泡と水を吐く日々…
おはぎ(シュナプー7歳)巨大食道症
2年程前に、巨大食道症と診断される。
原因はいろいろあるらしいけれど、食道の蠕動運動がなくなって
食べたものが胃に運ばれなくなってしまうという症状をいう。
後天的に起こる巨大食道症の多くは原因不明だそうだ。
「おはぎ」も例にもれず。
脳、ホルモン、甲状腺などなど様々な検査をするも原因はわからなかった。
原因がわからないから治療もない。対処療法のみ。
数か月に一度、誤嚥性肺炎を起こしつつも、ベイリーチェアという
立位の姿勢を保つ椅子のおかげで、食事の時以外は変わりない生活を送っていた。が、2年たって、今まで薬で対処することが難しくなってくる。
症状をこじらせた時に効いていた薬が効かなくなってきていた。
薬を変えても同じ。
頻繁な嘔吐、吐出でみるみるうちにやせてしまい、体重は6kg→3.2kg。
どうにもこうにも栄養が取れないため、2024年12月、胃ろうチューブをつける手術をした。
現在は胃ろうチューブからドロドロにふやかしたドッグフードを入れて
栄養をとっている。口からの食事は1日数口のみ。
2025年1月 胃ろう手術のあとのおはぎ
1週間のうち、少し動ける日が3日、寝たきりになってしまう日が4日、
といったところだろうか。
胃ろうのチューブの手術を受けた時に、食事ができるようになっても、
栄養がとれて元気になる!とは限らないとお医者さんからも言われていたので、覚悟はしていたけれど…
チューブからドッグフードをいれていると、胃液がグワーッと喉まで
上がってきて『ちゃぽちゃぽくちゃくちゃ』と生唾を飲み込むような
音を立てる。こうなると解決策は吐くことのみ。
大量の水とねっとりした白い泡(胃液と唾液が混ざったもの?)を吐く。
少量しか水分をとっていないのに、どこからこの水分がでてくるの!?
という量の水と泡を吐くのだ。
吐ければすっきりするのか、少しだけ動けるようになる。
なかなか吐けないとずーっと気持ち悪くてぐったり。
骨と皮だけになってしまった体を見ると、吐かないですべて栄養に!!
と思いたいのだけれど、とても気持ち悪そうにする姿に背中をさすりながら
「早く吐かせてくれーー」とさする手に力が入る。
本当に難しい病気。何が起こっていて、どうしてこうなっているのか
お医者さんにもわからない。
おはぎもきっとわからないで苦しんでいるんだろうな。
食事の時以外にも急に吐出してしまうことが多々あり、ねっとりしたものが
喉に詰まって苦しくなってしまうこともある。
一日何度もハラハラしてしまう。
でもそれが我が家のありふれたなんでもない日常。
それでも家族みんなで平らな毎日を
骨と皮だけになってしまったおはぎの体に、寒い冬はこたえる。
これでもか!とあったかい格好をさせて、できる限り散歩に出る。
なまけもののようにゆっくりゆっくりだけれど、おはぎは歩く。
いつもの何倍も時間をかけて、でもいつもの距離を歩く。
もし途中で歩く気がなくなってしまったら、その時は抱っこして
散歩をする。時間がない時は超短縮コースになったりもする。
そして、1日2回だった食事が1日4回チューブからのごはんになった。
苦しそうにしていたら抱っこしたり、背中をさする。
吐きそうになったら、近くにおいてあるたらいをスタンバイする。
ねっとりしたものを吐いたら手で掻き出して吐くお手伝いする。
数か月前からはずいぶん様変わりしてしまったおはぎとの生活に
家族が(とくに私が)過剰に反応してしまい、歯車がうまく回らなく
なった。おはぎがしんどいのにこちらまで体と心がバッキバキになって
しまった。これはおはぎにとってもよくないことだった。
だからやめた。
様変わりしたことも、これまた日常。
ただただ今をみて、できることをする。いつもやっていることをする。
シンプルに考えることで心が軽くなり、家の中もふっと軽くなった。
おはぎはここにいて、私たち家族にも微力ながらできることがある。
だからそれをしよう。
食べられないおはぎの前で、普通に家族で食卓を囲むし、
しんどくて寝ているおはぎの横で、ドスドス走り回る息子がいるし、
思春期VS更年期の言い争いも起きるし、遠慮なくグースカ昼寝をしたり
もする。
おはぎの周りには今までと変わらない日常があって、
変わった部分も変わらない部分も一緒になって今の我が家の
新たな日常になる。
なんと無神経な…とうつることもあるかもしれない。でも、おはぎの病気に対してできることも、できる工夫もなんだってするけれど、
そこにはなんの気負いもなくそれがただただ日常、我が家の今の平らな時間、穏やかな毎日なのだ。
こういうふうに切り替えられたのは友人から聞いた82歳の照子さんの話のおかげ。しなやかにおおらかに生きる照子さん、その話をしてくれた友人に心から感謝!