もったいない不誠実さ 『THE BATMAN』レビュー
【概要】
監督:マット・リーヴス
脚本:マット・リーヴス ピーター・クレイグ
出演
ロバート・パティンソン(櫻井孝宏)
ゾーイ・クラヴィッツ(ファイルーズあい)
ポール・ダノ(石田彰)
ジェフリー・ライト(辻親八)
ジョン・タトゥーロ(千葉繁)
アンディ・サーキス(相沢まさき)
コリン・ファレル(金田明夫)
【あらすじ】
優しくもミステリアスな青年ブルース。
両親殺害の復讐を誓い、悪と敵対する存在“バットマン”になって2年が過ぎた。
ある日、権力者を標的とした連続殺人事件が発生。
犯人を名乗るリドラーは、犯行の際に必ず“なぞなぞ”を残していく。
警察や世界一の名探偵でもあるブルースを挑発する史上最狂の知能犯リドラーが残した最後のメッセージは―――
「次の犠牲者はバットマン」。
社会や人間が隠してきた嘘を暴き、世界を恐怖に陥れるリドラーを前に、
ブルースの良心は狂気に変貌していく」。
リドラーが犯行を繰り返す目的とはいったい―――?
(公式HPより引用)
【見る前の気持ち】
『JOKER』の続編かのような宣伝に興味を惹かれて見てきました。
まあ、続編でもなんでもなかったっていうね。
【登場人物】
ブルース・ウェイン/バットマン(ロバート・パティンソン)
バットマン歴2年。億万長者の社交界の名士。30歳。殺された親の復讐をしたい。覗きにストーカーと犯罪すれすれ。
アルフレッド・ペニーワース(アンディ・サーキス)
ウェイン家に仕えている執事。大体何でもできる。
セリーナ・カイル/キャットウーマン(ゾーイ・クラヴィッツ)
行方不明の友人を探している。ライダースーツで華奢でナイスバディでベリーショートで褐色。属性過多。
リドラー(石田彰)
本作のヴィラン。
ジェームズ・ゴードン警部補(ジェフリー・ライト)
ゴッサム市警察の刑事でバットマンの相棒。市警でほぼ唯一のまともな警官。
カーマイン・ファルコーネ(ジョン・タトゥーロ)
ゴッサムの犯罪王。
オズワルド・コブルポット/ペンギン(コリン・ファレル)
ファルコーネの右腕で、ナイトクラブ「アイスバーグ・ラウンジ」の支配人。萌える。
〈注意〉
若干のネタバレを含みます!
個人の感想です!
【よかった点】
① セリーナ・カイル(ゾーイ・クラヴィッツ)がかわいい
なんかもう個人的好みの属性を全部詰め込んだかのようなキャラ造形。大好き。
② ペンギン(コリン・ファレル)とかいう癒し
太ったおじさんなんだが…もう見ていてかわいい。ちょっとでも登場すると嬉しくなる。暗い展開が続く本作における貴重なコミカル&癒しキャラ。バットマンに執拗に追跡されるシーンとかかわいそうになってくる。次回作以降もレギュラーで出てきてほしい。
【悪かった点】
① 説明不足
ブルースの生い立ちとか、バットマンとゴードンの関係とか、「バットマンの基礎知識」的な説明はほとんど無し。ゴードンの名前もしばらく出てこないし。まあ、なんども映画化されてるし、「JOKER」も見た人も多いだろうけど。初めてバットマン作品を見る人に対する誠実さに疑問が残る。
② アクションシーンが微妙
本作はサスペンス映画であってヒーロー映画ではない。そのためかアクションシーンは微妙。銃で撃たれてもスーツのおかげでほぼ無傷というだけで、バットマンの強さを感じさせるシーンは皆無。最初のチンピラを執拗にパウンド食らわせるシーンが一番格好良かったかな。最終盤のアクションは特に面白みが無かった。
バットマンのアクションは、様々なギミックを活かすのが楽しみなんだけど、その点でも物足りなかった。
バットモービルも格好良いんだから、もっとばっちり見せてくれるようなシーンが欲しかった。
③ ヴィランが微妙
悪役に魅力を感じなかった。共感もできないし、社会の分断を描きたいのかもしれないが…。
④ 脚本が微妙
殺人とセットでなぞなぞが出されるが、これをバットマンが解くというよりもアルフレドが解いてくれるので、あまり爽快感がない。観客に考える時間を与えてくれるわけでもないし。
ブルースの父の秘密に関しても、ファルコーネに教えられてそれを信じて、アルフレドを問い詰めて、今度はそっちを信じて…。人に聞くだけじゃなくて、なんか父の手記を探すとかあっても良かったのでは?
セリーナ・カイルの掘り下げも微妙。友達を探すのは分かったけど、ついでに金を盗んでいたり「?」となるシーンが多い。「何にも知らないくせに!」とかいわれてもこっちも困る。そもそもセリーナがブルースに着替えを覗かれて、正体があっさりバレるあたり、もうちょっと何とかしてほしい。
⑤ 上映時間が長いし、ずっと画面が暗い
バットマン映画だから暗いのはもう仕方ないんだが、約3時間ほぼ真っ暗な画面を見させられるのは少しきつい。もうちょっとメリハリをつけてもらえるといい。
【まとめ】
バットマンはダークナイト(闇の騎士)であり、犯罪者にとっての恐怖の象徴として描かれることが多い。本作では「市民にとっての光」になろうと決意した。この点は賛否ありそうだけど、個人的には好き。ただ、あの格好で人命救助とかやっているのを見ると、ちょっと笑ってしまう。昼は慈善家のブルース・ウェイン、夜はクライムバスターのバットマンでいいじゃん…。
トータルでは、悪い作品ではないけど、特段面白いかというとそうでもないし…。うん、普通。
評価 ☆3(普通におもしろい)
【改善案】
2作品に分けましょう。
1作目でブルースの生い立ち、ゴードンとの関係構築、ゴッサムのヤバさの描写して、本シリーズの世界観を観客に伝えましょう。ファルコーネ周りの情報をばらまいて、引きを作って。そして2作目でリドラーとの話をやるとか。
その方がキャラクターの掘り下げもできるし。唐突にアルフレドが暗号を解いちゃったときは「ジェバンニかよ!」と突っ込みそうになりましたよ。もう2作くらいはシリーズで作るそうなので、丁寧に積み重ねていきましょう。
あと、やはり上映時間180分は現代の娯楽として優しくないです。2時間ずつの2作品にしましょうよ。『エンドゲーム』が許されたのはシリーズの集大成だったからです。
最後にこれだけ。広告で「JOKER」の衝撃は~とか言っといて作品のつながりはないし、公式HPのあらすじで「世界一の名探偵である」とか書いてあるけど作中にそんな描写は無いし、なんか宣伝が雑で不愉快。配給会社や広告代理店の仕事だとおもうけど、誠実にやってほしい。作品にも失礼だ。
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