ハニーミルクラテの冤罪
タリーズでハニーミルクラテを飲んだ。ただの気まぐれだった。ソイラテを愛してるので平素は迷わずそれを選ぶのだが、なんとなく文字列に惹かれて注文。これがめ〜ちゃ美味しくて、どハマりした。てっきり「はちみつ風味」のミルクラテかと思っていたが、ちゃんと「はちみつ」の入ったミルクラテだった。ストローの挿しどころによっては、トロッとした「はちみつ」をもろに味わえる、いわゆる★☆★甘味スペシャルゾーン★☆★があり、その特別感に胸を打たれた。うめぇ。
そんなマイブームを小脇に抱え、ドラッグストアへ行った。切れたばかりのボディソープを探す。ニベア「ヨーロピアンホワイトソープの香り」その詰め替え用が欲しかった。陳列棚を見つけ、目的の商品へと手を伸ばしたそのとき。ある文字列が、パッッッと目に入る。
「濃厚ハニーミルクラテ」
濃厚、ハニー、ミルク、ラテ……? とまどいながらも、気づけばカゴへ入れていた。実際のところは「W濃厚保湿」「ボディミルク成分」「イタリアンプレミアムハニーの香り」という3つの別ワードから無意識に「濃厚ハニーミルクラテ」というキラーワードを己が作り出していた。「ラテ」に関しては完全バーチャル。ここまでくるとマイブームというより、ハニーミルクラテに寄生されたヒトの愚行である。
そして別のある日、ドトールのモーニングへ行った。カロリーと値段をいちおうは気にし、アイスコーヒーないしは豆乳ラテを頼もうと思っていたのだが、ここでもやはりアイツに出会う。「ハ、ハニーミルクラテを、ひとつ」店員さんがすばやく反応し、グラスに氷、コーヒーを投入。繰り広げられる一連の作業をワクワクしながら眺めていた。しかし、差し出されたそれに、えっと思う。工程が、3つしかなかった。氷、コーヒー、そして最後に注がれた白いそれは、どう見てもノーマル・ミルク。あれ、間違えたのかな、あれ、と困惑しながらもドリンクを受け取って席へ着く。おずおずとストローをくわえて口に含んだ。
ハ、ハニーの味がするだと……?
勝手に「ハニーミルクラテとは工程が4つあり、氷→コーヒー→ミルク→ハチミツだ」そう思い込んでいた自分に気づかされた。想像するに、ドトールでは「ノーマル・ミルク」と「ハニー・ミルク」の2種をそもそも用意しておき、効率よく「ハニーミルクラテ」を作れるような仕組みがあるのだろう(憶測だけど)。私は「店員さんが間違えたのでは?」などと疑ったことを恥じた。ドトールの店員という立場を経験したことがないのにも関わらず、自分の思い込みを軸に相手の行動の是非を判断していたことを、心底恥じた。しかもだ。改めてメニューを見たところ、商品名が「ハニーカフェオレ」だった。つまり「ハニーミルクラテ」とは、初めから関係なかったのだ。
人は、自分の見たいように都合よく解釈して、ものを認識をしている。こうして冤罪が生まれるのかもしれないと、私は思った。
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