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セルフイメージとお金。

昔「マネーの虎」という番組がありました。

番組の内容は出資者たちに志願者がプレゼンを行い、プレゼン内容が良ければ目の前で出資者が札束を積んでいくという内容の番組です。

その代わり、この出資者のプレゼンが穴だらけだとボロクソに言われるわけです。

ひきこもり時代(だいたい17歳から23歳までの期間)、この番組が私はとにかく怖かったのです。

今なら番組の演出やヤラセというものが理解できるのですが、当時の私はピュアボーイだったので、全てを真に受けていました。

仕事というもの、社会というものが私は解っていませんでした。だから仕事をしていたら立ち直れなくなるぐらいに罵倒されるのは当たり前だと思っていました。

社会は厳しい、仕事は辛いという世界が私の中で出来上がっていたので、この番組が怖くて見ていられませんでした。


DVDを選ぶのも真剣そのもの

当時私は通信制の高校に週に2日ほど通っていました。

その帰り道に大人のセルDVD屋に立ち寄ることがありました。

そのときの心理としては、無職の私がお金を使うことに大きな罪悪感がありました。しかし湧き上がる衝動は抑えられず、数ヶ月に一度決死の覚悟で大人のセルDVDを買いに行くのでした。

大通り沿いにあったセルDVD屋さんでした。通りに車がいなくなるのを見計らって店内に飛び込むと、真剣な面持ちの男たちがDVDを吟味しているのです。

私はマナーとして彼等をジロジロ見ないようにしようと心がけながら、DVDの吟味に没頭することにしました。

価格が1本3000円前後。そして中古の安いもので1000円弱。私にはこれらは大金でした。

しゃがみ込んで息を殺して吟味を続けていきます。まさに真剣勝負です。

お金を使うことが怖いのに衝動に負けてしまう。男はなんと滑稽な生き物なのでしょう。この衝動が無くなればどれだけ人生が楽になるかと何度思ったことか・・。衝動はそれだけコントロールが効かなくなるぐらいに強いということです。

真剣勝負は2時間続きました。

入店時にいたお客は皆いなくなり、次に来たお客さん達も皆いなくなり、気づくとお客は私だけになっていました。

そしてあれだけ吟味を繰り返したにも関わらず、何も買わないままに退店するのでした。成果なし。しかし私は衝動に理性が勝ったと思っているので、そんな自分に誇らしさと安堵を感じながら帰宅の途につくのでした。

パートの仕事に就く

26歳になって、やっと私は働き始めることができるようになりました。

それはパートの仕事で労働条件は月〜金で10時から16時。交通費なし。契約期間は4ヶ月。障害者の就労施設の作業を補助する仕事でした。

手取りは確か10万弱だったはずです。

毎朝電車に乗って、駅からは自転車に乗って作業所に向かいました。作業所に向かう途中には、同じように多くのスーツを着た会社員の方達が自転車に乗っています。スーツを着ている人たちが私には輝いて見えました。

一方で毛玉だらけのダッフルコートを着た社会経験の無い私はとても頼りなく思えて惨めな気分になっていました。

なぜ私を採用したのか?

初日のこと。私と体格の変わらない利用者の男性が号泣していました。

「あなたに仕事です。彼を止めてください!」

作業所のリーダー的な男性が指差す先には、その泣き叫ぶ男性がいました。

彼は泣き始めると職員に襲いかかるのですが、新入りの私のことを職員という認識がなかったので、彼を止めるには私が適任だったのです。

朝からお昼まで私は彼ともみ合うことになりました。

相撲のようにがっぷり四つの姿勢をとり続け、彼が泣き叫びながら押してくると、押し返して壁際まで彼を追いやります。それが数時間にわたってずっと続きました。

ばきっ!ばきっ!

押し返したときに私の足が壁に当たって、そのまま打ち抜いてしまいました。初日に私は作業所の壁に大穴を空けてしまったのです。


仕事にも慣れて数ヶ月経ったときに、「あなたに仕事です・・」と言ってきたリーダーに質問をしてみました。

求人に対して応募者は私ともう1人いたそうです。しかし私が採用されたわけですが、なぜ私を採用したのかが気になっていたからです。

私「あの・・・なんで僕を採用したんですか?」

リーダー「う〜〜ん・・・それはあなたの人柄です!!」

そっか〜人柄か〜!!俺ってひきこもりだけど、人柄は良いもんな!と内心天にも昇るような気持ちになりました。

そっか〜人柄か〜。そっか、そっか・・・・。
しかし、普通に考えるとそんなものは嘘に決まっています。そりゃ〜20代の男性でこの給料で働く男性はまずいません。

そして求められる仕事は職員に襲いかかる利用者さんを押さえたり、急に走り出す利用者さんを追っかけて呼び止めるなど体力勝負がメインだからです。

結局私はこの仕事を契約期間満了で終わらせることになりました。

仕事っぷりによっては契約を継続すると言われていたのですが、私に対して同僚が陰で「あれはノリが悪い・・」と言っていたのも聞いていましたし、さほど未練もなかったのです。

仕事について思ったこと

非正規の職員を、その後私は7年ほど続けました。目の前の仕事を一生懸命にこなしていれば道は開けると思っていたのですが、雇われの身、そして非正規職員で給料が上がることはまず無いと思います。

条件を変えようと思ったら闘う土俵を変えるしかないのです。

ただし、目の前の仕事をきちんと能動的にこなしていき、周囲の同僚達と調和を保っていたら、声がかかってくる可能性もあります。

私は元同僚から2度ほど「うちの職場に来ませんか?」と声をかけて頂きました。

あとは挑戦することが重要です。それはセルフイメージを拡げるための挑戦で、苦手意識を克服してできることを増やしたり、得意分野を伸ばして同僚達から一目置かれるようになることを意味します。

セルフイメージとは自分の頭の中にある「自分とはこういうもの・・」という自己認識のことを言います。

ひきこもりを経験することで私のセルフイメージは地に落ちてしまいました。

負け犬根性と言うのか、人にできて自分にはできない期間が長かったせいで「俺には無理・・」と思うことが多かったのです。その認識を変えていくことに相当苦心しました。

セルフイメージを拡げることができたら、苦手意識や頭の中にある限界というものが拡がっていきます。すると、できることが増えていきます。挑戦にはそんなメリットがあるのです。

しかし、得意なことと苦手なことがあったら、得意分野を活かしていく方が良いとも思います。

私の経験から、苦手意識が得意に変わることは相当な時間と労力が必要になるからです。

私は電話に苦手意識があり、人付き合いが得意だと思っていません。昔よりかはだいぶマシにはなってきましたが、長い時間をかけた割には未だにこの2つは得意ではないのです。

それなら得意なことをさっさと見つけて、それを活かした方が早く成果が出ると思います。

そのために得意分野を見つける必要があり、得意分野を見つけるために色々と体験する必要があると思うのです。


ちなみに人間の欲望は発散しないと萎んでいくと思います。欲望は家から出ていく、社会で生きるエネルギーになるのです。

だからある程度欲望を発散させる必要があって、そのためにお金を程々に使った方が良いのです。つまり欲望も大事というお話でした。








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