振り返りの実践の参考になった ー 『駆け出しマネジャーの成長論 7つの挑戦課題を「科学」する』
同僚に『駆け出しマネジャーの成長論 7つの挑戦課題を「科学」する』という本を紹介いただいた
「マネージャーとはそもそも」的なマネージャー論はこれまでいろいろ読んできていて、この書籍は表紙がちょっと黄緑でポップそうだったのであまり読んでなかったのだが、中原淳さんの書籍はコレまでも幾つか読んできたこともあり安心感をもって手にとった。わかりやすい語り口調な上、注釈でしっかり学術的参考文献が記されるので、背景理論まで理解することが出来る物が多い。本書も例外ではない。本書の内容を私が読んで脳内で整理されたマインドマップは以下だった。
マネージャー論とあるが、これまでやってきたようなアジャイル開発におけるレトロスペクティブやチーム運営、テックリード的なリードとマネージャーの重なり合いについて言及されている。個人的に興味があったトピックについて備忘録的に書き連ねていく。
マネージャーとは
マネージャーとはについてもっとも有名なフレーズは Getting things done through others だ。他者を通じて物事を成し遂げることが Manager の役割であるという定義である。
また、マネージャーとリーダーは相互補完的であると主張しているのが Henry Mintzberg氏です。Good managers lead, good leaders manage と言う言葉が名言として有名だそうですが、いわゆるビジョンを掲げるというリーダーシップと、日々の細かなチェックとモニタリングの管理フェーズがあると整理しています。
直近半年に特に強い関心は、アジャイルチームの文化とか目指す目標について合意と納得感を持ったうえで、日々の仕事の中で洗練させていくというものだったが、両方あることはすでに実感していた。「ここを目指す」・「こういう考え方を取り入れていく」というプラクティスのネットワークを定義したとして、それが実態と合っていて歪が生まれていないかとか、メンタル的な問題・もやもやがうまれていないか、といったことについては頻繁にデータをモニタリングするようなレトロスペクティブや1on1の機会が必要になったりする。
日々の細かなチェックとモニタリングの管理というのは、マイクロマネジメントというよりかは、日々のチームの状態・健康状態がどうかということを見た上で、その歪の原因をチーム戦略や構造、はたまたコーチングなどを通して解決できないかを考えるといった物はあるよなっていう感想。
育成という挑戦的課題
マネージャーの挑戦的課題として幾つかある中で、とくに個人的に関心が高かったのは、「育成」と「目標咀嚼」だった。
振り返りの重要性とそのプロセスについて説明されているものがある。
出来事を語る:どんなことが起こったのか?どんな状況だったのか?
自分を語る:その時なにを考えていたのか?どんな感情だったのか?なにをしたのか?
本質への気づき:本当はなにが起きていたのか?何が良くて何が良くなかったのか?
選択肢の拡大:どんなやり方が他にあるか?次に行うときは?
振り返りの核心は、本質への気づきでありそれによる選択肢の拡大である。そして、その選択肢の拡大は個人の努力で変化させることが出来るものである「行動」に焦点を絞って行われるべきである。
NETFLIXでは、フィードバックの4AでもActionableというガイドラインがあり、フィードバックは行動を促すものであるべきだという考え方がある。
AIM TO ASSIST 相手のためを想って
ACTIONABLE 行動を促す
APPRECIATE 感謝
ACCEPT OR DISCARD 取捨選択
それを受けた相手がどのように行動を変えるべきかに焦点を当てるべきであり、ただ発言と行動の矛盾を指摘するだけではフィードバックとは言えないという内容である。振り返りが一つのフィードバックループを回す取り組みと考えると、しっかり点と点がつながってくる。
この考え方は、レトロスペクティブを行なう際の思考フレームワークとして重要だ。
『エンジニアの知的生産術 ―効率的に学び、整理し、アウトプットする』では学習サイクルについて語られているが、この本質への気付きや選択肢の拡大が抽象フェーズであり、試みが応用フェーズであると捉えられる。
なお、本書で紹介されているモデルは、ユトレヒト学派のリフレクションモデルである「ALACTモデル」というものらしい。
育成:「点」ではなく「面」
Co-workersからの助言・指導をふくめた関わりによる「点」ではなく「面」による育成というのは、まさにNETFLIXが率直な文化を作り優秀な人間が集まりお互いフィードバックを与え合うことで成長が加速するという考え方になってくる。あるいは職能横断型のアジャイル組織内で多様なCo-workerで協働するというというのもここに含まれる。Conversationを通じて業務知識を高めソフトウェア運用能力を高めていく。
最も関心があるのはここかもしれない。いわばひとりのMgrとそのチームに属する人たちの1-nコミュニケーションだけである必要がそもそもないのではと思っていて、たとえばメンバー同士のshuffle 1on1といったP2Pコミュニケーションで得られるもののほうが結果的に多いのではないか。
定期的な個人との1on1よりもCo-workerとの全員でのレトロスペクティブや、Co-worker同士のConversationではと。実際、現場では時々Shuffle 1on1を行っていて「ちょっと喋りたい人」と個別で会話する時間をとったりしているが、色々お互い考えていることがわかっていいと良い話があった。
方針に対する納得感
未来への納得感を得るためには、自分たちが対話し、その対話の内容が方針に反映され、自分たちが決めた感覚が重要。
現場では、四半期レベルや今後の計画を決めるにあたって、まずPdMが大枠を用意しそこに対して個々人がやっていきたいことを「野望」として決めるといったことを計画フェーズで試みられているが、これについて「対話空間」という概念整理をしていることを知り、語彙が広がった。
注釈では社会的構成主義という考え方が参考になる点を述べています。社会構成主義についての参考書籍として2冊紹介されていました。
次の本はkindleがあったのでいずれ読んでおくと面白そう。
プレーヤとのバランシング
本書ではプレーヤとのバランシングについて言及されている。一般的にプレイングマネージャーはアンチパターンとされ、いかに実務を移乗していくことが重要化について盛んに語られる。
しかし、本書では「完全マネージャー」は全体の2.7%という調査結果を紹介しており、マネージャーと言う役割にプレイヤとの二重化という状況を強いる現実について刻々と語っている。
個人的には現実はプレイングマネージャーがほとんどなんだとわかっただけでもその道を取りうるという組織設計の選択肢が拡大した。
「自分が何をやらない」のかについて定義してしまえば、プレイヤーとマネージャーの両立に至れるし、プレイヤー気質の強い役割とされる「テックリード」の肩書との矛盾性も「リーダーシップと特定分野のプレーである」という言語化すれば「他者を通じて物事成し遂げ、他者としての自分というプレーヤーを操る」という整理は合理的になりうるので、仮説としてもっていた内容に一つの実情を含めれたありがたみがあった。
(おしまい)
(「NETFLIXでは」と何度か文章に登場しているがNETFLIX社員ではない...)
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