ホラクラシーにおける戦略とは。自律型組織に推進力を生み出す秘訣。
こんにちは。RELATIONS代表の長谷川です。
今回は、ホラクラシー組織(自律分散型組織)における、戦略の考え方について綴ってみます。
一般的な戦略の概念とはだいぶ異なるので、驚かれる方もいらっしゃるかもしれません。自律分散型組織に興味がある方や、全社戦略の立て方に悩んでいる方へのヒントになれば幸いです。
戦略の起源と、一般的な経営戦略
戦略という言葉は、企業経営においては非常に馴染み深い言葉だと思いますが、その起源をご存知でしょうか。
元々戦略とはギリシア語 のstratēgosから派生した単語で、「将軍の術」と訳されます。18世紀末頃から広く使われるようになり、戦いに勝つための大局的な方法や策略のことを指したそうです。
現代辞書では「ある目的を達成するために大局的に事を運ぶ方策」という記載がされているのですが、経営文脈においてはこの表現のほうがよりしっくりと来るように感じますね。
では、「経営戦略の策定プロセス」についてはどうでしょうか?一般的には、以下の流れに近いものを想定される方が多いのではないでしょうか。
多様な情報を用いた分析により、基本的には予測可能なものとして戦略を捉えている傾向があるかと思います。
ホラクラシーにおける戦略の考え方
一方で、ホラクラシーにおける戦略は、「未来は予測可能である」ということを手放すことから始めていきます。
天気を例に取ってみましょう。
技術が進歩してきた今でも、天気予報は大きズレることも多いですし、1ヶ月後の天気など結構外れることがありますよね。
ホラクラシーでは、組織や社会の変化も、自然現象と同様に、現象学的な複雑系として認知しているのです。
この認知の前提に立つと、未来を予測することに膨大な時間を使うよりは、目の前で起きている現象を捉え、絶えずフィードバックを得ながら方向修正していくことを重視します。
まるでロードバイクでロングライドするときのように。
目的地となる場所は大枠で定めつつ、天候や道の状態など環境の変化に応じて、都度サドルやハンドルを柔軟に調整しながら、自分にとって最高な最終地点を探っていくイメージです。
刻々と変わる現実に絶えず身を委ね、自分が持つ「今この瞬間に感知し対応する能力」を信頼することによりコントロールは高まると考えています。
ホラクラシーの本から戦略の定義を抜粋すると、下記のように記載されています。
社会一般的に使われる戦略の概念からすると、疑問が沢山浮かぶのではないかと思います。
これは、ロードバイクを降りて少し小高い丘へ行き、自分が行きたい目的地を確認し、そして「北へ向かおう」という指針を立てることに近いです。自転車に乗っていると急な曲がり角や分岐点が出てきますが、コンパスで北という指針があると迷うことなく選択が可能になります。
ホラクラシーにおける戦略の示し方としては、重要な要素を並べて「Xよりも、さらにYを重視せよ」という形式で表現することが推奨されています。社員が最優先事項を判断しやすくするため、XもYもどちらも、組織にとって重要なものを置くのが良いとされています。
一例ですが、弊社の広報サークルで掲げている戦略は、下記のように記載しています。
この戦略の設定をすると、自律分散型の組織であっても、一人ひとりが意思決定で迷うことは少なくなり、全体の方向性が自ずと揃っていきます。
RELATIONSの戦略策定プロセス
会社の指針となるその戦略は、一体どのように決めているのか?ということにも少し触れたいと思います。
RELATIONSでは、戦略策定のミーティングを、おおよそ半年に一度、4~5時間程度取って開催しています。
そこでは、通常の業務から一度離れ、広い視野に立ち、目の前の状況と全体的な地形(会社と、それを取り巻いている環境)を眺めます。
そうすることで、大枠の方向は見いだすことができます。そこで体験した眺めを、覚えやすい指針に落とし込むという考え方です。
会議自体の進め方としてはこんな感じです。
ホラクラシーという組織形態においては、ロールに権限が分散されているため、個々の動きが強まり、組織としての推進力が生まれ難くなることがあります。
しかし、判断軸が分かりやすい戦略を設定することで、組織の本来の目的に立ち返り、分散と統合がうまく進んでいるように思います。
個人的には、未来予測も大切ですが、過度に時間をかけすぎないのも、今の世の中の流れとも合致しているように感じています。
今日はこんなところで。
ええ一日にしていきましょう。