容し難い。あえて言葉を探すならエロゲの全年齢版と言ったところだろうか?原作の性に爛れた部分をほとんどカットし、セックスコミュニケーションの代替としてまともなイベントを入れる構図。
確かに「あーこいつら行間でヤッてんだな」となるシーンもあるだろうが、Deen版のFateはそんな感じだったし原作が好きという人にとっては行為が完全に無かったことになるよりはいいのかもしれない。余談だがDeen版は岡田麿里がいい仕事してたと思う。
問題なのは原作だ。原作(なろう版、コミカライズや小説版は未確認)は本当に頭が終わっているとしか言いようがない。アニメ視聴中にわずかなセリフから原作の雰囲気を感じ取り、なろう版を確認したらあまりの退廃っぷりにドン引きしてしまった。-100点の原作の腐った部分をひたすら削ぎ落としてわずかに残った肉に高い香辛料を振りかけ、前菜やスープも工夫をしてなんとか20点くらいに落とし込んでいたのだ。(つまり徒労)
結果として今作の視聴体験は加工そのもののもつ技巧への感心と、並行してチェックした原作の狂いっぷりの温度差が自律神経の乱れを生み、見ているだけで虚脱感と疲労感を覚えさせてくれるというなかなか類を見ない仕上がりだ。皆様もクーラーの引いた部屋と蒸し暑い外を往復したら体調が乱れた経験があるだろう。それの超ハードなバージョンだと理解しとけ(SBSSBK)。
こんなものがアニメ化されるほどストックがないのかとか、彼らの演出・脚本能力は良い原作に使えば神アニメができるのではないかとか、そんなことを考え出すと+120点分マシになっているはずなのに凄まじい虚しさを覚えて仕方がない。まさしく怪作。
マイクラライク、DASH島ライク
明らかに影響を受けている。というか主人公が「番組で見ただけだけど…」という免罪符を多用する。何を着想にして作品を作っても構わないが、作品にする上では必要な事柄をもっとちゃんと調べてほしい。そこで得た蘊蓄をお話に練り込み人間関係などと化学反応を起こしてストーリーが紡がれていくのではないだろうか?
実際にアニメ版では無からストーリーを生み出して人間関係に絡めている。(しかし原作があまりに不毛な地であるために、順番がところどころ妙だったり根底に流れる狂った雰囲気を隠しきれていない。所詮獣か…)どうしてもアニメ化の労力とその虚しさに繋がってしまうので、ここでは表題の作品に対するリスペクトが足りないことに注目してみよう。
ここで取り入れようとされているマイクラの面白さとは「開拓」だろう。未開で不便な地を人間の手で一つ一つ便利にしていく。ここにゲーム的な要素が絡んで「物を集める」「物を作る」「探検する」といった行為の本質的な面白さを面倒な手順なしに楽しめる。木を殴れば素材が手に入るし、木を複数集めればドアや箱ができ、それらで白地図を埋めていく。
この作品はというと…何もしない。「万能農具」なる便利なチートアイテムは、どれだけ使ってもほとんど疲れることがなく(1日ほど飲まず食わずで作業し続け2日目にようやく空腹を覚えている基礎代謝はどうした)、あらゆる道具になり、念じれば「タネが植えられた」状態になり、獣もワンパンだ。完全なるストレスフリーは感覚の遮断に過ぎず、旨みも得られない。念じるだけで全てが出てきて楽しいのは寝る前の妄想だけだ。
幾らでも起伏のつけようはあるはずだ。しばらくは周りを探し回っていろんなものを齧りついに異世界の果実を見つけたとか、その果実を甘く育てるのには一手間が足りなかったとか、穀物を探しにまた遠出をしたとか、別にやたら苦労を演出しなくても良いが起伏が皆無なので何も面白くない。四畳半の部屋から出ない引きこもりと原理的に大差がない。親に飯を部屋の前に置いてもらっているようなもので、自分で何もしていない。
まとめると異世界に足をつけようという気が感じられない。現世にある果物や野菜を量産し、最初の地点からほとんど動かない。そして女性さえ地面から勝手にはえてくる始末。それこそマイクラの動物である。草ブロックにポップする。
無人島開拓物は見たことがないのであまり知らないが、仲間と協力するとか農業知識・手法などが見ていて面白いと仮定しよう。どちらもない。仲間の話は必然的に女キャラの話になる(ほぼ女だし)のであとで触れる。農業知識は出すだけでもいいが、でてないものはでてないので何もいうことがない。
オナホ以上、人間未満
この手の話題で自分がオナホという言葉に込めている意味は「主体性を持たず主人公の性欲名誉欲自己顕示欲を満たすためだけのトロフィーワイフ未満の肉便器」である。いや本当にもうそんなんじゃないすか、スマホとかありふれとか…
今作のキャラクターはというと、原作の味付けはまさしくオナホのそれである。しかもこの作品の悪癖として、とにかく大量に降って湧く上に種族をコンプしようとする癖がある。恐らくは「村の話にしたい」←異種族を揃えよう←女たくさんの方が楽しいよね。くらいの気持ちなのだろう。百聞は一見に如かず、この作品のキャラをアニメに出る登場順に並べてみよう。ちびるなよ。
吸血鬼(1)
天使族(1)
ハイエルフ(7)
ハイエルフの一団2(5)
吸血鬼2(1)
鬼娘メイド(20)
天使のおまけ(3)
リザードマン(15)
獣人(23)
ドワーフ(3)
ドラゴン娘(2)
土エルフ(7)
魔族(4)
ラミア(3)
ハイエルフ(40)
リザードマン15人中5人が男性の時点で女性連続登場記録がなくなったが…そういう問題ではない。わんこそば気分で女性が追加されていく。恐ろしいことに原作では7までの一連の流れに20話×30行で600行ほどしか使っていない。アニメでも1話のABパートでそれぞれ入荷という異常なペースを見せる。着地点を決めてから作った結果、その時その場にいるキャラを全部出さねばならないのだろう。
獣人の中にショタが3人まざっており原作での理由は「全員とヤってると体がいくつあっても足りないから数人請け負ってほしい」から。倫理観が迷子。コミュニケーション感覚でヤるのはそれこそ文化的じゃないだろ。(主人公はけっこう文化的な生活へのこだわりがあるが、作者はそれがなにかをよくわかってない節がある。ワーカーホリックの老後か?)
わんこそばが大して味わわれることなく次の蕎麦がくるように、キャラクター性が分かる前に次のキャラが来るのだ。原作における女性キャラと果物に大した違いはない。どちらも勝手にはえてきて、特に説明も要らない。
アニメはこのビハインドを解消しきれなかった。アニメを12話見ても結局女さんたちの嗜好や性格、個性はよく分からない奴が大半だ。忘れた頃に前のキャラが捕捉されるのはビビるわ。7人のエルフは3話で同時に出てきたがいまだに区別がつかない(名前もコピペみたいだし)。残りの数稼ぎ要因も言わずもがなである。だがアニメ制作陣は責められない、原作の情報量が皆無だからである。イベントはともかくキャラクター性までは捏造できないのだ。
なろう版では基本彼女たちは主人公と即関係を持つので紹介しておこう。1人目は23話で(全裸で)登場し、注:襲ってませんという注意書きとともに主人公の拠点に迎え入れられた。続く24話では行間でセックスしまくった。練ちゃんパパ並のスピード感。
行間というのは文字通りの行間だ。いつのまにかセックスしまくっていて(呼び名がけだものから領主様、村長様、村長と変化したと語られる。キッッッッッッツ)24話の最後では「春までいっぱい励んだ」と書かれている。信頼度が0から徐々に上がっていって、80(キッス)→100(事後)のように関係が出来てからその発展が飛ぶとかではなく、0からいつのまにか100になっている。「種を植えたんだからそりゃ生えてくるでしょ、大木」みたいな顔をされても困る。そいつがどういうキャラなのかも好感度が上がる過程も何もない。頭大丈夫か?
次の天使(27話)はもっと酷い、吸血鬼が犯されすぎて足腰ガタガタだから言葉巧みに顔見知りを村に留まらせ夜になったら拘束し主人公に犯させる。「俺は一夫一妻でも良いんだけどな…」というコメントの3行後には「いっぱい励んだ」である。…
エルフどもは繁殖を目的の一つにしているし、獣人のリーダーは性奴隷として差し出されたし、ドラゴンも魔族も…どっかの王朝かよ。
こんな感じで狂い切った原作をなんとか切り貼りした結果「1人目のヒロインとの関係性かなり急いでるね!」くらいにして残りをカットしたアニメ版は有能である。有能だが、それでも人間関係周りの出来は5点くらいだ。無人島に流れ着くとこれくらい性に爛れるものかな?でも無人島でも本能が理性を破壊するのに2ヶ月くらいかかると思うんだけどな…出会って即合体だもんな…
怖いのはキャラが追加されるのと穀物・香辛料・料理など新しいものが登場するのは交互に行われる点だ。まず生活の基盤を作って…それから村の拡充ではないのか?お話の都合として人間関係と開拓を同時に進めること自体は理解できる。だが先述した通りあまりの淡白さに人間と野菜が同列に見えてくる…ただ貪る。望むままに。
そんなわけでリザードマン以外はほぼ全員犯してそれなりの数孕ませるのが原作だ。しかもいつの間にかそうなったことが後から分かるパターンが繰り返されるのだが、これはもうエロいというより怖い。会話が合計で数十行くらいしかないキャラが「やることやってたから孕んだ」とか言われた時は恐怖した。
女性キャラ郡はオナホやオカズですらなく、行為そのもののメタファーなのだ。男子高校生が昨日4回シコったわ〜と報告する行為が「キャラの追加」に置き換わっているようなもの。もう、そうとしか言いようがない。アニメがこの狂った流れを是正するためにした数々の虚しい努力について見てみよう。
細部にまで行き届いた徒労
第一話
冒頭では心電図のカット→目覚める→女性陣に囲まれる豊かな生活…が流れる。現世で辛いことがあって孤独に死に、そこから立ち直り様々な人と交流する様子を想像させる。していたかった。細かい演出が細部まで行き届いており、初日の夜は二つの月で異世界感を強調したりする。テキパキと開拓する様子は定点カメラで倍速開拓をするのは実況動画みたいだ。
第二話
冬になり、魔物との交流はあれど人との交流はなく。一抹の寂しさを覚える。そんな中初めて現れた来訪者と農作業を通して交流を深めていく(ダイジェストだけど原作はそれすらないのだ)。その温かみを再度失いたくないとの願いから思わず引き止めてしまう。
その文言はプロポーズそのものだった───
原作の狂った流れを理解できる範囲に無事収めている。本人はプロポーズと後から気づき赤面。「しばらくはいてあげるわよ…」で会話が終わる。
なんとか好感度の上昇幅をマイルドにしつつ性行為を省き大筋を変えずに今後に繋げたのだ!立派だよ!あんた…!まだちょっとおかしいけど…
易々諾々とクソ増やすならコミカライズ版なんていらねーぞなんか作画独特だし
第3話
天使とハイエルフが入荷。同時て…「体がもたないのよ!」との台詞も農作業の疲れに聞こえるように偽装している。ちなみに私はここで勘付きました。
吸血鬼姫のキャラの掘り下げの前に建築要素の紹介はどうなんだ…?いや、まあ、良いんだけど。それしてると尺足りないし…
第4話
コメを作る。風呂を作る。こういう現代人の生活に必須そうなものをキャラの入荷によってできるようになったとすると多少は参加した意味がある。オナホとしての存在意義をオミットしたのだから尚更。
第5話
ぶどうを潰してワインを作る。ワインを作るという共同作業を通して挿入歌と共に異種族が一つに融和していく…まともなアニメじゃねーか
*原作では全員貫通済みです!
もうやだ。
第6話
ワイバーンを倒した。前話の融和と今話での危機のお陰でより強く結びつこうと村が正式に作られる。村長はあなたでしょ?と1stヒロインが真っ先に声をかけてくれるので信頼関係が描写される。これについては原作でヤリまくりだからそりゃそうなんだけどなブヘヘヘ
第7〜10話
今までに入荷した住民もすごい強者揃いだったので、ご近所さんがやってきてはその凄さに驚き、平伏して権威イキリを達成する。これを何回も繰り返し都度生贄として女性が入荷される。立場の弱い国が自分の家族を差し出し、性的にも勢力的にも金銭的にも強者に収奪される様はまさしく戦国時代。舞台は中世でも価値観は現代人だろうに、争うことなく長きに巻かれるがままである。簀巻きみたいになってそう。
アニメスタッフは毎回手を凝らし、各種権威イキリをなんとかギャグの範疇に収めている。
第11、12話
1stヒロイン様懐妊!(原作では他のキャラがずるいずるい!私もとっとと孕ませて!と言っている。悪夢だ。)描写はいらないがキッスくらいはしておいてほしかったし12話でいきなりあなたとか言い出すからビビった。コウノトリか妖精が赤ちゃんを運んできたのか?そんなメルヘンな世界観でもあるまいに。「あの時のプロポーズの答えだけど…」みたいなイベントは必要だったと思います。ヒロインさんサイドが主人公にどこかで歩み寄らないといけない。いけないだろ!
不健康で、人間が信じられず、次の生では新天地で独りになることを望んだ男は他人を信じる心を取り戻しそして1人の父親になるのだ───。
ここだけ見たら普通に良い話になりそうな素材である。最後はヒロインとの共同作業や子供に「健やかたれ」と願いを託す。村長夫妻と愉快な仲間たちの構図になるところで原作を見事に切り抜き、まともな作品として偽装しきったのだ!Хорошо!
願望の形
その性質上原作とは切り離せないアニメであるので、少し考えてみようと思う。
創作とは作者の願望の発散の形態であると仮定する。それが全てではないが、各種の描写が作者の何らかの欲望を反映した形態を取ることは主張として成立するはずだ。
次に、好きの反対は無関心という言葉があるように、描写が多いところは作者の欲望を反映した部分であると仮定してみよう。どうでも良いところは深く描写しないはずだし、関心の向いている部分は好きであれ嫌いであれ何かの感情・欲望との結びつきがあるという考えだ。
作物については多少の興味はあるがTKOの番組を見る以上の興味はないようだ。異世界特有の種とか、品種改良とか、育てる際の工夫とかはかなりどうでもよさげである。
女性キャラについても興味は薄い。いや興味あるならもっと細かく描写するでしょ、とりあえずで勝手にはえてきた女とパコらないって。行為に至るところまでが一番大事なのだ。それを軽視して無いと"ああ"はならない。あくまで欲望の主眼にあるのは一日十発を支える頑健な肉体の方にあるのだろう。それを示すには「いっぱいヤった!」で十分なのだ。くたばれ。
実際、健康な肉体・営みへの興味は一貫して存在している。他の例だと登場人物はみんなお酒が大好きだ。嫌いな人物はおらず、とにかく飲みまくる。お酒の話だけは定期的にされる。お酒が好きなだけ飲めるというのだって健康に関する話題といえる。
…つまり、
この作品は…
おっさんの欲望そのもの…!?自分の欲望を細分化できず生と健康へのリビドーを垂れ流している…?
書いてて悲しくなった。そんな架空の作者もそれに共感する読者も実在しない。異世界のんびり農家は創世記もビックリの産めよ増やせよ地に満ちよ作品です!栄光あれ!
追記:原作者はエロげのシナリオライターをやってたらしい。幸福の○学みたいな全文改行もテキスト表示と思えば筋が通る。だが女性の造形に興味なさすぎじゃない?興味ないならないであの爛れた王国は作んなよな、仕事で何学んだんだオマエ
まとめ
原作…ゴミクズ(ー100)
アニメ制作…お疲れ様!(+120)
トータルで20点。次は原作選ぼう、なっ
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