芽吹き
3月。春、いや、まだ冬だろうか。
桜の蕾が膨らみ始め、ひとつ、ふたつと可愛らしい花を咲かせる。
桜を見ると、何故かいつも悲しい気持ちになる。
それは、また何も成し遂げられずに1年の始まりを迎えてしまったと感じるから。
それは、好きだった人と歩いた夜道で見上げた怖いくらいに奇麗な夜桜を思い出してしまうから。
それは、…。
「…」に入る言葉はこれからも増えてゆく。
どんなにいやだと泣き喚いても、春になったら桜は咲く。
1年前のことを思い出す。
今年の自分と重ねてみる。
一人で見る桜。
二人で見上げる桜。
みんなで踏みしめる桜。
たった数週間のうちに、確かな季節の移ろいを感じ、
ゆっくりと流れる時を想った。
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