切断消耗品の基礎知識①~精密切断砥石~
切断砥石と言っても、その種類は多種多様ですが、試料切断で使われるものは、精密切断砥石と呼ばれる湿式用の薄い砥石です。補強材は入っておらず、柔らかめの設計になっています。レジン(樹脂)ボンドに砥粒を混ぜてプレスし焼き固められ製造されます。精密切断砥石で使用される大きさはΦ150~300mmが一般的です。
砥粒の種類
砥石の砥粒はアルミナ系と炭化ケイ素系の砥粒を使用することが一般的です。アルミナ系(A, WA, HA)は鉄系材料に使用し、炭化ケイ素系(GC、C)は非鉄系材料やガラス等で使用します。GC砥粒はアルミナ系砥粒よりも固く切れ味が良いので鉄系材料を切断すると綺麗な切断面が得られるのですが、炭素同士が化学反応を起こし砥粒が消滅することがあり、切断中に割れてしまうことも少なくない為、鉄系材料ではあまり使用しません。
この他にステンレス等で使用する特殊砥粒や超鋼合金等で使用するダイヤ砥粒の砥石も御座います。
粒度
粒度は砥粒の大きさを表すものですが、弊社では80番から320番までご用意可能です。数字が小さくなるほど粒度は大きくなります。粒度が大きいほど切削力も大きくなるので、切断時間が短く出来ますが、切断面は荒い面になります。逆に粒度が小さいと切削力は落ちますが、綺麗な切断面になりバリの発生も抑えられます。80番より大きな砥粒も製作は出来ますが、切断面に与える傷が大きくなるで、組織観察まで行う場合はお勧めは出来ません。
もう一つの大事な要素として気泡(砥石にある空洞部)があります。気泡は粒度に比例して大きくなります。この気泡は切断時の冷却作用や切削屑を排出する役割があります。一般的に粒度が細かいほど綺麗な切断面になりますが、冷却作用を高めたい、切削屑が悪さをするといった場合は粒度を大きくした方が良い結果が出る場合もあります。
ボンド
硬い試料を切断する場合は軟らかい砥石を、軟らかい試料を切断する場合は硬い砥石をとよく言われますがこれはボンドの話です。ボンドはアルファベットで表記されAが最も軟らかくZが最も硬いボンドです。一般的にボンドが軟らかいと砥石の減りが早くなりますが新しい砥粒が次々と出てくるので、切れ味が良く綺麗な面になります。その分ライフが短くなりランニングコストが高くなります。ボンドを硬くするとランニングコストは安くなりますが切断面に焼けが出る場合があります。正し、軟らかすぎても硬すぎても目こぼれ、目つぶれを起こし良い結果は得られません。試料に対して適切な硬さのボンド選定が必要です。精密切断砥石のボンドでは J~N の間で作られたものが一般的です。
砥石の厚さ
切断砥石の厚さも切断する目的に応じて選択する必要があります。厚みが太いものほど試料に与える負荷が大きくなるので、切断面のダメージも大きくなりますが、ブレ難いので真直ぐ切断出来ます。厚みが薄いと試料に与える負荷は小さくなりダメージも抑えられますが、斜めに切断されてしまうことがあります。精密切断では0.8~1.5mm程度が一般的です。
保管方法
砥石の保管で一番気を付けることは湿度です。砥石のレジンボンドは水分を吸収しやすく湿度の高い場所に保管していると劣化が早くなります。特に薄い砥石は水分を吸うことで大きく湾曲してしまったり、ボンドが弱くなり割れたり真直ぐに切断出来ないようになります。新しい砥石は手で割ると「パキッ」と割れますが、劣化した砥石は「ボロボロ」とぬれ煎餅のように割れます。劣化を見分ける方法として、乾式(冷却水を出さずに)試料に砥石を少しだけ当てて大きく暴れるようでしたら、その砥石は劣化しているので使用しないほうが良いです。保管環境は24時間空調のある部屋で出来るだけ平面な場所に横にした状態で保管してください。砥石は劣化するものですので、大量に買溜めすることはお勧めしていません。
装置に取付けて使用した後は、砥石を30秒程度回し水分を飛ばして下さい。
出来れば、砥石を使った後は装置から外した方が、フランジで固定された面の劣化スピードを抑えられます。また、装置のカバーは開けた状態で湿度が高くならないようにして下さい。
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