広報の土台となるインナーコミュニケーション【研究機関の広報ひとりごと②】
こんにちは、みねこです。
以前公開した記事で、研究所の広報担当者がやるべきことは「研究所の、内側と外側、あらゆる人たちとの関係性づくり」「種をまく仕事」だと書きました。
この「あらゆる人たちとの関係性づくり」において、「内側(=同じ研究所や組織に属している人たち)」を含んでいるところが、個人的には一番重要!だと思っています。
私たち広報担当者が、色々なところに種まき活動をしていくためには、いかに同じ組織の人たちから情報を集められるかにかかっているからです。
広報担当者がまずやるべきことは「インナーコミュニケーション」
昨年、私は宣伝会議が主催する広報担当者養成講座(全10回)に参加しました。毎回、たくさんの気づきや学びを得ましたが、特にその中で目からウロコだったことがあります。
それは、質疑応答の中で、受講者から「広報の重要性は分かっているが、話を聞けば聞くほど、やらなければいけないことが多すぎて、何から始めればよいか分からない。一体何から取り組めばよいのか?」という質問が出たとき、講師らが「まずはインナーコミュニケーションから!」と回答していたこと。
それも異なる複数の講師が同じようなことを言っていたのです。
忘れられないのは、ある民間企業の広報部門のトップを努めていた方が、非常事態こそインナーコミュニケーションを大事にせよ、とレクチャーの中でお話されていたこと。このときの「非常事態」は、会社が不祥事を起こした際を想定しての発言でしたが、すごく印象に残っています。
非常事態に限らず、小さなコミュニケーションギャップを放置していたら、組織全体の大きな問題につながる…というのは、どの組織にも当てはまる話ではないでしょうか。
私たちは、まさに最近、コロナ禍を通じてコミュニケーションのあり方や仕事のやり方がガラリと変わったことを、経験したばかりです。
今でこそウィズコロナの新しい生活様式が浸透しましたが、人の往来が完全に途絶え、先行きの見えなくなった、この約3年間。これを契機に社員とのコミュニケーション向上に注力したという企業の取り組みをたくさん目にしましたが、それはもっともな方策だと思いました。
組織内でコミュニケーションのギャップを埋め、土台固めをしておくこと
そうすると、組織に以下のような変化をもたらすことができると考えています。
1.組織内の風通しがよくなる
↓
2.広報担当者/広報部門に情報が集まってくる
↓
3.組織の課題が見えてくる
まずは、組織内の人たちに広報担当者を信頼してもらうこと。その次の段階で、いかに情報収集や種まきの面で協力してもらえるか。
それが、広報担当者がまず取り組むべき土台固めだと私は思うのです。
インナーコミュニケーションで、組織内の風通しが変わる
広報担当者が行う組織内での情報収集とは、単に「組織のアピールとなる新しい成果を発掘すること」だけではなく、コミュニケーションを活発化させることで組織内の風通しをよくすること、だと私は捉えています。
そうすることで、広報担当者/広報部門に様々なルートから様々な情報が入ってくるようになる。その中から組織の抱える課題が見えてくる。組織の課題を見つけることこそが、広報担当者の役割なのだ。
これが、インナーコミュニケーションが一番大事!!と、広報に携わる方々が口を揃えておっしゃることの本質だと理解しています。
リサーチ・アドミニストレーターである私が、研究者たちとの対話から得られるもの
私が考える、研究所におけるインナーコミュニケーションの役割。
研究活動のための制度づくり、環境づくりにも時間がかかります。
研究者たちが、今、どのような研究をしているのか。どのようなところで苦労しているのか。これからどのように成果をまとめていくのか。これからどのような研究を計画しようとしているのか。
「こういう成果が出ました」「論文がジャーナルに掲載されました」と教えてもらうことも嬉しいのですが、私はむしろ過程の部分の話を聞きたい。
その分野や地域で、どのような研究のトレンドが見られるのか。より大きな研究成果を生み出すために、どのような制度やルールがあれば研究者の助けとなるのか。それらが、私にとって解決すべき組織の課題。広報担当者として、研究活動をもっと大きく長期的な視点で見るようにしています。
あとは何より、研究所からお知らせ1本出すときにも、「過程」の話を知っているものの方が、多くの人に届かせられるPR文を考えられますよね。
ちなみに、私が個人的に一番よく探している研究者との話のネタは、その研究や調査から何か”副産物”が出てこないか。そういったものは、少しカジュアルなコラム企画に持っていったり、動画にしたり、サイドコンテンツとして活用できる機会が意外に多くあるのです。メインとなる研究成果をより多くの人に知ってもらうきっかけにもなり得ます。
研究を余すところなく、様々な切り口から紹介することは、私の得意分野。
研究所に入ってから今まで、どんなに忙しくても研究者と雑談する時間、色々なやり方でコミュニケーションをとる機会はできる限り大事にしたいな、と思っています。
研究者が「なるほど、そういう切り口で研究を紹介することもできるのか」「その企画、面白そう!」と話にのってくれたら、しめたもの。
他愛のない日常会話の中で、どうやって目の前の研究成果を、あるいは研究者を打ち出そうかと、あれこれ妄想するのが一番楽しかったりします。
※本記事に書かれていること、このnoteで発信していることは、全て個人の見解に基づくものです。いずれも所属機関の公式見解とは関係ありませんので、どうかご了承ください。