神話受容史の宿題 現代のイアメディを描け
これが私のイアメディじゃい!!!!!!!!!
(古代ギリシャ知識がほとんどないまま書いています。ご容赦ください!!!)
男女逆転イアメディ
(イアソン→女性、メデイア→男性)
遠い東の国からドラゴンに乗ってきたメデイアに恋する王女、イアソン。
王位を持つ父が叔父に追放されていたのだが、メデイアが自分の弟をぶっ殺してまで叔父を殺してくれた。メロメロに。互いは惹かれ合い、金羊毛の上で初めてのロマンティックな夜を過ごした。
追手から逃れてギリシャまでやってきた二人は子を二人作るものの、その後二人の仲は険悪なものになっていった。イアソンは家で一人ぼっち(乳母などはいる)だったし、メデイアはギリシャでも馴染まず家にもほとんど帰らず、ずっと一人で魔術をやっていた。イアソンも社交できる友人が全くおらず、孤独であった。
あるときメデイアの名を聞いて訪ねてきた客(とうぜん男)と偶然話をしてしまったイアソン。手紙でやり取りをしながら仲良くなっていく二人。
男はイアソンに求婚をした。自分は前妻に死なれ子もいない。市民でないメデイアではなく自分と結婚した方が子どもたちの将来にとってもいいと思う。だって子どもたちはメデイアの魔術の才を特に受け継いでいないとあなたは言っていたし。
イアソンが返事をしかねていると、ある日王がやってきた。イアソンの文通相手は子を求めていた王だったのだ!
イアソンの裏切りを知ったメデイアは絶望する。(別に姦通などはしていない。文通していただけである)
怪しい魔術でイアソンを攫ってきたメデイアは国中の女を攫う可能性があるから国から追放すると王は言う。メデイアは地に付して懇願し一日だけ猶予を貰うも、イアソンの「魔術師ではない子どもたちにとって王の子になる方がいい」という台詞を聞いて激怒。
「お前のような恥知らずは見たことがない」と罵倒するが、イアソンは「じゃああなたは王のように子に地位を与えられるのか?」とメデイアを詰る。怒ったメデイアは贈り物に毒を盛り、王を殺すことにした。イアソン本人よりもイアソンが愛する男を殺した方が自分の気持ちを理解して深く傷付くだろうと思ったし、そのついでに自殺でもしてくれれば自分の溜飲も下がるだろうとメデイアは考えた。
あなたの言う通りにしようとしおらしく演技をし、子どもたちに裲襠と冠を持たせて王に挨拶へ向かわせた。戻ってきて一部始終を話す召使。メデイアは微笑んだ。
「人間など生まれない方がいい」
そう言って去っていく召使を見送って、メデイアは子どもたちを殺した。
生まれない方がいい。生きていかない方がいい。それが真実だと思うほどの深い絶望を味わったあとでは、最早子を生かしておく理由がなかった。メデイアは目の淵が広くなった二人の子を見て、心の底からにっこりと笑った。もうイアソンを殺す必要はなくなった。メデイアは心の底から喜んだ。
王の頭を燃やし、肉体を溶かす毒を盛ったメデイアを追求すべく家に戻ってきたイアソンは、竜の曳く車に乗ったメデイアが空にいたのを見る。なぜあんな無残なことをしたのか、子どもたちに向けられる誹謗中傷を考えはしなかったのかと詰った。
「人間など生まれない方がいい」
メデイアはそう言って、子どもたちの死を告げた。鳴き叫び返せと、弔わせろと崩れ落ちるイアソンにメデイアは全く応じない。亡骸とともに竜の車で去っていった。イアソンは自らが娘だった頃の過ちを思い、嘆き、最早遠い故郷を思い、投げられる石によって息絶えたのであった。
・はい。ということでね。書きました。イアメディを。(イアメディか?)
・藤村シシン講座『神話受容史』の最終回で出された課題「あなたはどう描くか」を受けて書きました。FGOでしかメデイアを知らなかったので、ちょっと思ったよりひどい殺し方してるんだ……と引きました。
・しかし21世紀に生きる女としては、メデイア=女とかイアソン=男とか、そんな思い込みに従ってやる義理はないし、従ってる時点で性別偏見に追従してるみたいになるのが嫌だな、とまず思った。あと性別がそのままで書かれてるものはもう散々書かれてるだろうし、そのままでは自分が面白く書けないだろう。じゃあどうするか?
・色々考えた結果、「メデイア=魔女」という考え自体が嫌いだな、と思ったので、メデイアを男にすることにした。あと「女には知恵がない」と言っていたイアソンの印象がとても悪かったので、「そんなに知恵が自慢なら知恵なき女にしてやろう」と思い、した。
・完全に性別だけを反転するのではなく、色々設定をかき混ぜてみた(その方が面白く書けそうだったので)。面白く書けたので私は満足した。ふむ。割とええじゃないか。
・エウリピデスの『王女メデイア』を読んでいて一番分からなかったのが、「人間は生まれない方がいい」という思想だった。これは真っ向から私の精神に反するもので、普通に言われても聞き入れることはなかったと思う。
・しかしメデイアの飛びっぷり(と書かせてもらう)があまりにも凄まじかったので、「まあこう考える人もいるだろう」と納得がいった。賛成はしないけど、ここまで物凄いことをやる人ならここまでおかしな考えにも賛同するだろうと。
・本当に全く理解できない思想なのでそれを背負ってメデイアが去っていくのも自分の心情とも合致した。「逃げ得では!?」という納得のいかなさもなかった。こんな変なやつはどこか遠くにいる方がよい。
・というわけで、エウリピデス『王女メデイア』をもとに現代のメデイアを描きました。楽しい経験ができてよかったです。
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