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専業botterのリアル
こんにちは皆さん。Hohetoです。
2024年はビットコインは大躍進。現在価格は10万ドル前後を推移しており、大変活況の相場となっておりますが、いかがお過ごしでしょうか。
最近はアウトプットの場をYouTubeに移していたので、noteを書くのは久しぶりです。
本記事は「仮想通貨botter Advent Calendar 2024」の13日目の記事としてお届けします。
このアドベントカレンダーも4年目を迎え、多くの方に素晴らしい記事を書いていただいてます。
さて、最近のbotterたちの戦場のトレンドは中央集権型取引所(CEX)から非中央集権型取引所(DEX)へと移り変わっていると感じます。実際、Advent Calendarに投稿される記事の内容を見ても明らかでしょう。
そんな中、botter老人会代表である筆者はこのような収益機会に目もくれず、相変わらず値動きやボラティリティなどの予測モデルを元に戦略作りを行い、CEXで日々消耗しているのでした。
時代に取り残されてしまった筆者ですが、皆さんにとって一番有益な情報は何だろうか?と考えました。
そこで、本記事ではこれまでとガラリと趣向を変え、「専業botterの実情」について書いてみたいと思います。
botterつながりの中で兼業→専業へのジョブチェンジをしている方を何名か知っていますが、そう多くはありません。
現在副業的にbotter活動をしている方の中には、ゆくゆくは十分なお金を稼いで専業化したり、あるいは経済的に独立して自由に暮らしたい、いわゆるFIREを目指す人もおられるのではないでしょうか?
ということで本記事では、専業botterとしてすでに6年(!)経過している筆者自身を題材に、できる限りリアルな専業botterの生活の実情を紹介します。
レンチアタックを避けるため、一部をぼかして記述している箇所があります。その点はご容赦ください。
1)専業になるまでの経緯、専業になったときの状況
まずは、筆者が専業botterにジョブチェンジした際の状況についてお話しようと思います。
1-1)専業になるまでの経緯
ここは長くなりますので、箇条書きで簡潔にまとめます。
理系大学院を卒業後、IT系エンジニアとして就職。
20代後半でIT系事業会社を友人と設立。
その数年後、事業が軌道に乗ったので、その法人とは別に資産管理のためのマイクロ法人を設立。
さらに数年後、資産運用を本格化するためUKIをマイクロ法人に引き込んで、日本株の運用開始。
さらに数年後、運用が軌道に乗ったので、事業会社を共同創業した友人に任せて徐々に専業化(これが2018~2019年の話)。筆者は主に暗号資産での運用を担当。
こうして見ると「しっかりと準備をして専業になった」ように見えますが、当時の筆者としては「やるべきことを一生懸命やっていたら結果的にうまくいっただけ」という印象です。
事業を営む以上、将来の不安定さは常に付きまといます。そのため、当時から先手先手を打っていこうという意識はありました。
資産運用のためのマイクロ法人を設立したのも、事業が途中で頓挫したときの「方舟」を用意しておこうと考えたからです。事業がうまく回っている間に得た収益を使って、別の収益の柱を作りたかったのです。
1-2)専業化に踏み切った理由
結果的に筆者は事業から離れ、このマイクロ法人を使って専業化に踏み切りました。主な理由は以下の2つです。
① ワーク・ライフバランスを見直すため
月並みな理由ですが、1つ目はこれです。専業になる前の筆者は自他共に認めるワーカホリックで、休みは週に一度あるかないか。繁忙期には月に500時間近く働いたこともありました。
家族との時間もほとんど持たず、生まれたばかりの娘と顔を合わせるのは週に一度だけ(筆者が早朝から出勤して深夜に帰って来るため)。
さすがにこの働き方をずっと続けていくのは無理があると考えていましたし、実際に最後のあたりで体を壊したりもしました。
ですので、どこかのタイミングで働き方は変えないといけないなと常に思っていました。
②組織運営の大変さ・非効率さ
人を集めて組織を運営しようとすると、人材採用・教育、評価制度の構築など、あらゆることに手間がかかります。当時はアルバイトやインターンまで含めると、40名~50名程度のそこそこの所帯でした。
人が集まると軋轢は必ず生まれます。そうこうしながら組織を拡大していくわけですが、もともと筆者は事業を「利益を上げるための手段」と考えるタイプでしたので、管理にリソースを費やすことが性に合いませんでした。
それに比べてマイクロ法人で行っていた運用はなんとラクなことか。面倒事を全てスキップして、やりたいこと(=利益を上げること)に集中できます。「人より金を動かすほうが楽。金は文句を言わないから」とはよく言ったものです。
運用損失が出るときももちろんありますが、それは事業だって同じです。むしろ運用の場合は収益が利益に直結しますが、事業側ではどんなに立派な売上が立っていても原価・人件費・固定費を支払って純利益を残すのは大変です。
こうして筆者は「社会的繋がりを生贄に引きこもり生活を召喚!」したのでした。
1-3)専業になったときの収益状況
専業を目指す方が最も気にされるのはここではないでしょうか。
筆者が専業になると決めた当時、流動性のある資産は約8000万円程度だったと記憶しています。前節でご説明した通り、筆者の運用資金の種銭は事業で作ったものです。それを元手にしてUKIが運用で殖やしました。
また、UKIの作った日本株のシステムからは、月あたり数百万円程度(バラツキがありました)の収益がありました。当時の収益の様子はUKIが細かくブログに記録していますので、気になる方は御覧ください。
重要なことですが、UKIの運用方法は短期間のロング&ショート主体でしたので、市況に左右されません。バラツキはあれど、基本的に毎月の収益期待値はプラスです。
もしもこれが長期保有の運用スタイルで「市況が悪ければ数年間ドローダウンを被る」みたいな性質を持っていたら、専業化は躊躇したでしょう。
この収益の量と性質、そして資産額を元に「専業化しても筆者とUKI(両方世帯持ち)がすぐに困窮することはないだろう」と考えたわけです。
2)専業になってからの生活の実態
2-1)ガラリと変化した生活
専業化は段階的に行いました。最初は週2回だけ元の会社に出社、その後は週1回だけ出社、というように徐々に減らしていきました。最終的に、半年以上かけて完全に離れることに成功しました。
これまでは起きている時間の大半は会社で過ごしていましたが、逆に起きている時間の大半は家で過ごすようになりました。
仕事から帰って寝るだけだった筆者の部屋にL字型の作業机をぶち込んで、ディスプレイ3台を並べて作業部屋兼寝室にしました。とても狭くなりましたが、それもまた良いです。
2-2)専業生活の良い点
①身体的な自由
社会的な拘束がほぼ全てなくなり、とにかく自由になりました。筆者の場合、娘に合わせて早寝をして、代わりに朝早く起きて自分の時間を確保する朝型の生活に切り替えました。そして健康のために運動を習慣づけました(STEPNが流行ったとき、この習慣が役立ちました)。
朝早く起きてジョギングやウォーキングをした後、家族を起こして一緒に朝食を食べ、娘を見送ってからは自室にこもって好きなだけ勉強したりbotを作ったりツイートしたり…(筆者のXアカウントは当時から運用しています)と、自由な専業生活を満喫しています。
あ〜今日もムッスメと遊びに行って、帰ったら昼寝しよっと
— Hoheto (@i_love_profit) April 3, 2022
で起きたらエルデンリング
これが正しい専業botterの姿
とはいえ、運用損失が続けばこの生活が終わってしまいますので、運用戦略の検討は全力で行います。
爆損をかますこともありますが死なない程度の量にコントロールはできており、楽観的な性格も相まって病まずにこの生活を続けています。
②時間的な自由
筆者はとにかく混雑が嫌いです。貴重な時間を待ち時間に使いたくないのです。この点において専業生活は最高です。都内は土日祝日は基本的にどこも混雑していますが、平日だとその問題がほぼなくなります。
旅行も平日中心の日程であれば飛行機代もホテル代も安いですし、観光地の混雑も比較的少なく、とても快適です。
筆者はもともと地方民で大型連休には帰省をしていましたが、これもずらして空いている平日に帰るようになりました。
一方、普段のbot開発などの作業は時間の制限がない分、だらだらと進めがちです。そうならないように、集中力持続&生産性アップのための方法を常に模索しています。
以下は、Google Calendarで管理をしている筆者の時間割の一例です(内容をぼかしてますが大したことない内容です)。
筆者は「時間割はタスク管理方法の中で最も強力なもの」と考えており力説したいのですが、それだけで記事が一本書けそうなのでこの程度にとどめておきます。
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専業botterは作業時間とそうでない時間とのメリハリがついてよいと思います。逆に「専業トレーダー」の方は、常に市況に気を配る必要がありますし、時間が不規則になりがちなので大変だと思いました。
2-3)専業生活の悪い点
①社会との接点がなくなった
筆者の場合、この変化は特に顕著に現れています。
1日のうちリアルで会話をした相手が家族以外では一人もいない、という日はしょっちゅうあります(サービス業の接客を受ける際の多少の会話は除きます)。
筆者は元々人付き合いを必要としない性格なので、この状況で問題は感じていません。ですが、たまに美容室に行ったときに美容師さんとの会話にテンションが上りすぎてしまうなど、心の奥底では第三者とのコミュニケーションを渇望していると感じてしまう場面が少なからずあります。
筆者の場合、UKIが救いの存在です。彼は当然、筆者の生活の実態を全て把握しています。また、運用や市況についてはDiscordやオンラインミーティングで毎日のように話をしています。
おそらく筆者が今の状況を問題としないのは、家族とUKIの存在が大きいと思います。
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逆に、「家族を持たない方」が「自分の今の現状を包み隠さずに共有できる人がひとりもいない状況」で専業化してしまうと、人によってはこのコミュニケーション不足が致命的な問題になってしまう可能性があります。
専業になると、運用で成績が伸び悩むときも来るでしょう。そういうときに相談できる人がいなければ精神的に病んでしまうかもしれません。
これから専業化を考えている人は、数人の近しい人に対してはあらかじめ自分の状況を包み隠さず共有しておくのがよいと思います。
②自分の肩書をうまく説明出来ない
ワイの表の顔(下にいくほど仲のよい人)
— Hoheto (@i_love_profit) November 16, 2024
①完全リモートワークの引きこもりSE
②小規模システム開発会社の役員
③運用で生計を立ててる人
④暗号資産botter
マンション内での顔見知りとか美容師さんとかは①
パパ友的な人たちは②
大学とか前の会社の友人とかは③
④は家族と会計関連の人だけかも
社会との接点がなくなったとはいえ、たまには「界隈以外の人」と会う機会が出てきます。例えば、
昔の友人や同僚と久しぶりに会う
子どもつながりの付き合い(パパ友・ママ友・学校関係)
住居・地域つながりの付き合い(ご近所さんとか)
このようなとき「暗号資産をトレードしています」などとたわけたことを言ってはいけません。なるべく角が立たないようにする必要があります。
筆者の場合は「嘘は言ってないけど本当のことも言ってない」みたいな説明を何重にも重ねて、仲良し度合いが一段階アップするたびに一皮向いていく、みたいなやり方を取っています。
初回会って職業を聞かれた場合、「リモートワークの引きこもりSEです」と答えます。
実際にリモートワーク(家でいつも作業してて本店は別なので嘘ではない)ですし、引きこもり(本当)ですし、SE(実際、作業内容はこれに近い)です。
何度か会って筆者の時間の自由さ度合いが目につき始めた場合、「家族経営規模の小さい会社をやってます(事実そう)」、内容を詳しく聞かれたら「システム開発です(実態としてそう)」と答えます。
さらに仲良くなって「筆者の生活水準の高さ(滅茶苦茶な派手さはないが一般的な社会人にはかなり難しいくらいのレベル)と自由度の乖離をきちんと説明する必要が出てくるくらい」の距離感になった場合は、「昔、会社経営をしていた頃に稼いだお金を運用してます」、内容を突っ込まれたら「データ分析とプログラミングを使うようなやり方です(だから最初システム開発って言ったんですよ、の伏線回収)」と答えます。
全部実態としてそうなので、嘘は言っていないつもりです。
③パートナー探しに苦労するかも
筆者は既婚で専業化したので該当しませんが、重要なことなので触れておきます。
社会との接点が激減した状況でパートナー探しをしようとすると、必然的に知人からの紹介やマッチングアプリなどを利用することになるでしょう(botterはストリートでナンパとかできないはず…)。
するとやはり②の肩書問題が出てきます。
仲良くなればどこかのタイミングで本当のことを言う必要が出てきますが、とにかく「暗号資産」とか「専業botter」は胡散臭い。そもそも「個人投資家」ですら胡散臭い。かといって大きめの収益や資産で安心させようとすると、今度は「専業主婦になりたい人が集まってくる問題」が出てきます。「あなたが好きなのは僕じゃなくてお金でしょ」という問題です。
余談ですが、筆者の周辺の高収入な人たちは、「学生時代や新社会人時代などのお金を持っていなかったタイミングで付き合っていた人とヨリを戻して結婚した」割合がとても高いのですが、それはこの問題のためです。
3)専業化を考えている人へ
この章は、筆者の考えや感覚をベースにした話になりますので、唯一の正解というわけではありません。その点をご承知おきください。
3-1)資産と収益はどの程度必要か?
これは収益化の状況や、月々の生活費などに左右されるので本当に人それぞれだと思います。
例えば「郊外の1人暮らし」という状況であれば月次A級あれば当面は問題ないと考えられます(フリーランスの人と似たような水準)。
しかし「一家4人で配偶者は扶養内、かつ都心の一等地」であれば月次A級ではかなり厳しいと思います。
気をつけてほしいことが1つあります。それは「botは暗号資産の市況に応じて収益力がぐっと変わってくる」ということです。
筆者の感覚ですが、活況相場と閑散相場では収益力に10倍以上の差があると感じます。
現在のような活況相場で月次収益が数百万円というような場合、閑散相場に入ってしまうと月次収益が数十万円程度、あるいはそれ以下まで落ち込んでもおかしくありません。
また、暗号資産市場はこれからより効率化していき、収益機会が減っていくかもしれませんので、幅広い収益源があったほうがよいでしょう。
3-2)専業に向いている性格は?
完全に筆者の感覚ですが、以下のようなタイプが向いていると感じます。
研究肌。理論が好き、検証が好き、実験が好き。
個人主義。団体競技より個人競技が好き。1人ぼっちでも問題ない。
楽観主義。月次マイナスでもなんとかなる。
ゲーム好き。botはPvPなので…。
好奇心が強い。興味さえあれば「専業でヒマ」にはならない。
3-3)十分な収益がある場合、専業はオススメか?
あくまで筆者の意見ですが、正直、20代までの方にはあまりお勧めしません。筆者的には「いくら稼いだとしても、20代くらいまでは社会生活から得られるものの価値のほうが大きい」と思うからです。
また、上述のように「現在はパートナーがいないがゆくゆくは家庭を持ちたい」と考えておられる方は、理想を叶える難易度が上がる可能性があります。
養う家族がいる場合は専業化しにくいのでは?という方もおられるでしょうが、筆者的にはデメリット以上にメリットが大きくなると考えます。
養う家族がいればより真剣にbot制作に取り組むようになるでしょうし、時間の自由が利くというメリットは家族がいればその効力が数倍大きくなります。
家族の方が社会との接点を持っていれば本人も社会との繋がりが完全に切れることはありませんし、規則正しい生活にもつながります。
ですので、「家族持ちで現在ある程度の収益のある方」が専業化するのは筆者的には賛成です(うまくいく保証はできませんが…)。
3-4)専業になる前にやっておいたほうがいいこと
ここは簡潔にまとめますが、必要に応じてインターネットで調べれば似たような情報に行きつくでしょう。
社会的信用が必要なことは、あらかじめ済ませておくこと
住宅ローン
賃貸契約
クレジットカード作成、など。
法人を作っておくこと(次節)
3-5)法人化について
法人化の際は様々なTipsがあります。設立代行・登記場所・口座開設・売上や経費計上・税務や申告などですが、それらの詳細は必要に応じて他の記事を参照してください。
ここでは筆者の意見を中心に述べます。
将来的に専業化を目指すなら、なるべく早く(今すぐにでも)法人を作るべきでしょう。
現代の日本では、組織から離れると一瞬でアイデンティティや信用を失います。早めに株式会社を設立して、代表取締役の肩書と名刺を持っておきましょう。資本金も1円とかではなく100万円程度は入れておいたほうがよいです。筆者の法人は当初資本金100万円(だったかな?うろ覚え)で設立し、途中で増資して1000万円にしてあります。
また、少しでも構いませんので売上を立てて支払いを行うなど経済活動を行っておきましょう。
設立年月日は古ければ古いほどよいです。何かの手続きの際、数期分の決算書を要求されることもあります。
信用面のメリットに加え、大きいのが税制上のメリットですが、これも長くなるので他の記事を参照してください。
ここでは最も重要なことをお伝えします。
法人を作る最大のメリットは「選択肢を作れる」ことです。
法人化する(会社を設立する)ことは、「法律上の人格(法人格)を取得すること」ことに他なりません。そして法人格は権利・義務の主体となることができます。
これにより個人だけでは実現できない様々な選択肢を作ることができます。
「実態が伴っていること」を前提に話しますが、報酬を受け取るにも個人・法人で選択できますし、法人で受け取った後に個人に報酬を支払うことも可能です。ほとんど全ての契約の際、個人で契約するか法人で契約するかを選択することができます。
選択肢は、持っておけばそれだけでよいのです。選択肢がないと、交渉に弱く、変化に対して脆弱です。
例えば、今後も日本政府は税金や社会保険料(特に後者)において、滅茶苦茶な変更を強いてくるでしょう。それに対し、個人だけでは選択肢がないため脆弱なるのです。
本来は会社員の方たちも全員自分の法人を持っておくべきなのですが、事業の実態がないと大きな効果を享受できませんし、維持費用がかかります。
その点、bot制作は事業的側面を持っているため、法人化しない手はありません。
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終わりに
かなり長くなってしまいましたが、今回の記事ではbotそのものから少し離れて、botterの専業化に焦点を当ててお話ししました。
専業化を考えている人や興味をお持ちの方にとって、何かの参考になれば幸いです。
事業もbotも人生も、最も大切なことは「生き残ること」です。
ビットコインを巡る市況は現在はとても良いですが、今後も急激な変動は起こるでしょう。しっかりと生き延びて、来年のAdvent Calendarでも笑顔でお会いしましょう!
それではよきbotterライフを!