騎手の通信機器利用を考える ノモケンさんコラムを題材に
調整ルームが公正競馬を担保できるのか
5月15日の18時にノモケンさんこと、日本経済新聞の競馬記者である野元賢一氏がnetkeibaに緊急コラムとして、若手騎手のスマホ使用問題をアップしています。ノモケンさんはこれを機に前日の調整ルームに入って以降の外部との接触禁止の制度をアップデートできるかということ提議しています。
私も過去2回ここにおいて調整ルームでの外部との接触禁止がどれだけ意味のあることなのかということを書いてきました。公正なる競馬開催を守ることは当然としても、それと一時的なスマホ利用禁止がどうリンクするのかということについては条件反射的になるのではなく、よく意味を考えてみるべきというのが私の主張です。図らずもノモケンさんも制度の見直しを提案している次第です。
そもそも女性騎手控え室にJRAの職員はいなかったのかという点ですが、この記事によると、発見したのがJRAの職員だったようです。しかし、各競馬場の女性騎手控え室については男性騎手のそれは比較にならないほど狭く、今年も2人の女性騎手がデビューしてかなり手狭になっており、物理的にJRAの職員が常駐しにくいこと、中山競馬場では地下馬道に通じる廊下の突き当たりのかなり殺風景なところにあること、男性騎手控え室が扉が開けっ放しなのに対し、女性騎手控え室はどうしてもそうはいかないことなどが事件の遠因になったのではないかと書いています。
氷山の一角?
ここまでは一般論であり、どのように取り締まるかという話ですが、コラムの締めの部分で現状では限界があるというように述べています。そして、これからのカジノ解禁なども受けて、専門の捜査機関を作るべきではないかと結論しています。この点は業界に精通しているノモケンさんならではの意見ですが、私が注目したいのは以下の点です。引用します。
私もここはかなり疑問に思っていて、下記でも氷山の一角ではないかと書いています。
もちろん全員がそうとは思いませんし、仮に外部との通信を行っていたとしても必ずしも八百長に繋がってはいないと信じています。しかし、ノモケンさんはこうも書いています。
多分、JRAとしてはこれを最も恐れているはずで、ある意味お役所的な対応とも言えるでしょう。特にG1シリーズ真っ最中のいま、大量離脱だけは避けたいはずで、利用の事実よりも八百長の有無がなければスルーという結論に至ったと考えることも、あながち暴論ではないような気はします。しかし、若手女性騎手ばかりが控え室の閉鎖性をいいことに利用していたというのもほんまかいなですし、氷山の一角説はけっこう有力なのではないかと思います。
海外事例
記事では海外事例も取り上げられており、オーストラリアやシンガポールでは抜き打ち検査をしていて、それで騎乗停止になった騎手もいたという藤井勘一郎騎手の言葉を紹介していたり、ノモケンさんが韓国で見てきた控え室に映像確認用の端末が複数置いてあったという事例も紹介しています。その辺も含めて考えると、このご時世でスマホを制限するというのはどうかなというのもありますし、未然に防ぐことは難しいと考えれば、発覚したときの罰則強化でいいのかなという気がしています。例えば、一発レッドカードで免許取り上げとか。それでも八百長したいならどうぞという話でしょう。
八百長の告白も
一方で、もと川崎競馬所属の瀧川寿喜也氏が競馬法の時効という断りつきで八百長はあったとYouTubeで話しています。地方競馬ではそれなりにあったようで、岩手や岐阜でもそれで大問題になったのは記憶に新しいところ。ただ、中央競馬となると賞金のレベルが違いますし、八百長に加担するリスクを考えるのであれば勝ちを狙った方が効率的で、そこのモチベーションは低いのではないかと思います。それでもしたいのであれば、厳罰化で対応というのが理屈としてはあっていると思います。
この期間で成長して欲しい
今回の6人に悪意はなかったと思いますが、とは言え、規則を守れなかったというのは事実ですので、罰を受け入れ反省してもらいたいものです。この間、調教には乗れますので、自粛警察の騒音は遮断して厩舎作業などで周囲に貢献したうえで技術の向上に励み、ひとつ上のレベルで帰ってきての活躍を期待します。
(了)
出典
野元賢一「【緊急コラム・スマホ使用問題】令和の時代、「通信機器の取締り」は本当に実効性のある不正防止策なのか?」
https://news.netkeiba.com/?pid=column_view&cid=52955