とても暗くて憂鬱になる超短編小説⑧
「カウントダウン」
世界が滅びる前の世界は滅びた方が良いと思った
世界が滅びると知った人間たちの大半は暴徒と化して
欲望のまま残虐非道な行為に手を染め始めたから
もう全てが終わるんだから何やってもいいじゃねーかと
そんな考えで弱者を蹂躙し凌辱することを楽しむ鬼畜共と
自分が同じ人間だと思うと吐き気がした。
世の中の価値が全てひっくり返るとこうなってしまうのか
僕は世界が滅びる前に衝撃的な事実を目の当たりにした
特に悲惨だったのは今まで勝ち組と言われる成功者たちで
社会的弱者たちは今までの復讐をするかのごとく
金持ちを襲撃し拷問して殺害したり美人の有名人を凌辱し続けていたんだ
きっと世界が滅びる直前で 大半の人間の心は麻痺していたから
死から逃れるように誰かを傷つけて自分より不幸の人間を量産していった
僕は善人にも悪人にもなれないまま静かに最後の時を待ちながら
TVのニュースで頭のいい人たちが語ってたどんな答えとも違う最低の世界に
失望しながら右手で包丁を握って襲撃に備えていた