【Myノマド#2 @ニューカレドニア】文明社会に生かされる自分
人生初の南半球・ニューカレドニアの地に降り立ったのは、夜の11時頃。「トントゥータ国際空港」は同国の田舎にあるためか、空港から1歩外に出ると暗闇が広がっていた。
事前に予約しておいたシャトルバスの乗り場に行くと「出発までしばらく時間がかかる」とのことだったので、先にSIMカードを買うことに。しかし、どこへ行っても売り場は見つからない。インフォメーションカウンターで聞くと、なんとその日の営業は終了してしまったらしい。
おかしい、聞いていた話と違う……。というのも、日本でネット検索をしたときに「トントゥータ空港のSIMカード販売店は夜中でも開いている」という記事を見たため、勝手に買えると思い込んでいた。ネットの情報を鵜呑みにした自分が馬鹿だった。
悩んでいても仕方がないので、SIMは翌日市内で買うと決心。しばらく空港で聞きなれないフランス語に浸っていると、シャトルバスの出発時間が来た。どうやらほかに乗客はいないようで、貸切状態。このとき、すでに日にちは変わっていた。
空港から離れるにつれ、空港から放たれる光がどんどん薄くなっていく。30秒も走ると、暗闇に包まれてしまった。着陸前に飛行機の窓から何も見えなかったことに、このとき納得できた。
空港を出てから40分近くは、ずっと暗黒の中を進んでいく。街灯もなく前を走る車のライトについていくだけだったので、どれくらいのスピードで走っているかも分からないでいた。
たまに道幅が少し広くなると、運転手はアクセルを踏んで前の車を追い越していく。「早く到着してほしいからありがたい」という気持ちと、「何となく前に車がいてほしい」という不安を抱えながら、やや荒さを感じる運転に揺られていた。
ぼーっと暗闇を見つめていると、ふと遠くに光が見えた。どうやら、街に近づいているらしい。どんどん道幅も広くなり、街灯も立ち並ぶようになる。人工の明かりに包まれたとき、妙に安堵した。そしてこのとき、「あ、自分は文明社会に生かされてきたんだ」と実感した。
しかし、その安心はすぐに再び不安へと戻った。宿泊予定のアパートに着いた(はず)なのだが、どの建物がそうでどこに入り口があるのか全く分からない。しかも、深夜とはいえ人の気配など一切なく、「本当に首都なの?ゴーストタウンじゃん……」と思ってしまうほどだった。
そんな僕を見かねて、仕事を終えたはずのシャトルバスの運転手が車を降りて宿探しを手伝ってくれた。
(後で実感したことなのだが、ここニューカレドニアの人はとてもやさしい。もし訪れる機会があったら、ぜひ現地の人との触れ合いも大切にしてみてほしい。)
街灯の光が妙に不気味な真夜中に、住所だけを手がかりに運転手と2人でアパートを探す。ホストにメッセージを送ろうと思ったが、いかんせんSIMカードがないため連絡が取れない。「自分は文明社会に生かされている」と短時間で2度も感じたのは、今回が初めてだった。
ゴーストタウンを徘徊していると、突然1台の車が駆け寄ってきて、僕と運転手を見ると止まった。「まさか強盗……?」と身構えたが、アパートのホストだった。まさか、深夜にチェックインの手続きをしにわざわざ来てくれるとは……。
不思議と、自然に口から「merci」が出た。
やっぱり、ニューカレドニアの人はやさしい。
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