「HELLO,DESIGN」まとめ
●本書の結論
「デザイン思考とは、人間中心のイノベーション創出のアプローチである」
●デザインの本当の意味は?
〇欧米「design」 ⇒ 設計,立案,意匠する
△日本「desgin」 ⇒ グラフィック的な図案を考案する
日本でいう「design」は、どちらかというと、アート思考に近い部分がある。「自分が何を表現したいのか」にこだわるのがアート。伝統職に近いイメージである。
しかし、本来の「design」とは、問題を解決するための思考や概念を設計し、様々な表現を用いて創出することを指す。
それを応用させると、デザイン思考とは、人が「こうなったらいい」と潜在的に感じているものを深層心理の中から見つけ出し、それをイノベーションとして創出するものである。
簡潔に言えば、人が抱えている問題を本質的に解決するための思考。
●デザイナーに必要なマインド
・人間を中心とした視点
「何を作ろうか」というモノを中心とした考え方ではなく、
「人はどんな問題を抱えているのか」「潜在的なニーズは何なのか」という人間を中心とした視点から課題を考えていく。
マイナンバー制度は、この「人間中心の視点」が抜けていた代表例である。
機能や役割を重視するあまり、利便性や使いやすさといった要素が入っていなかったため、使い勝手が悪く、思ったように広まっていかなかったのである。
・自分の主観を信じること
デザイン思考においては、「自分は~だと思う」「~したい」という主観的な意見が重要で、それが他の人が思いつかないような新たな発想を生み出す。
論理的な発想からでは、似たようなアイデアしか生まれない。
日本人は自分の主観に自信がない人が多く、周りに合わせた考え方を好むため、無意識のうちに発想や思考にブレーキをかけてしまっている。
「自分は世界を変えることができる」という自信を持つこと。
これを「クリエイティブ・コンフィデンス」と言う。
・楽観的で、旅行者の気分で、クリエイティブに行動し、助け合うこと
この4つがデザイン思考のマインドにおいて意識しておきたいポイントである。
●デザインには個よりチームが必要
・デザイン思考では個人よりもチームプレイ
その理由は、多様な主観を持ち寄ることができるからである。デザインにおいては、主観的な意見が重要なので、そういった発想を掛け合わせていく。
・同じ分野ではなく、多方面の分野から人員を集める
同じ分野の中で人材を集めると、アイデアが偏りがちになるからである。
・チーム全員が一つの分野においてプロフェッショナルであること(専門的な知識を持っていること)が条件。
そうでなければ、お互いが助け合うというチームプレイの構図が成り立たなくなり、それぞれに当事者意識がなくなるからである。
●デザインのプロセス
デザインにおけるプロセスは以下の順で行う。
1.観察 ⇒日々の暮らしの中で、人々が潜在的に抱えているニーズを探る
・無意識の行動にこそ、潜在的なニーズがあらわれる
ふつうは気にかけないような何気ない部分にこそ、ヒントが隠されている。
・人の話を聞くだけでは、顕在的なニーズしか見つからない
質問を繰り返す中で、「潜在的にはこんなニーズを持っているのではないか?」と探ることが重要。
2. 問いの設定 ⇒ 広がりすぎず、制限しすぎないサイズの問いにすること
例)チョコレート商品の売上を上げたい。
△「売れるパッケージとは?」
〇「大人からの消費量を増やすためには、どんなコンセプトのチョコレートにすればよいか?」
3. ブレスト、コンセプト設計 ⇒ 序盤はアイデアを拡散させることに専念し、徐々にアイデアを収束させていく
・「HOW MIGHT WE ?」を意識する
HOW(どのようにするのか?)⇒思考を深める
MIGHT(その考え方もあり得るよね)⇒相手の意見を肯定すること
WE(私たちチームで解決していこう)⇒当事者意識を持たせる
4. プロトタイピング ⇒ イメージのすり合わせを行う
プロトタイプ(試作品)は時間をかけずにさっと作り、チーム内でフィードバックを行いながら、トライ・エラーを繰り返すことが目的。
プロトタイプは完成度を上げるのではなく、アイデアを現実の世界に当てはめて考えるための試作品であると認識する。
・どの工程においても、分業はせず、全員で進めていくこと(多様な視点を持つため)
●日本こそデザイン思考に強い国
日本人が持っている「おもてなし」や「優しさ」の精神こそ、人間中心として物事を考えていくデザイン思考に適しているのである。
合理的に考えてしまうと、そういった日本文化の強みが損なわれてしまう。
●パッケージ化することで大国へ
・パッケージ化とは?
アイデアや理論を構造化して、命名して売り出す(世界に発信していく)こと。ライセンスに近いイメージである。
・パッケージ化のメリットとは?
パッケージ化することで、世界間における「ルールメイカー」になり、優位に立つことができる。
世界の大国に対して、主導権を握るためにはルールを作る側に立つことが重要。
日本はアイデアやテクノロジーの技術が優れているのにも関わらず、パッケージ化をしようとしない。
それは、日本人の真面目な性格が影響してか、ルールを享受する「ルールテイカー」側に回り、決められたルールの中で適応しようとしてしまう習慣が原因。
・パッケージ化の強い国イギリス
イギリスはクリエイティブ産業が強いことで有名である。
それは、資源が強いアメリカや中国などの大国に勝つためには、自国の強みであるアイデアやクリエイティブな分野で勝負することが条件だと理解しているからである。
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