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みんなをつなげる人と場所 「ひとつなぎライブVol.9〜音とコトノハ、再開の春〜」

3月26日、心温まる素敵なライブが開催されたのをご存知だろうか?
場所は、沖縄県那覇市首里にある、ライブも楽しめるカフェ「アルテ崎山」。
店内には、ゆかりのあるミュージシャン・Anlyのポスターやギターやピアノなどの楽器が飾られている。
いつも穏やかな声で迎えてくれる店長の霜鳥美也子さん。
テキパキと機材の調子を見てくれている、与那城親二さん。
お二人の心の温かさを体現したようなお店で始まったそのライブは、集まった人々を心の底から穏やかな気持ちにさせてくれたに違いない。
そんな素敵なライブの様子をレポートしてみよう。

音楽と芸術がコラボした店内

沖縄県立芸術大学の学生、けふさんと竹口さんの作品が展示されている

このライブを主催してくれたのが、沖縄でフリーの芸人をされており、カホン奏者としての一面や、ラジオパーソナリティーとしての一面を持ち合わせる、ひがっすさん。
そのひがっすさんがパーソナリティを務める「ひとつなぎラジオ」にゲスト出演していた、沖縄県立芸術大学の学生、けふさんと竹口莉央さんの作品が並べられ、一夜限りのポップアップショップが店内に出現。
音楽だけでなく、現役の芸大生が手がけた作品が見られる上、彼女たちが制作した作品が購入できる。まさに、音楽と芸術のコラボしたライブイベントとなった。
音を楽しむだけのライブも楽しいことに変わりはない。しかし、目で楽しむ演出として芸大生の作品を取り入れたひがっすさんの考えに脱帽。
そしてもちろん、けふさんと竹口さん、2人の芸大生もこの日に合わせて準備したであろう、素敵な作品の数々は来場したお客さんの心に響いたことは間違いない。

音楽を奏でること、言葉を紡ぐこと


オープニングアクトを飾ったすがまこうたさん
ひがっすさんのカホンとのコラボ

ライブのオープニングアクトを飾ったのは、すがまこうたさん。
聞くところによると、ひがっすさんが「マルヒデ商店」で出会い、ライブ出演を依頼したとのこと。
本当に「ひとつなぎ」の能力に長けているな、と感心。
オープニングアクトは、ライブに来たお客さんの心を引き込む必要がある大事な役割だと個人的には思っている。
ライブの雰囲気に引き込めるのか、引き込めないのか、それを決するのがオープニングアクトなのだと。
結論から言えば、すがまこうたさんのオープニングアクトは、圧巻だった。
パワフルな歌声と、リズムの良い楽曲。
ひがっすさんとのカホンコラボも素晴らしく、お酒を傾けながらビートに乗って聴きたいと思える素晴らしいものだったと思う。
会場も、グッとライブの雰囲気に引き込まれるのが感じられた。
10分程度の演奏だったにもかかわらず、僕は彼の声に引き込まれた。
もっと聴いていたいと思わせる、素敵な音楽に感謝。

優しい歌声の涼菜さん


アーティストの楽曲の歌詞を朗読し、その曲を本人が歌うという企画の一場面

オープニングアクト後に登場したのは、涼菜さんだ。
僕は一度、同じく「ひとつなぎライブ」にて演奏を聞かせていただいている。
聴く人、一人ひとりの心に響くコトバ選びを大切に歌っているという彼女の曲は、とても優しい。
「ピアノという音がそうさせるのだろうか?」と思っていたりもしたが、今回、歌をじっくりと聴いてはっきりとした。
優しいと感じるのは、言葉が優しいからなのだ。
音楽は、音だけで成り立っている訳ではない。アーティストが紡ぎ出した言葉が、音に乗って成り立つ一面もあるのではないだろうか。
僕が、改めて涼菜さんの歌の優しさを、言葉によるものだと感じられたのは、詩の朗読があったから。
アーティストの曲の歌詞を朗読した後に、その曲をご本人が歌うという、ひとつなぎライブの企画。
涼菜さんの曲は「ミルクティー」。切ない思いが、会場内を舞うように流れていくのが感じられた。
誰もが経験する一コマを、切り取った情景が浮かび、鼻腔を優しいミルクティーの香りがくすぐるような感覚が。
音楽と言葉が織り成す、とても優しい空間が心地良い、そんな時間が流れていたと思う。

楽しそうに歌う向日葵(ひまり)さん
ひがっすさんとのカホンコラボ

2番手に登場したのは、ギター弾き語りシンガーソングライターの向日葵(ひまり)さん。
ギター弾き語りシンガーソングライターには、なぜか縁がある。
京都にいた頃、かなり仲の良かったシンガーソングライターは2人ともギターで音楽を奏でていた。
そして、その1人に歌声の質が似ているのが、向日葵さんだ。
やや低めで心地良い声と、少し掠れそうになる歌声。
少しだけ、僕の甘くほろ苦い経験を思い起こさせてくれる。
彼女の歌を聴いて感じるのは、「とても素直な言葉があふれているなぁ」ということ。
だからこそ、心にスッと染み渡ってくるのだろう。
そして、歌っている時の表情がまた素敵だ。
感情が入っていく瞬間に目を閉じる表情は、言葉と音を自分の内側に吸い込んで、また新たな感情として音に乗せる準備をしているように見える。
新しい言葉がギターの音に乗って、会場に響いていく。
一番心に残ったのは、「rider」という曲。支え合う存在でいて、どこか気になるような人。
誰もが経験したことがある、青春の1ページめくるような感覚にとらわれたのは、僕だけだったのだろうか。一陣の風が僕の心を撫でていくような感覚。とても素敵な曲が聞けたなと、感じた。

メインを飾るコノハコトノハさん
出演者全員で演奏

メインを飾るのは、香川県出身で神戸在住のコノハコトノハさん。
初めて生で演奏を聴けると、意気込んでいた僕。
ライブを聴いた感想は、「素晴らしい曲をありがとうございます」だった。
神戸在住と聴いた瞬間、勝手に何かしらの縁を感じていた。
神戸にも大好きなシンガーソングライターがいて、その方の曲の歌詞が大好きで、CDを購入してよく聴いていた。
という、縁なのか、縁でないのかよく分からない縁。(笑)
それはさておき、コノハコトノハさんの曲も歌詞が素敵だと感じたのは言うまでもない。
僕はきっと、言葉を丁寧に紡ぐ人に惹かれてしまうのだろう。
もちろん、音楽に惹かれるという人もいるはずだ。
「この音の運びが好き」
「この音の使い方が好き」
というように感じることが、僕にもある。
同じように、僕もこう感じることがある。
「この言葉の語感が好き」
「この言葉のチョイスが好き」
人が心を揺さぶられるのは、五感のどれかを強烈に刺激された時だと僕は思っている。
音楽は、音と言葉で耳を刺激する。だからこそ、音楽は人の心を揺さぶるのだろう。
そんなことを改めて感じせられる演奏。
そして、沖縄で開催された「NICE映画祭」で特別賞を受賞した映画「夏の光、夏の音」の同名主題歌も披露。
紡がれる一つひとつの歌詞が、お客さんの心をとらえて離さない。
イメージが目の前に広がるのは、言葉を大事にされているコノハコトノハさんの気持ちが込められているからなのだろう。
個人的に一番好きだったのは、「風とゆく」。
YouTubeに上がっていたMVを見たときから心惹かれていたので、聴けて嬉しかった。

また、お客さんを喜ばせる術も心得ていたコノハコトノハさんの一面を最後にご紹介したい。
故郷、香川に帰省していたということで、なんとお土産にうどんを持ってきていたのだ。
それを、お客さんとじゃんけんをし、最後まで残った人に進呈。麺好きの僕としては、ゲットしたかったが、1回目で脱落してしまった。
まあ、そんなものです。(苦笑)
うどんは、自分で買うことにしよう。

余韻にひたりながら夜は更けていく

出演者全員集合!

アルテ崎山。
その日、そこにあったのは、多くの人の笑顔だった。
言葉を大切にするアーティストが揃った舞台。
そこに居合わせた人々は、きっと思ったに違いない。
「言葉って良いな」と。
人の心の底から込み上げてくる感情を、丁寧に掬い上げ、言葉として表す作業は、時に辛く苦しいものであったりもする。
その辛さや苦しみが深いからこそ、言葉は力を持ち、僕たちの心を震わせる。
同じように、感情を掬い上げ、言葉として表す作業は、楽しく、嬉しいものでもある。
だからこそ、人々を笑顔にしてくれるのだろう。
その日のアルテ崎山には、ライブ終了後も多くの人の声が響いていた。
ライブの余韻を楽しみたいと。
まだこの素敵な時間を終わらせたくないと。
首里の夜は、ゆっくりと更けていく。
幸せな音の残響の中で。
幸せな言葉たちの余韻の中で。

すがまこうたさんのカホンサポート
涼菜さんのカホンサポート
向日葵さんのカホンサポート
コノハコトノハさん、全楽曲をカホンサポート

P.S
ライブを企画、主催してくださったひがっすさん。
当日はMCからカホンの演奏から、大変だったと思います。
最高のライブをありがとうございました。
次は記念すべき10回目。
また参加させていただきます。
ひがっすさんの「ひとつなぎ」の才能に、敬意を表して!

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