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西灣河電車廠---香港トラムは孤を描く
香港島を走る二階建てのトラムは、二階建てのバスと並んで香港の風景を形作るのに欠かせない存在である。地下鉄やバスと競合する区間も多いが、どんな人たちが利用しているのか。山道から西湾河車庫まで乗車してみる。
山道
トラムは香港島の北西から中環を通って北東へとつながる。一本線の往復なら分かりやすいのだが、路線図を見ると支線もあって、やや複雑である。行き先を確かめずに飛び乗ると、思わぬ場所に着いてしまう。
北西に位置する「山道」停車場から、東向きの「ハッピーバレー」行きに乗車する。
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6路線5運賃
交通局のページには、主要6路線と運賃が掲載されている。
大人、小人、高齢市民、4日間有効パス、1か月有効パスの5種類から成る運賃区分が、主要6路線の全てに一律に適用される。
トラムは現金およびオクトパスを受け入れる。乗客は後ろドアから乗車し、前ドアから降車する時に運賃を支払う。
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電停という様式
トラムの利点は、タクシーのような行き先交渉なしに、電停で待っていれば確実に乗せてもらえることである。それなら、バスにはバス停があるが、一つのバス停に何台ものバスが寄せてくる。
お目当てのバスが近づくのを見計らって、停車しそうな位置を見極めて乗客が移動する。バスに乗車するには、時としてリレーのバトンを受け取るような機敏さが求められる。
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トラムには、そんな慌ただしさは似つかわしくない。ただし、道路の真ん中に電停が浮いている場所もあり、歩道から電停までは車道を横断するしかないこともあって、トラム特有のリスクもある。
孤を描く
終点のハッピーバレー總駅は、香港賽馬會跑馬地馬場、すなわちハッピーバレー競馬場の南端にあたる。この停車場には、西行きと東行きの線路が、進行方向を同じくして左右に並ぶ。
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トラムは終点で向きを変えないため、代わりに競馬場の廻りで孤を半分ほど描いたところに、ハッピーバレー總駅がある。そのまま線路は残りの孤を描いたのち、海へ向かって北上し、西行きと東行きに分かれる。
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車庫行き
ハッピーバレー總駅で隣の線路に止まっていたのは、東向きの、車庫行きであった。
香港のトラムには、主要路線のほかに、車庫行きの路線もある。その一つ、ハッピーバレー発の、西湾河電車廠へ向かうトラムである。これに乗り換えて、さらに東へ向かう。
バスと荷車
トラムの軌道は、常に優先空間として空いているわけではない。バスが近づいてきて減速することもあれば、荷車が横断することもある。
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オープンエアー
旧式のトラムにはエアコンはなく、窓は開けっ放しである。香港の熱風が容赦なく入り込む。そこがエアコンの効いたバスとの違いであるが、最近はトラムにもエアコン車が登場している。
むしろ、バスとトラムの違いは、賑やかさである。安価なトラムは、お財布にやさしい安価な交通手段である。離れた席に座った仲間と、大きな声で会話する人もいて、バスや地下鉄よりも騒々しく活気がある。
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ウサギとカメ
どうやらトラムの役割は、お財布にやさしいことだけでなく、ざっくばらんな気風にあるようだ。少しでも速く着こうとするバスに比べると、トラムはのんびりと線路を走る。
線路に沿って着実に前進するから、クルマの渋滞を横目にスイスイ進むこともある。ウサギのような速さはないが、カメのような手堅さはある。
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効率性を追わない
時折、貸切り列車も走っている。走るPUBとして営業できるところも、軌道に特有の才能かもしれない。
効率化を追い求めるならば、バスの車線を拡げたほうがよいのかもしれない。だが、トラムには、効率だけでは説明できない感覚がある。
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オールド香港
トラムが廃止されないうちは、香港は昔の香りを残していられる。
トラムがなくなる時がやってくるならば、それは、オールド・香港が消える時を意味するのだろう。
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