「きみがくれた」スピンオフ『マーヤの思い出⑰』
「虹を見た日」
僕は雨が大好き。
しとしと雨も、ざぁざぁ雨も、雨が降るとワクワクするんだ。
それに雨が上がった後の空も好き。
急な大雨の後に見える青空は本当に綺麗でうれしくなる。
あの日も朝からどしゃ降りの大雨だった。
午後になって雨が止んで、僕は校庭へ出た。
雨に洗われた真っ青。
澄みきった大空の端から端まで、大きな虹が架かっていた。
怖いくらいに完璧で、信じられないくらい巨大な虹だった。
僕は屋上に向かって大声で叫んだ。
「霧島ーーー!!!」
「虹ーーーーっっっ!!!」
それから僕は急いで校舎に入って階段を駆け上がった。
1階から屋上まで、猛ダッシュでね!
霧島は屋上の入口の前の階段で寝ていた。
「霧島!起きて!!虹だよ!!」
あいつは飛び起きて僕の顔を見た。
“すごいよ!早く!!”
“ウソみたいな大きさだよ!!”
“あんなはっきりと色が分かれて見える虹初めてだよ!!”
あれは本当にすごかったな―――。
屋上から見上げると、下から見るのとは全然違った。
僕らの上には空しかなくて、どこまでもどこまでも真っ青に澄みきった大空に、校庭で見た時よりも、もっともっと壮大で、色鮮やかで、絵に描いたみたいに完璧な虹が、僕らの目の前にくっきりと映っていた。
僕たちはまるで夢を見てるような気持ちで、ずっと、ずっと…その虹が少しずつ薄くなっていくのを、二人でずっと見ていたんだ。
「虹は空からの贈り物なんだって」
「雨上がりの空はいいよね――‥」
僕は小さい頃から雨が大好きだった。
雨の日は縁側でばばちゃんと並んで座って、濡れた庭を眺めていた。
“雨はいいねぇ”
“まーちゃんも雨が好きかい”
“うん!ぼく、雨大好き!”
雨が降ると、その後に見える空が待ち遠しくなる。
長く降り続いた雨が上がると、晴れ渡る空のどこかに、虹を探した。
虹は偶然の奇跡。
あの日は霧島の誕生日だった。