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今月の1枚 May, 2021~巻き込まれ~
先輩と写真を撮りに出かけるため、私は最寄り駅へと自転車で向かっていた。
梅雨なのか梅雨じゃないのか、春なのか夏なのか、そんな天気予報が当たりにくい季節のお出かけは、1年で1番服装に迷う。
その日は、まだ履いたことのないレースのプリーツロングスカートに、白の長袖リブTシャツ、首元は伊勢で出会った真珠のネックレス、足元はニューバランスのスニーカーを選んだ。
曇り空につられて気分までもが重くならないよう、全体的に軽やかな色合いを意識した。
心躍る格好をして、駅まで自転車で向かう途中。
異変に気づいた。
思うように自転車が漕げないのだ。足回りに違和感がある。
うわ〜これはやらかした。
スカートがタイヤに巻き込まれたと察するのに時間はかからなかった。
ひとまず自転車からおりるものの、タイヤのチェーンからスカートが離れないので身動きもとれず。
見てみると複雑に絡まっていた。スカートを引っ張ってみるもすぐに外れるわけはなく、その場から動けずに立ち往生。
どうしよう。
周りの目も気になる。
ほどなく背後から通りすがりの方の声が聞こえた。小さな娘さんを連れたご夫婦だった。
奥さん:私もよくなるんですよ〜。タイヤを後ろ向きに回せば直りませんか?
先に声をかけてくださったのは奥様。
一目見てすぐに、穏やかなお人柄が伝わってきた。
そのお声かけだけで、私は本当にほっとした。
“一人じゃないということが、こんなにも心強いことだとは”と再認識したのだ。ありがたい。
旦那さんもチェーンに絡まったスカートを外そうと奮闘してくださった。
チェーンを外すことができれば、おそらくスカートもほどけるとのこと。しかし、絡まってしまったがゆえ、チェーンには緩められるほどの遊びが残されていなかった。
私:つまり…?(笑)
旦那さん:つまり、どうしましょう(笑)
ピンチなはずなのに笑えたのは、優しいご夫婦と娘さんのなせる業だ。
ご家族でお昼ごはんの材料を求めてスーパーへ行く道中だったようで、お腹もすいていただろうに
奥さん:全然急いでないので大丈夫ですよ~
お優しい。嬉しい。
そしてそこに、さらなる救いの神が。
?:大丈夫ですか
私:スカートが絡まってしまったんです…!!
?:一応自転車屋なので、見せてもらってもいいですか
私:!?
自転車でのトラブル中に自転車屋さんが通りかかるという奇跡。
私:お願いします…!ありがとうございます…!
見てもらうと、ドライバーなどの工具があれば直せそうとのこと。
当然ながら工具を持ち歩いているわけもなく。
家に戻ればあるけれど、私が動くにはスカートを切り離さないといけない。
うーん…。
奥さん:あそこのお店に行けば貸してもらえないかな
旦那さん:ちょっと行ってくるわ。
私:!!
本当にありがとうございます!
私が動けないから…
同時に自転車屋さんも、別のお店に工具を借りられないかと打診してくださいました。なんてスピーディなの…
そんな通りすがりの方々の優しさのおかげで、無事に工具を入手。貸してくださったお店の方もありがとう。
鮮やかな手つきで自転車の固定具をはずし、スカートをほどいてくださった自転車屋さん。
すごっ…。
自転車屋さん:すみません。ナットが少し潰れてしまいました。
いやいやいや。
そんなの全然かまわないです。
本当にありがとうございます。
こうして、通りすがりの方々の優しさのおかげで、一人寂しく途方に暮れることもなく、無事にピンチを脱することができました。
ありがとうございます。
スカートが汚れた&破れたくらい、本当になんてことない。
そんなことどうでもよくなるくらいの、人の温かさに触れることができたから。
私:どこの自転車屋さんですか…!今度お礼を…!
自転車屋さん:この辺のです(笑)
はうっ…!なんてできた人なんだ…!
自転車屋さん:この道で女子高生の巻き込まれスカート、3回くらいほどいたことあるんで、全然大丈夫ですよ(笑)
お兄さん、何者じゃ(笑)
お兄さんの優しさに助けられた人がすでに3人も…。すごいなあ。素敵だなあ。
奥さん:じゃあ私たちはこれで~。気をつけてくださいね~。(手を振りながら)
キュンとしました。
私もあんな風に、困っている人に当たり前のように手を差し伸べられ、相手の立場を思いやれる人でありたい。
私:声かけてくださって救われました!ありがとうございました!(手を振りながら)
ご家族にも、お礼がしたかったな。
娘さんにも。
優しい両親が見知らぬ人(=私)のために立ち止まってくれたから、スーパーに行くの遅くなっちゃったね。
食べたいって言ってたブタメン、買ってもらえるといいね。
困っていた私のところにやってきて、手を差し伸べ、解決したら、なにごともなかったかのように去って行く。
そんな格好いい姿に、私は憧れました。
きっと、皆さんこのあたりに住んでらっしゃる。
いつかどこかでもう一度会えたら、何かお礼ができるといいな。
ご家族には、抵抗がなければ、家族写真を撮らせてもらってプレゼントしよう。私が提供できるもの(かつ私がやりたいこと)の1つだ。
自転車屋さんは、きっと見つけ出して、ご贔屓にさせてもらおう。
以上。
自転車に巻き込まれたスカートを履いた私、
に巻き込まれたご家族と自転車屋さん
とのエピソードでした。
道端にどんな出会いが転がっているか分からない。だから人生は楽しい。
そう思えることに感謝感謝。
来月もどんな出会いがあるか楽しみです✨