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超短編小説「エンドロール」

きっとずっと誰かを待っていた
いつか訪れる何かを待っていた
それが誰なのか何なのか分からないまま
でもいつもここじゃないような気がして
何にも夢中になれず誰の事も好きになれず
もっと本当に心から欲しいものが見つかるまでの
充電期間と自分に言い聞かせた

たとえば それは ラジオから流れてきたロックンロール
たとえば それは 偶然 立ち読みした古い漫画
たとえば それは 角を曲がった時にぶつかった転校生
たとえば それは 深夜の特番のお笑い番組
たとえば それは バイト先で1人浮いていたアイツ

準備万端だった 数々の有名人のエピソードを読み漁り
いつ自分の人生に起こるかワクワクしていた

でも何も起きなかった
そりゃそうだ
僕には本当に心の底から欲しいものなんてなかったんだから

そんなことに今更 気づくなんて
一体 僕の人生は何だったんだろう

世の中は適当で浅い考えの奴等のほうが幸せになるんじゃないのか?

たとえば全然サッカーに詳しくないのに
ワールドカップの時だけ
ユニフォーム着て応援するぐらいの
それぐらいの緩さのほうが人生 楽しそうだ

でも僕はそういう風にはなれないし
そういう風になりたくなかった
だから何かを探していたんだろ
何か真剣になれるものを

でもそれが何なのか分からなかった
それが僕の誤算で最大の失敗だろう

きっといつか 誰かが僕の前に現れて
僕をどこか素晴らしいところへ連れていってくれると思っていたのに

現れなかった  僕の運命の人は
始まらなかった 僕のドラマは


そして僕は死んだ。


すると死後になってやっと僕を連れ去って行ったのは
まったく望んでもいなかった死神で
連れていった場所は
行きたくもない地獄だったんだ。







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